変化のスピードが加速している現代、企業研修に求められるものも大きく変わってきている。なかでもイノベーションを生み出す組織や人材を作ることは、多くの企業にとって最重要課題の一つだ。「マーケティング研修領域No1」のポジションを標榜している博報堂コンサルティングは、そうした時代の要請に対して、従来の研修の発想を超えたイノベーション研修を開発し、提供している。そこで今回は、同社の楠本和矢氏にご登場いただき、研修プログラム『JAM シリーズ』が生まれた背景や、プログラムの特徴、研修事業にかける同社の思いなどを語っていただいた。
「研修」と「プロジェクト」の融合。

既存の研修が抱える課題に コンサルティングで培った豊富な知見で応える

「研修」と「プロジェクト」の融合。
寺澤 今や企業にとっては、イノベーションを起こすことが経営の最重要課題になってきています。そんな中、博報堂グループが「イノベーション研修サービス」を始めたきっかけはどのようなことですか?

楠本 市場の成熟化や、技術の著しい進化に伴い、従前通りのビジネスモデルや商材だけで突破することは一段と難しくなりつつある中で、イノベーションは、全ての業界、企業における共通テーマであることは事実でしょう。一方社内において、イノベーションを起こせる人材、いわば「0から1」を創り出せる人材が十分にいるかといえば、まだそうではないという声もよく伺います。

イノベーションを成功させるために、外部の専門的な組織やコンサルを活用する方法もありますが、本当の意味で成功を収めるためには、社内にあるリソースや情報を最大限に引き出し、それら外部からの知と効果的に組み合わせ、形にしていく「社内人材」が最終的には絶対に必要です。仮に外部機関を使って、その時には素晴らしい新規事業や新商品の提案書が纏まったとしても、実行するには必ず「社内メンバーの力量」が求められるのです。

我々は、どの様なプロジェクトであっても、その後の「持続性」こそが重要であると考えております。その様な考え方に基づき、社内でイノベーションを生み出すための、「プロジェクト」と「人材育成」を融合したアプローチこそが、これから必要となると考えた次第です。
我々がご提案する「研修」と「プロジェクト」を融合させたプログラムでは、イノベーション人材の育成と導入可能な事業プランの両方が実現できます。これまでコンサルティング業務を通じて、様々なノウハウ、視点、経験を培ってきた我々だからこそ提供できる人材育成プログラムなのです。

『Innovator JAM』がイノベーションを生み出せる理由

「研修」と「プロジェクト」の融合。
寺澤 御社のイノベーション研修『Innovator JAM』は、なぜイノベーションを生み出すことができるのでしょうか。従来型の研修にはない特徴や強みを教えてください。

楠本 『Innovator JAM』の特徴は3つあります。
先ず1つ目は、架空のケースで演習するのではなく、新規事業開発や、新サービス開発など、自社にある実際のお題を取り扱い、決められた期日までにプランを纏め、F/S(事業化可能性調査)も行った上で、最後に上役に報告するという「リアルなプロジェクト」として進めることです。これが本プログラムの最も重要なポイントになります。単なるシミュレーションで進めても研修受講者が、強力な当事者意識を持つには至りません。

また、我々は、コンサルティング業務の経験から、様々な制約要件を踏まえ、何を、どのような順番で進めれば成果が出るかについて、経験則から掴めることも強みです。

2つ目は、組織としてイノベーティブなアイデアを生み出すための、実際に使える「仕組み」や「フレームワーク」をテーマに合わせて提供できることです。
単なる思いつきや属人的な能力に依存したままでは、組織にノウハウはいつまで経っても溜まりません。情報の集め方や編集の仕方、ユニークなアイデアの発想方法や、具体的なビジネスモデルへの進化のさせ方など、今まで弊社がコンサルティング業務にて培ってきた「仕組み」や「フレームワーク」のノウハウを積極的に出していきます。教科書的なフレームは世の中に多く存在しますが、実際に使ってみると全然ダメだった、ということも少なくありません。使いこなすにも経験が必要なのです。

最後は、実際に様々なテーマにてビジネスやプロジェクトを理解し、タフに経験している人間が研修の講師やファシリテーターになっていることです。
研修の中で生み出されたさまざまなアウトプットに対して、何がそのビジネスアイデアの論点か?深掘りするべき要素は何か?マーケット視点で魅力があるかなど、シビアに指摘できる人間が牽引するからこそ、単なる研修を超えた、深い議論を導くことができるのです。単なるビジネスシミュレーション研修をやるつもりはありません。やるからには、本気で質の高いアウトプットの導出を目指します。

寺澤 なぜ「研修」と「プロジェクト」を融合させるのか。そこにどのような狙いがあるのでしょうか?

