HR総研:「社内コミュニケーションに関する調査」結果報告コミュニケーション手段は、依然「メール」が8割を占める

HR総研では、社内コミュニケーションに関するアンケート調査を実施した。社内コミュニケーションは、従業員エンゲージメントを高め、組織力を向上させる最重要課題だ。
昨今、SNSやチャットなどのコミュニケーションツールが浸透しつつあるが、今回の調査から、ビジネスの現場では「メール」の利用が8割を占めるという実態も分かった。
社内コミュニケーションに対する課題意識と要因、その防止・抑制に関する取り組みについても、フリーコメントによる回答が多数寄せられた。
他社の取り組み事例を参考に、本調査レポートを社内コミュニケーションの活性化に役立てて頂きたい。

●コミュニケーションに課題を感じている企業は7割

「社内のコミュニケーションに課題があると思うか」という問いに対して、73%の企業が「課題がある」と回答した。従業員規模に関わらず同じ傾向が見られるが、従業員数1000名以上の大企業では「大いにそう思う」が約4割を占めており、1000名未満の中堅・中小企業よりも課題感が大きいことが分かる。
【図表1】社内のコミュニケーションに課題があると思うか

●コミュニケーション課題の所在は「部門間」がトップ

「どの関係においてコミュニケーション課題があるか」と質問したところ、「部門間」(71%)がトップとなった。2位は「経営層と社員」(56%)で、3位の「部署内の課長とメンバー」(36%)以下を大きく引き離している。
「部署内の課長とメンバー」(36%)、「部署内の部長とメンバー」(33%)、「部署内のメンバー同士」(31%)がほぼ同率で、「部署内の部長と課長」(21%)よりも多い。
決裁権者である「部長」クラスと、実務責任者である「課長」クラスの間では、業務を進める上で密なコミュニケーションが必要とされる。同じロジックで、「課長とメンバー」の間でも密な交流があると期待されたが、数値を見る限りそうではない。ここに、「プレーヤー」に徹してしまう「課長」クラスのマネジメント課題が垣間見える。
【図表2】どの関係においてコミュニケーション課題があるか(全体)

●SNSやメール、チャットでのコミュニケーションに課題を感じる声も

課題と感じているコミュニケーション不全の内容を、いくつかを抜粋してご紹介する。

・役職間でのコミュニケーションは会議などであるが上層部と職員とのコミュニケーションが不足。会社の理念、考えの浸透が希薄。自分事として社員が捉えられていない(サービス/1001名以上)
・縦割りすぎる。情報共有がない(日常的変化やチャレンジの情報共有不足)。部署を超えて自由に意見をだしあう機会がない(サービス/1001名以上)
・十分な対話による合意に至っていない。いざ実行に移すとなると、認識のズレが露呈し、意思決定を遅らせるなどの問題が発生する(メーカー/1001名以上)
・管理職が忙しすぎて、部下との十分なコミュニケーション時間が確保できていない。正規と非正規の間に、意識的な壁がある。各組織が専門分化、細分化されていて、コミュニケーションの機会が減少している(メーカー/1001名以上)
・国内部門のコミュニケーションに課題は無いが、海外部門と国内部門間には課題があると感じている。ミレニアム世代の価値観や考え方をベテラン世代が理解できていない。それを学習する様な機会提供がない(商社・流通/1001名以上)
・会社が拡大する中で、横の関わり(部署間の関わり)が薄くなっている(サービス/301〜1000名)
・情報共有があまりできていない(メーカー/301〜1000名)
・事業所間の物理的距離があることにより、直接的コミュニケーションが希薄となっているため(メーカー/301〜1000名)
・特に部門間でのコミュニケーション不足を感じる。自部門を守る意識が強すぎる(メーカー/301〜1000名)
・会社の方針が末端の組織まで伝わっていない。客先常駐型のSE中心の会社であるため、会社(本社)よりも顧客とのコミュニケーションが重視され、会社への帰属意識が低い(情報・通信/301〜1000名)
・マネージャ層とその下のメンバーとの関係(情報・通信/301〜1000名)
管理職とメンバーの世代間ギャップによる価値観・コミュニケーションスタイルの違い(サービス/300名以下)
・SNSなど文字による伝達が多く、誤解が生じる(サービス/300名以下)
・会社の方針が社員まで下りない(メーカー/300名以下)
・経営層側からの一方的なコミュニケーションに終始している。経営層からの一方的な情報発信はあるものの、経営層には従業員から情報を吸い上げようという発想がないことに起因している(メーカー/300名以下)
・どうしてもメンバーが固定しがち。時間が不自由な時短勤務者とそのほかに溝ができやすい(情報・通信/300名以下)
・経営判断や社内での変更事項の伝達は口頭が一番早く、知らないメンバーと知っているメンバーとの情報差が激しい(情報・通信/300名以下)
・根底にあるのは、セクショナリズムかと感じます。手を加えると上手く流れるのですが、気を抜くとまた元に戻ってしまう。その様な状況です。些細な事でも発信することが不足しています(運輸・不動産・エネルギー/300名以下)

