期待されるのはスピードと対話力、そして個人力のさらなる向上

■背景■
GAFAMに代表されるビッグテック企業の台頭、いまだ猛威を振るう新型コロナウイルス、声高に連呼されるDXというキーワード…。まさにVUCA時代と呼ぶにふさわしい予測できない環境変化が発生しているここ数年間で、企業が管理職に求めることは大きく変わったとされています。今や9割超の管理職が、プレイヤー業務とマネジメント業務のどちらも担うプレイングマネージャーの役割を求められているといわれていることもその変化の一つです。また働き方改革の推進やリモートワークの導入など、働き方が多様化する中で、一般社員(非管理職)が管理職に求めることも変わってきています。では企業で働く管理職、そして一緒に働く一般社員が日々の仕事を通じて実感する管理職像の変化と実態はどのようなものなのでしょうか。

当社は5,099名へのアンケート調査を行い、この10年間で管理職に求められる役割がどのように変化したのかを現場の管理職、そして一般社員の視点から解き明かすことに取り組みました。本調査結果が組織づくりや次世代の幹部社員・管理職育成に悩む経営層、人事担当の方のみならず、管理職層の方、管理職を目指す一般社員の方にとって有益な情報となれば幸いです。


■調査結果の概要■
1.約80%の管理職が、管理職に求められることが10年前と比べて変化したと回答
2.コンプライアンスやモラルを最重視。また正解を持つ管理職像から、自身もプレイヤーとしてスキルアップを続けながら、対話を通じ正解を一緒に考える管理職像へと変化
3.管理職像は、現状と期待に大きく乖離あり。ボトムアップが期待されるが、未だトップダウンが現状だった
4.従業員の働きがいを生み出すのは管理職の振る舞い
5.管理職自身が重視するのはマネジメント力とコーチング力

調査結果の詳細

1.約80%の管理職が、管理職に求められることが10年前と比べて変化したと回答

10年前と現在を比較し、求められる管理職像が変わったと回答したビジネスパーソンは52.9%でした。そのうち、管理職の回答だけでみると「変わった」と回答した人は79.8%にも上りました。

ここから先の設問は、求められる管理職像が10年前と比べて「変わった」と回答した方のみに尋ねました。


2.コンプライアンスやモラルを最重視。また正解を持つ管理職像から、自身もプレイヤーとしてスキルアップを続けながら、対話を通じ正解を一緒に考える管理職像へと変化

現在求められている管理職像は「コンプライアンスやモラルを重視する(82.7%)」が最多でした。そして「時間内で効率的に終わらせる(75.9%)」「自ら何をすべきかを定義し、遂行する(70%)」「個人としてのスキルアップを志向する(68.4%)」「対話を重んじる(67.7%)」と続きました。数多くのコンプライアンス違反に関連する企業不祥事の報道やパワハラ防止法の施行、働き方改革、プレイングマネージャーが当たり前となったことなど、世の中の動きが反映された結果と推察されます。

また、10年前と現在の求められる管理職像で、最も減少した項目は「トップダウンで物事を進める(10年前:77.2% 現在:15.4%)」。続いて「部下に自分の模倣を求める(10年前:62.4% 現在:7.2%)」、「前例を踏襲する(10年前:58.8% 現在:15.1%)」でした。管理職とは正解を持っていること、それを部下が模倣し成果を出すことが10年前の管理職の姿だったのでしょう。しかし、これまでのやり方が通用しないほど、会社を取り巻く環境変化が大きくなった結果、管理職自身が正解を指し示すことが困難となり、対話・ボトムアップで正解を一緒に考え動くことが求められるようになったのだと推察されます。


3.管理職像は、現状と期待に大きく乖離あり。ボトムアップが期待されるが、未だトップダウンが現状だった

管理職が実際に担っている役割で多かったのは「コンプライアンスやモラルを重視する(50.2%)」「トップダウンで物事を進める(44.5%)」「企業利益を重視する(43.4%)」「リスクヘッジを徹底する(42.1%)」「前例を踏襲する(41.3%)」でした。その傾向は、10年前に求められていた管理職像と合致する部分が多くみられます。

さらに現在求められている管理職像に対して、管理職が実際担っている役割とのズレを確認しました。スコアに大きく差があった項目は「自ら何をすべきかを定義し、遂行する(-40.9pt)」「ボトムアップで物事を進める(-40.2pt)」「時間内で効率的に終わらせる(-38.8pt)」「前例にないことを行う(-38.7pt)」「対話を重んじる(-35.3pt)」「部下に自分とは異なる強みの発揮を求める(-34.3pt)」でした。

この結果から、実際の管理職像は、10年前に求められていたものから現在求められているものへと変化の途上にあることがうかがえます。


4.従業員の働きがいを生み出すのは管理職の振る舞い

管理職像が変化した理由は、「働き方が多様化した(68.4%)」が最多、「市場環境が変化・複雑化した(52.2%)」と続きました。新型コロナウイルスをきっかけにリモートワークなどの働き方改革が加速し、また今まで通りのビジネスのやり方ではうまくいかないケースが多数発生しました。これらの変化が管理職像へ大きく影響を与えたと推察されます。

続いて「従業員満足度や従業員の働きがいを重視する世の中になった(42%)」も上位に挙がっています。管理職のふるまいが「従業員満足度や働きがい」へ影響を与えることを、管理職・一般社員どちらも自覚しているといえるのではないでしょうか。


5.管理職自身が重視するのはマネジメント力とコーチング力

管理職に求められるスキルや知識のうち、特に重視されるようになってきたものを尋ねる質問では、「マネジメント(60.4%)」が最多で6割超え。次いで「IT・デジタルに関するリテラシー(45.1%)」「言語化する力(相手に合わせた表現で伝える力)(40.9%)」が続いております。

また、管理職の回答に着目すると「マネジメント(68.4%)」と「コーチング(50.1%)」の2項目は一般社員の回答を大きく上回りました。 人を動機づけ、動かし、成果を出すことが求められる一方で、それが十分にはできていないという管理職自身の課題感が反映されているのではないかと推察されます。
【組織・チームのあり方を5,000人に調査】管理職の8割が、10年間で管理職に求められることが変わったと回答