HR総研では、2016年卒業予定者をメインターゲットとする今夏以降のインターンシップの計画や応募状況について、採用担当者を対象に7月にアンケート調査を実施した。今回から2回に分けて結果を報告していく。

2割の企業が今年からインターンシップを実施

「2016年卒向けインターンシップに関する調査」結果報告【1】

まずは2016年卒採用を視野に入れたインターンシップの実施状況について訊いてみた。
これまでインターンシップは、大企業や中堅企業では実施する企業も多かったが、中小企業では実施する企業はまだ少数派という状況であった。ところが今回の調査では、企業規模に関わらず約2割の企業が「前年は実施していないが、今年は実施する」と回答。結果、これまですでに4割以上の企業がインターンシップを実施していた大企業と中堅企業では6割以上の企業が実施するとしており、さらにこれまで25%程度の実施率だった中小企業でも5割近い企業が実施するとしている。
2015年卒採用では、景気回復による競争の激化からより採用難となっているわけであるが、2016年卒採用からの採用・就職スケジュールの変更は、中小企業にとってさらなる試練となることが目に見えている。早くから学生に自社の存在を認知してもらうとともに、あわよくばインターンシップから採用に結び付けられればという思いが強くなっている。

[図表1]2016年卒採用を視野に入れたインターンシップの実施予定

インターンシップはもはや採用手段の一つ

「2016年卒向けインターンシップに関する調査」結果報告【1】

次に、インターンシップと採用選考の関係を尋ねたところ、「インターンシップで選考する」とする企業こそ6%と少数派にとどまるものの、「優秀な学生は考慮する」と回答した企業が67%に達した。「選考とは一切関係がない」とする企業は27%と3割にも満たない。インターンシップ参加者の中で優秀だと思われる学生については、第2弾のインターンシップに誘導したり、こまめな連絡を取るなどして正式応募に繋げるとともに、他の学生とは違う選考ルートを用意したりする予定なのだという。

[図表2]インターンシップと採用選考の関係

拡大する1Dayインターンシップ

「2016年卒向けインターンシップに関する調査」結果報告【1】

今年実施するインターンシップのタイプを尋ねたところ、経団連が「5日間以上」をインターンシップの条件としていることを受けて、トップは「1週間程度」の38%、次いで大学の単位認定の対象となる「2週間程度」の30%となっている。ただし、その次には「1日程度」が25%の企業で実施されているほか、「半日程度」も8%の企業で実施予定となっており、両方を合わせると33%にもなる。いわゆる「1Dayインターンシップ」であるが、前年と比べるとこれが大きく伸びている。前年の調査では、「1週間程度」37%、「2週間程度」33%と今年とほぼ同様の数字であった。ところが、「1日程度」は16%、「半日程度」は8%の合計で24%であったから、9ポイントも増えていることになる。
「職場での就業体験」という本来のインターンシップでは、受け入れられる学生の数が極めて限られること、職場の協力を得ることが大変なこと、受け入れられる拠点が限られることなど、多くの課題を抱えている。参加する学生にとっても、会場が本社あるいは本社に近い拠点となると、本社が集中する首都圏での実施が大半となり、地方の学生にとっては経済的にも負担が大きいものになる。両者の課題を解決するひとつの方法が「1Dayインターンシップ」だ。
「1Dayインターンシップ」は社外の会場で行うことが多く、職場の協力がなくても人事部門だけで運営が可能だ。また、人数的にも1回で数十人から100人程度を受け入れることも可能となるばかりでなく、同じプログラムを複数の拠点で開催することも容易となる。

[図表3]実施するインターンシップのタイプ

拡大する受け入れ人数と開催拠点数

「2016年卒向けインターンシップに関する調査」結果報告【1】

インターンシップで受け入れる人数規模を前年と比較してみたところ、「10名未満」とする企業が依然として最も多く5割近くを占めるものの、「20名以上」とする企業の割合は30%から38%へ、「100名以上」とする企業も6%から10%へと増加している。