●コミュニケーションの不足は業務の障害になる、と9割以上が回答

「社員間のコミュニケーション不足は業務の障害になるか?」との問いに、92%が「障害になる」と答えた。企業規模別でも差異はない。
【図表3】コミュニケーション不足は業務の障害になるか

●4分の1の企業が「社内情報共有ができていない」と回答

社内の情報共有について質問したところ、「あまり共有できていない」(22%)、「ほとんど共有できていない」(4%)という結果となり、全体の4分の1が「共有できていない」と回答した。
チャットやSNS、メール、クラウドサービスなど、コミュニケーション手段や情報共有のツールは多々あるが、「十分に共有できている」と回答した企業は、わずか2%しかない。
【図表4】社内の情報共有は十分にできているか

●コミュニケーション手段は、依然「メール」が8割を超える

コミュニケーション手段で利用の多いものは、昨年同様「メール」(81%)がトップとなった。以下「対面」(70%)、「対面での会議・ミーティング」(66%)と続く。
イントラネットや掲示板、グループウェア、ブログ・SNSは、いずれも30%に満たない。ブログ・SNSなどは、消費者や若者に訴求する際には重視されるが、ビジネスの現場では、やはり「メール」と「対面」、「電話」が確実なコミュニケーション手段として認識されているのだろう。
【図表5】社内のコミュニケーション手段で利用の多いもの

●阻害要因のトップは「管理職のコミュニケーション力」

コミュニケーションを阻害している要因では、「管理職のコミュニケーション力」(54%)でトップになった。2位以降に、「組織風土・社風」(45%)、「社員のコミュニケーション力」(43%)、「経営層のコミュニケーション力」(31%)と続き、この傾向は昨年同様である。
「経営層と社員」、「部門間」「世代間」「勤務形態の異なるメンバー同士」などをつなぐ役割として、管理職のコミュニケーション能力がますます問われている、ということだろう。
【図表6】コミュニケーションを阻害している原因
具体的にどこに原因を感じているのか、フリーコメントから抜粋してご紹介する。

・現場での中間管理職のマネジメント力が弱いと感じる(1001名以上/サービス)
・会社規模が大きくなり、各部門の利益を優先する風潮が出ている所(1001名以上/サービス)
・体調、結婚、育児、介護等々を考えると業務終了後の飲み会は参加率が減って当然。飲み会ばかりがコミュニケーションではない。ランチ会や意見交換会など、明るい時間帯にできる施策が必要(1001名以上/メーカー)
・業務上関係がない人とコミュニケーションをする場がほとんどない(1001名以上/メーカー)
・業務時間の短縮、業務量の増加の影響で、コミュニケーションに十分な時間を割くことができなくなってきていると感じている(1001名以上/メーカー)
・時代の変化によって発生するジェネレーション別の価値観を理解できていない。また積極的に理解しようとする人が少ない(1001名以上/商社・流通)
・個人のワークライフバランスを重視、セキュリティを過度に考えるばかりに個人携帯での使用を制限している状況。情報の機密化と柔軟性がそう反している為、コミュニケーションや情報共有が難しくなっている(301〜1000名/サービス)
・個人の業務量が増えて、上司・先輩が後輩や新人にかける時間が減っている(301〜1000名/メーカー)
・働き方改革の一環として残業時間削減を求められる一方で、顧客からの要望は増える一方というジレンマを構造的に抱えている。マネジメント層が関与するためのパワーが不足している(301〜1000名/情報・通信)
・世代に因る価値観の違い。新しい働き方が促進され、在宅勤務や短時間勤務メンバーの増加(300名以下/サービス)
・業務多忙で自分のことで手一杯でほかに気を回せない(300名以下/サービス)
・メールに依存しすぎている部分がある。対面で済ますべきこと、対面で行うべきことをメールで進めようとする(300名以下/メーカー)
・特に管理職以上の層に関して人財マネジメントの研修が出来ておらず、個々の素養に任せている状況が続いている。これにより、部下に対するマネジメントが疎かになっているように感じる(300名以下/メーカー)
・残業時間を少なくしようとすると、本業以外の、上長との面談や打ち合わせ等の時間の優先度が下がっていると感じる(300名以下/情報・通信)
・便利なコミュニケーションツールがあっても、使いこなせないベテラン社員や従来のやり方にこだわる上位役職者がいるため、社内風土がなかなか変わっていかない(300名以下/マスコミ・コンサル)
・世代によるコミュニケーションの取り方の価値観の相違がある(300名以下/マスコミ・コンサル)

働き方改革が「業務の多忙化」を生み、多様な働き方やプライベートの尊重など、価値観の変遷が阻害要因となっている、という意見も散見された。また、「メール依存」による対面でのコミュニケーション不足や、ITツールが浸透しない、などの悩みも見られる。

