タワーズワトソン 組織人事部門 ディレクター 片桐 一郎氏
経営者報酬部門 シニアコンサルタント 櫛笥 隆亮氏
組織人事部門 コンサルタント 村上 朋也氏
ベネフィット部門 シニアコンサルタント 堀之内 俊也氏

買収の成果を得るために、3分野の専門家が、3年後の理想形を描く。

買収した企業(特に海外企業)の人事統合に躊躇する日本企業は多い。買収の成果を得るためには、3年後の統合人事のあり方を指針とする経営が有効である。
買収の成果を得るために、M&A後の経営の3年先を見据えた統合人事のあるべきとは何か。日本のような先進国がアジア等の新興国の企業を買収したケースをもとに、日本企業が3年後に目指すべき人事PMIのイメージを、3分野の専門家のディスカッションによって考察していく。
本講演は、タワーズワトソン組織人事部門ディレクター 片桐 一郎氏がファシリテーターを務め、同社シニアコンサルタント 櫛笥 隆亮氏(経営者報酬・ガバナンス分野)、コンサルタント 村上 朋也氏(コミュニケーションとタレントマネジメント分野)、シニアコンサルタント 堀之内 俊也氏(ベネフィット分野=退職金年金・福利厚生等)の3分野のパネリストのディスカッションという形式で行われた。

日本企業が買収した企業の、3年後のPMIの典型事例について

M&A後の経営 3年先を見据えた統合人事のあり方
櫛笥氏:3年後の典型事例ということだが、経営者報酬の分野では、買収先の経営トップの方に残って欲しい場合はリテンションパッケージ(引き止め策)を行う。しかし、2~3年でトップが辞めてしまう。買収前の担当者はエース級だったが、買収後の担当者は1ランク下になることで、モチベーションが落ちるためだ。また、経営管理の考え方のギャップも大きな要因。日本企業は立てた予算と結果の実績との差異を細かく詰める経営管理が多い。海外企業では予算の実績の差異よりも、現在の実績を踏まえ、今後どう伸ばしていくかフォワードルッキングの話を好む。

村上氏:コミュニケーションとタレントマネジメントの分野で典型的なのが「放置状態」。買収先の企業と統合どころか、分断されてしまっている。拠点もオフィスも、戦略や方針も別々のツーヘッド状態のままであることが珍しくない。

堀之内氏:ベネフィット関係では、M&Aの段階でデューディリジェンスを行う際、退職給付以外のベネフィットに着目しているのは少数派。また、ミドルマネジメント層においては、出身母国にこだわらずにクロスボーダーで働くグローバルノマドと呼ばれる人材へのニーズが高まっているが、日本企業はこういう優秀層へのベネフィット面での処遇が用意できないため他社に引きぬかれてしまっている。加えて、リスクベネフィットと呼ばれる生命保険などにおいてはローカルで個別に設定をしているため、 グローバル全体でのコスト低減、コスト効率化が図られていない問題もある。

片桐氏:人事制度関連でのPMIでみられるのは、「グローバルで等級を統合する」、「人事評価制度を揃える」など、日本本社主導での統合というのはほとんど実施されていないのが大半である。ようやく最近、管理職以上は、グローバルで等級を揃えようというような動きが出てきているが、そんな考え方を持つ日本企業はまだ少数。

3年後に目指すべき人事PMIの理想イメージとは

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