[図表4]インターンシップの受け入れ予定人数

「2016年卒向けインターンシップに関する調査」結果報告【1】

また、今回初めてインターンシップを実施する拠点(都市)の数についても訊いてみた。前年のデータがないため比較はできないものの、実施する拠点の数は増えているものと推測される。ファーストリティリングや日本マクドナルドなど店舗でのインターンシップを実施しているケースでは、これまでも複数の拠点で実施していたが、事務所・研究所内でのインターンシップとなると1か所かせいぜい2か所が限界であろう。ところが今回の結果を見ると、複数拠点で受け入れを行う企業が中小企業でも3割近く、中堅企業では5割近くに上っている。複数拠点で実施するインターンシップの多くは「1Dayインターンシップ」だ。単に受入れ人数の拡大だけでなく、各地の学生とのコンタクトを図ろうとする動きであることが大事である。まさに、プレセミナーの様相を呈している。

[図表5]インターンシップの実施拠点数

募集ルートのトップは大学キャリアセンター

「2016年卒向けインターンシップに関する調査」結果報告【1】

インターンシップの募集方法では、「キャリアセンター」がトップで、全体の55%と半分以上の企業が「キャリアセンター」を通じて募集している。大学でマッチングした学生を送り込んでもらうほか、自由応募タイプのものについても募集要項の掲示等を依頼している模ようである。
次いで「リクナビ」「マイナビ」等の「就職ナビ」の41%になる。6月15日時点でのインターンシップ情報の掲載数は、「リクナビ2016」は昨年の2倍以上となる2869社、「マイナビ2016」も1465社に上った。各就職ナビは、採用広報の解禁日となる3月1日までの間、メインコンテンツとしてインターンシップ情報を網羅することで、早期の会員登録を狙っているわけである。

[図表6]インターンシップの募集手段

7割前後の企業は予定通りの応募者を獲得

「2016年卒向けインターンシップに関する調査」結果報告【1】

これだけ多くの企業がインターンシップを募集するとなると、当然学生の応募を奪い合う形となり、応募者を獲得するのに苦戦する企業が多くなることが予想されるが、意外にも7割前後の企業は想定する応募数を獲得できているようである。なかには「予定よりもかなり多い」という大企業もある。大企業でも地方企業や研究職限定のインターンシップは集客に苦戦しているようである。
集客で苦労している企業が3割前後と少ないのは、就職スケジュールが大きく繰り下げとなる中、インターンシップの重要性がこれまで以上にクローズアップされるとともに、各就職ナビに煽られている面も大きいだろう。

[図表7]インターンシップへの学生の応募状況

最後に、今年のサマーインターンシップのプログラム内容について、企業から寄せられた具体例を紹介しよう。

・理系大学院生を対象にした「研究インターンシップ」。修士初任給並みの給与を支払い、研究成果を出してもらうことを期待して研究所の職場に受け入れる。 (5001名以上/通信)
・物流基礎知識の習得、航空貨物現場見学・実習、社員との意見交換、新規事業案のディスカッション等。 (5001名以上/その他サービス)
・職場での設計・開発業務体験。通常の業務を社員と同様に行ってもらう。 (5001名以上/電機)
・初日にオリエンテーションとして、総務系および生協についてレクチャ、以後、営業部門で2~3日程度同行研修し、最後に支払部門での実務経験など。(1001~5000名/保険)
・実際のプロジェクトに入ってもらい、職種別に仕事を体験してもらいます。(501~1000名/情報処理・ソフトウェア)
・1DAY:業界・会社説明、営業や事務職業務に関する体験型グループワーク。
 1WEEK:営業との同行訪問、サンプル調理実習、工場見学 等。(501~1000名/食品)
・1週間に亘る「企業実務の理解」というテーマに基づき、営業同行や間接部門業務の体験。
他、グループディスカッション。(101~300名/商社)

次回は、インターンシップの開催月、前年の参加者と内定者の関係などを見ていく予定である。

【調査概要】

調査主体:HR総研(HRプロ株式会社)
調査対象:上場および未上場企業の人事担当者
調査方法:webアンケート
調査期間:2014年7月3日~7月10日
有効回答:198社(1001名以上 45社, 301~1000名 50社, 300名以下 103社)

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