現実と理想のギャップが生じた原因は何か

堀之内氏:ベネフィットの現実と理想のギャップについてだが、日本企業の場合、国民皆保険制度が整っているため、ベネフィットのかなりの部分が法定給付で賄われる。裏を返せば、日本人が海外の会社を見る際、ベネフィットの部分を軽視する傾向につながっている。
櫛笥氏:経営者報酬に関しては、「リテンション」というキーワードに対する日本と海外の経営陣との間に誤解があることが多い。日本的な感覚での「リテンションパッケージ」は、「あなたには引き続き買収会社に残って頂き経営を任せたい」というメッセージが含まれている。しかし、受け手の方は「辞めるよりはいたほうが得だ」といった認識しかしていない。 買収側に対してリテンションパッケージを何のために入れるのか、きちんと認識されておらず、相手にも伝えきれてない場合が多い。
片桐氏:日本の人事部のグローバル化が遅れていたのが大きな原因である。伝統的に(日本人相手の)労務管理や精緻な賃金テーブルの管理といったオペレーション業務ばかりしてきたので、グローバルなM&A戦略実行の文脈の中で人材マネジメントはどうあるべきか、を理解しリードできる人材が圧倒的に少ない。