楠本 我々の狙いというよりも、もはやそれは「必然」だからです。
「プロジェクト」の目線で考えてみて下さい。各企業で色々なテーマのもとプロジェクトが組まれ、時として我々の様なコンサルティングの会社がご支援させて頂くこともあります。ここで見えている決定的な課題というのは、「アウトプットが出るか否か」のみに着目し、それをゼロから生み出す、または具体化させるための「スキル育成」の視点が決定的に抜け落ちているということです。

寺澤 確かに。何となく「プロジェクトを通じて、人材も育てばいい」と考える企業はあるかもしれませんが、あくまで副次的な期待の域を超えていませんよね。

楠本 寺澤さん、まさにその通りなんです。プロジェクトである以上「新しい取組」であるが故、求められるスキルも当然異なることは自明の理。にも関わらず、無責任な期待の中で、今までの経験や知識、スキルを前提にコトに取り組ませようとするケースが非常に多いのです。これでは高い可能性で失敗します。必要なことは、そのプロジェクトテーマに必要な新しいスキルを、プロジェクト進行の中で、同時に高めていくという視点が必要なのです。これはコンサルを雇っても同じことです。コンサルの力で素晴らしいアウトプットが導かれたとしても、それを具現化するのはあくまでも自社スタッフ。コンサルプロジェクトの過程の中で、いつかそれを引き継いで具体化させるための新しいスキルを会得し、自力をつけておかないと、膨大な外注コストがかかり続ける一方で永遠に成果はでません。

寺澤 確かに、本当に成果を出そうとすればするほど「スキル育成」の視点を入れなければいけないと感じます。では、「研修」の視点で考えるとどうでしょうか?

楠本 「わかる」と「出来る」の間には、大きな溝があることは、HRプロの会員の皆様であれば痛感されていらっしゃることと思います。スキル研修も色々な種類があり、かなり実践を意識した良質な研修も多いことは知っています。しかし、各業界各企業が共通で追いかけている「イノベーション人材の育成」というテーマについては、他テーマと比べて難易度が圧倒的に高いものであると覚悟すべきでしょう。個人的には、単発のスキル研修やシミュレーション研修だけでは決して到達できないものだと思います。
「研修」と「プロジェクト」の融合。
寺澤 何故、そのように考えるのでしょうか。

楠本 イノベーションに必要なスキル、という観点だけでみると、幾つかのスキルに分解すること自体は出来るでしょう。例えば、発想に必要な情報を集めキュレーションするスキル、ユニークなアイデアを創発するスキル、ビジネスモデルに纏めていくスキルなど、プロセス毎のテーマとしたスキル研修はあるでしょう。
しかし、イノベーションを生み出すために必要なものは、それぞれのプロセスを「つなげて」思考する力なのです。

寺澤 「つなげて思考する」というのは面白いキーワードですね。

楠本 そうなんです。具体的に申し上げると、ある領域における具体的な事業アイデアを発想する、という次のステップがあるからこそ、それに必要となる情報を徹底的に工夫しながら調べなければいけない状況が生まれる。また、探した情報をベースにアイデアを発想してみるからこそ、集める情報の「善し悪し」の違いが何によって決まったのかが実感値としてわかる。
アイデアを考える段でも同じです。真に事業化を意識したビジネスアイデアと、単に「平面的」に考えるアイデアフラッシュでは頭の使い方が異なります。事業化を意識するということはどういうことか。この案が、現実的か否かを考えながら萎縮して発想するということでは決してありません。その案に含まれている、市場を勝ち抜くための「トリガー」とは何か?を強烈に意識し、そこを基点として、如何にアイデアの練度を高めていくか?という、ヨコへの拡がりと、タテの深掘りを組み合わせた、立体的な頭の使い方が求められるのです。
また、それらのフィージビリティ(事業化可能性)を検証していくと、自分たちが考えた案の「善し悪し」が何によって決まったのかが実感値としてわかるのです。

寺澤 たしかに今の楠本さんの説明を聞くと、「イノベーション人材の育成」に最適な方法に思えます。

楠本 有り難うございます。寺澤さんのように勘が鋭い方は、すぐにピンと来て下さいます。申し上げたいことは、イノベーションとは、一部の人間のみに依存するものではなく、強力な「きっかけ」さえあれば、組織として生み出せる可能性が充分に高まるということです。