●「コミュニケーション研修」を実施している企業は3割

コミュニケーション不全の防止・抑制するための施策として、「コミュニケーション研修」(30%)が1位となった。以降、「従業員アンケート」(29%)「社内報」(28%)、「自己申告制度」(28%)と続く。
14%の企業が「特にない」と回答したことにも注目したい。コミュニケーション不全は、日々の業務にも支障をきたすばかりか、企業の成長や従業員エンゲージメントにも大きな影を落としかねない「リスク」である。本調査レポートから他社の動向を読み取り、何らかの行動を起こして欲しい。
【図表7】コミュニケーション不全の防止・抑制のために実施していること(全体)

●大企業では「従業員アンケート」が首位

大企業では、全体と少し異なる傾向が見られた。大企業の施策トップは「従業員アンケート」(43%)である。続いて、「コミュニケーション研修」(41%)、「社内報」(34%)、「自己申告制度」(31%)、「メンター制度」(31%)が上位を占める。
フリーコメントに「業務上の指示ばかり」と、一方通行のコミュニケーションを嘆く声も見られたが、その解決のためには、「従業員に意見を出させる」、「従業員の声に耳を傾ける」ことも大事だろう。「従業員アンケート」は、そのための取り組みとして、最も敷居が低いと思われる。
【図表8】コミュニケーション不全の防止・抑制のために実施していること(大企業)

●効果を実感した取り組みトップは「コミュニケーション研修」

上記の防止・抑制策を実施した中で、実際に効果を実感した取り組みについて質問したところ、トップに躍り出たのは「コミュニケーション研修」(12%)である。実施率が3位だった「社内報」は、効果の実感が7%と大きくランクダウンした。
とはいえ、「特にない」という回答は41%を占めている。社内コミュニケーションの改善は、なかなか効果を実感しづらい「難題」ということだろう。
【図表9】コミュニケーション不全の防止・抑制策の中で、特に効果があったと思われる施策
社内コミュニケーション活性化に効果があった取り組みについて、自由に回答してもらった。明日から使える事例もあるので、ぜひ参考にして欲しい。

・理事長杯のボウリング大会を実施、参加した社員間では効果があった(1001名以上/サービス)
・キックオフミーティングやレクリエーション活動による、社内メンバーの接触頻度維持向上(1001名以上/メーカー)
・システムコーチングの研修(1001名以上/メーカー)
・One to one会議(1001名以上/情報・通信)
・社員旅行やスポーツ大会は、一時の盛り上がりで年一回だけになりがちだが、夏祭りや冬祭りなど頻繁に行うことで普段から砕けて話す機会が増えれば仕事にも生かせると考える(1001名以上/情報・通信)
・メンター制度は離職を防げている取り組みです(月に1度、1時間の他部署のスタッフと話をする時間)。ここで仕事で困っている事があれば相談を行い、特に困っている事が無ければ、仕事以外の話をする事も可能(1001名以上/マスコミ・コンサル)
・従業員アンケートを基に欲する情報の開示を管理職より部下に説明の機会を作ってカスケードしている(301〜1000名/メーカー)
・社員からは全社員が集まる機会を増やしてほしい要望が強く、そのキックオフ等の開催は効果があった。また、マネジメント層向けに改善研修を取り込むことで、現場レベルの実践面で効果がうかがえた(301〜1000名/情報・通信)
・3年程前の「社内報」で、従業員みなの「好きなこと」を各自の写真付きで紹介しあう場があったが、その後 業務内外で話題になった(301〜1000名/商社・流通)
・各人のゴール設定と評価制度。会社に時間と労力を割く対価としてお金を得ているので、私的な飲み会などは最低限でよい。代わりに個人のキャリアパスにつながるトレーニングやワークショップは人気があります(300名以下/メーカー)
・マネジメント研修とコーチングはこれまでこの様な研修を実施したことがなかったので、単純にコミュニケーションの大切さを知らない管理職が殆どだった為(300名以下/メーカー)
・管理職を中心にコミュニケーション研修を受講させており、人を動かすには相手の話を聞くことが重要だということが一部社員には根付きつつある(300名以下/メーカー)
・資本提携で新たにグループに加わった会社の社員や社屋を、動画で社内に紹介する試み。将来、業務などで関わりを持つときアイスブレイクしやすくなる。見えないことによる疑心暗鬼も和らぐ(300名以下/情報・通信)
・創業当初からの社内イベントの開催。業務として行うため、出勤扱いとしていること。社員旅行、BBQ、屋形船などすべての費用を会社負担している。他部署との飲み会やランチ会の全額補助もあり(300名以下/運輸・不動産・エネルギー)
・面談は上司任せにしていると徹底しない。定期的に面談するシステムを制度化することにより、次第にその効能を認識し、習慣化していくようである(300名以下/運輸・不動産・エネルギー)

【調査概要】

アンケート名称:【HR総研】社内コミュニケーションに関するアンケート
調査主体:HR総研(ProFuture株式会社)
調査期間:2019年1月7日〜1月15日
調査方法:WEBアンケート
調査対象:上場及び未上場企業の人事責任者・ご担当者
有効回答:216件

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