寺澤 なるほど。色々と実績をお積みになっているかと思いますが、何か最近の取組としてご紹介できるものがあれば是非教えてください。

楠本 では、つい最近の『Innovator  JAM』の取組として、あるメーカーさんの事例をご紹介しましょう。同社では、ある新領域への進出を検討されており、色々と社内でも当該領域における新商品のアイデアブレストなどを幾度となく繰り返されていたのですが、堂々巡りの状態が続いており、そんな状況に頭を抱えておられました。

寺澤 そういう状況、多くの会社でありそうですね。

楠本 まさに。そういうありがちな状況に陥っていたのでしょう。その時に、同社のある方が「聞いたときにピンと来た」と、このプログラムに関心を持って下さり、数ヶ月間の『Innovator JAM』が始まりました。

寺澤 同じように「ピンときた」わけですね。
「研修」と「プロジェクト」の融合。
楠本 そうです。ちなみにこのプログラムは、逆に問題意識をあまり持たない方や、現場との距離が遠くていいとお考えになる方にはあまりピンとこないかもしれません。それはさておき、同社のプログラムを推進していく中でユニークだったのは、「商品アイデア発想ドリル」をまとめたことです。文字通り問題集的な「ドリル」です(笑)。面白いでしょ?

寺澤 「発想ドリル」ですか。とてもユニークですし、何だかとっても博報堂さんらしいなと感じます。

楠本 有り難うございます。「生活者視点の博報堂」を標榜している我々です。受講者もまた生活者。受講者の目線に立ち、自然に発想が促される力学が伴っていないと、我々がやる意味はありません。楽しく熱中できる仕掛け、密かに競争意識が芽生える仕掛け、やればやるほど手慣れていく仕掛けなど、それらを「発想ドリル」にまとめました。

寺澤 なるほど。面白そうですし、確かに理にかなっている気がしますね。

楠本 具体的には、「海外のトレンドである○○を、〇〇のように取り入れるとしたら?」「生活者が感じる、〇〇領域のコト価値〇〇を、〇〇に適用するとしたら?」といった問いかけが、分類された複数のテーマごとに並ぶ、まさにドリル形式の問題集です。
この「発想ドリル」を、得意先のメンバーに1ヶ月集中で取り組んで頂いた結果、一気に 500案近くのアイデアが出たのです。このプログラムが始まる前、今まで有望案が10案ほどしかなかった状態にも関わらず、ですよ!発想の方法をきちんと使いこなすだけで、頭の中に眠っているアイデアが引き出されるのです。
しかも、どれも筋のいいものばかりでした。念のため弊社のクリエーターを使って並行してアイデアを考えていたのですが、全く出す必要がなかった位です。

寺澤 ある種、発想も技術であるということですね。ということは、ドリルで反復練習をすることによって、どんどん使えるものになっていくと。野球に例えると、バッティングには、やはりメカニズムというものがあり、我流を貫く、または我流もないままプロレベルにいける人間などほんの僅か。また、そのような理論やメカニズムをいくら理解しても、練習をしなければ打てるようにならないのと一緒ですよね。さらにトレーニングをするためにはコーチも必要となりますが、それが楠本さん、或いは御社の講師の方々にあたるわけですね。

楠本 はい。冒頭の繰り返しになりますが、現場のビジネスを理解している人間が伴走者としてサポートできることが、我々の決定的な強みの一つです。最終的に、実効性のある成果を出すためには、何故そのアイデアは良くて、なぜそのアイデアは良くないのか、そして深掘りすべき論点とは何かなど、少し目線の高い場所から客観的な視点でガイドする人間が必要です。
以上のように、きちんとプロセスが作れること、仕組みが提供できること、そしてコーチがいること――これら3つが伴って、初めてイノベーションをテーマとした研修プログラムが成立すると考えています。

寺澤 『Innovator JAM』は実際にどのようなプロセスで進んでいくのでしょうか。プログラムのイメージについて簡単にご説明いただけますか。

楠本 では大まかな流れをご説明致します。
①事前準備(プロジェクトの位置付け定義、メンバーへのマインドセットなど)
②情報収集フェーズ(博報堂の各種レポートや、弊社から提示する切り口に基づく、情報収集/加工など)
③アイデア発想フェーズ(弊社から提供するフレームワークやツールを活用した発想、それに必要なファシリテーション支援など)
④プラン詳細化フェーズ(テーマに合致したフレームに基づく、ビジネスモデル/商品サービスプランの詳細化など)
⑤経営層への新事業・新商品提案


基本的には、以上のような5つのプロセスで構成されます。中でもポイントとなるのが③④⑤でしょう。アイデアを出す際、陥りがちなのが、③にあたる、アイデアを発想するための情報収集と、それを発想ランチャーとするための「加工」のプロセスをカットしてしまうこと。丸腰でいきなり考え始めてしまうんですよね。その方法論と経験を積んで頂いた後、大いにアイデアを発散し、使えるプランとしてまとめていくというプロセスを辿ります。

博報堂コンサルティングの研修プログラム『JAMシリーズ』

「研修」と「プロジェクト」の融合。
寺澤 「イノベーション研修」は御社の得意領域の一つだと思いますが、同様の考えのもとに作られたその他の研修についてもご紹介いただけないでしょうか。

楠本 まずは『Facilitation JAM』をご紹介します。我々がいつもコンサルティングの現場で行っているのが、まさにファシリテーションです。そこで培ってきたノウハウをもとに、生産性の高い、効果的なコミュニケーションを実現するための「実践的スキル」を会得していただきます。ファシリテーションとは、一種のビジネススキルにあたるものですが、社内からイノベーションを生み出すための、大事な根っこになるスキルだと思っております。
次にご紹介したいのが、『KPI  JAM』です。KPIとは、対象となる事業活動において目標の達成度合いや、達成に向けた主要な活動の進捗状態を測る定量的指標のことを言います。しかしこのKPIを正しく理解し運用出来ている企業は決して多くありません。我々は、単に管理することを目的化するのでなく、ターゲットインサイトに基づいて「どのような状態をつくれば、業績へと波及していくか」というストーリーを作り、それをワークさせるために指標を設定する、という考え方に基づくKPIマネジメントこそ重要であると考えています。その具体的手法を、さまざまな具体的事例とワークを通じてお伝えします。これも他の研修と同様、ノウハウについて学んでいただくだけでなく、最終的にアウトプットしていただきます。

そして最後にご紹介するのが、『MARKETING JAM』。マーケティングをテーマとした研修は世の中に色々とありますが、あまり無いのが「マーケティング思考で実際に考えアウトプットする」という、経験型の研修プログラムです。我々はこのプログラムを通じて、マーケティング的に考える経験を何度も何度も積んで頂き、そのコツを掴んで頂くことを趣旨にしております。変動する市場や、競合チームの戦略を予想しつつ、商品開発、広告宣伝、ブランド投資など、さまざまな要素を組み合わせ、売上の最大化に向けて競合と戦う、カード型のビジネスシミュレーションゲームです。

研修を通じてお互いに成長することで高次元なビジネスパートナーシップを

寺澤 これらの研修プログラムに関して、今後どのような展望をお持ちですか?

楠本 まず大きな目標としては、マーケティングに関する研修において、国内No.1のポジションを狙います。マーケティング研修といえば、先ず博報堂コンサルティングを想起頂くということ。それに資するだけの様々なノウハウや知識、経験値を、我々は兼ね備えていると自負しております。一方で、今後ますます研修の先にある成果や具体的なアウトプットを追求する企業が増えてくるでしょう。そのような「成果」を直接的に求められる企業様からのファーストチョイスにもなれるよう、務めていきたいです。

寺澤 ここまでお話をお伺いして、いずれの研修も非常にきめ細やかで、半分はコンサルティングのような印象を受けました。しかも御社が長年培ってきたノウハウまで惜しげもなく提供していただける。研修を受ける企業にとってはメリットばかりですが、そもそも御社がそこまでされるのには、どのような思いがあるでしょうか?

楠本 広告代理店とそのグループに属している我々としては、お得意先様と持続的なパートナーシップを構築する必要があります。グループとしての大きな方針の中で、例えば新しい事業を一緒に立ち上げるなどの取り組みを、これからもっと進めていかなければならない、そんな局面に差し掛かっているのです。お得意先様が自力をつけられ、さらに我々自身も一緒に成長していくことで、互いに高次元なビジネスパートナーシップを築けるのではないか。そのためのきっかけの一つが、こうした研修のご提供であると考えております。これを機会に弊社の研修プログラムについてもっと知っていただき、興味を持っていただければ幸いです。

寺澤 研修を通じてお互いに成長することで高次元なビジネスパートナーシップを構築するという思想そのものが素晴らしいですね。ありがとうございました。
「研修」と「プロジェクト」の融合。
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