第55回:AIによる「第四次産業革命」到来? 時代と帯同し、変化するリーダーシップスタイルを俯瞰する

AIを軸・象徴としたビジネス環境の大きな変化が日々話題となっています。長らく続いた“平成の失われた30年”から、物価・金利などをはじめ、気がつけば大きく局面が転換しインフレ基調は高まるばかり。日経平均はついに一時期7万円を超え、日本経済新聞記事では「市場がAIによる第四次産業革命が到来したと見ている」と報じられました。

こうしたトレンドの中で、私たちのリーダーシップのあり方にも変化が問われるのでしょうか? 今回は、改めて戦後以降から現在までを俯瞰し、時代とともに変遷するリーダーシップスタイルを振り返ることで、今後の最適な“リーダーシップスタイル”を予測してみたいと思います。

リーダーシップの4つのスタイル

リーダーシップにはいくつかのスタイルがあり、時代の変遷とともにそのスタイルは作られてきました。産業革命以降のピラミッド型官僚組織、日本の戦前戦後の古き良き村社会、90年代からのグローバル経済の中でのカリスマ型礼賛、21世紀以降のアジャイル&やりがい時代のサーバントリーダーシップ、そしてこれから……。

慶応義塾大学大学院理工学研究科の特任教授、および立命館大学大学院テクノロジー・マネジメント研究科の客員教授を務める小杉俊哉氏(THS経営組織研究所代表)と当社で、リーダーシップの発展理論を明らかにしたものがあります(「リーダーシップ3.0®」、「リーダーシップ4.0®」)。そこではリーダーシップを「1.0」、「1.5」、「2.0」、「3.0」、そして「4.0」と位置付けています。以下にそれぞれご紹介してみましょう。

「リーダーシップ1.0」は、古典的な官僚型組織、権威型組織でのマネジメントを指しています。権力・権限をふるうトップダウンで「あれをやれ」、「これをやれ」というスタイルですね。

そこから日本の高度成長時代に見たリーダーシップスタイルを「リーダーシップ1.5」(調整者型)と呼んでいます。これは“ムラ型”的でありつつ、その中でも現場を活かすことや意見を取り入れること、また集団としての仲の良さ、和気あいあいとしたものが組織に活かされるリーダーシップの時代でした。日本的雇用の“三種の神器”的なやり方が世界のお手本とされ、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などとも言われて欧米が日本の組織を学びに来た時代でした。

そして1990年代になると、グローバル化も進み競争が激化する中で、「そんな生ぬるいことを言っていたら潰れてしまう」とばかりに、それまでのリーダーシップを否定するリーダースタイルが出てきました。「リーダーシップ2.0」(変革者型)です。これは組織の方向性を大胆に提示して、部門間の再編・競争・交流を促すことで組織を変革していくタイプのリーダーシップを指します。いわゆるカリスマ型リーダーですね。ジャック・ウェルチやガースナーなど、個性が際立って見えるタイプのトップがグイグイと自社を率いていくスタイルが望ましく見えました。まさに、屈強に喘ぐ日産の救世主として1990年代末に颯爽と登場したゴーン氏もまた、「リーダーシップ2.0」タイプのリーダーでした。

組織や個人の主体性・自律性を引き出せるリーダーが求められている

そして、21世紀~現在です。

クビキリ文化のイメージが強いアメリカなどでも、ここのところ、「レイオフをするにしても、レイオフのされ方の問題があるだろう」、「ちゃんと情報共有して、社員全体の信頼関係をつくろう」、「社内顧客として社員を扱おう」といった風潮が非常に強くなっています。これにはZ世代、アルファ世代と言われる世代価値観の変化圧力もあるでしょう。そして何より、雇用者の扱いに関してネガティブな事象があれば、SNSなどで一気にバズり炎上するようになった“コミュニケーションのオープン化”の影響も大きくあると思います。

1990年代になって変革者タイプの「リーダーシップ2.0」が登場しました。しかし、変革や結果に対する過剰な圧力などによって、組織はギスギスし、メンタル不調も増えました。そこで、また昔のようなコミュニティのあり方が注目されています。

Googleの研究などを見ると、非常に興味深い話があります。Googleほどの最先端テクノロジーを持った会社で、大量の人員とお金を投下して、「一番生産性が高いやり方はなにか」を解き明かしてみると、なんと昭和の時代までの日本企業のようなやり方が一番良いといった結論に至っているのです。

そのような状況を含めて、いま日本においても、世界においても望ましいリーダーシップスタイルとなっているのが、「リーダーシップ3.0®」です。

これは、リーダーが組織全体に働きかけ、ミッションやビジョンを共有し、コミュニティ意識を涵養するもの。そして同時に個人とも向き合い、オープンにコミュニケーションを取り、働きかけて、組織や個人の主体性・自律性を引き出すスタイルと定義付けています。
一般的には「サーバント・リーダーシップ」などと言われているものと、ほぼ同義です。

こう紹介してきますと、「いま取るべきリーダーシップスタイルは、あらゆる場面で3.0(4.0)なのだ」と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、それは間違いです。会社の創業期、新規事業の創出期、あるいは事業の大きな変革期や再生期においては、経営や事業の舵をダイナミックに切る/切り直す、大鉈を振るうべきときという場面が、折々発生します。その際に必要なリーダーは「3.0」ではなく、「2.0」型のカリスマリーダー。我が社が行くべき道筋を明確に大胆に指し示し、全従業員をグイグイ引っ張っていくリーダーです。

日産においてゴーン氏は、19年にも渡る長期政権を築いていました。そして当初、ゴーン氏の「2.0」スタイルは素晴らしく効果的でした。たられば話になってしまいますが、日産のリバイバルプランが成功したのだとすれば、その後、再生を果たしたのちにゴーンもしくは後継者が「3.0」型リーダーシップで日産を自律型リーダー集団へと導くべきだったのではないでしょうか。次のフェーズへと移行すべき期間が充分にありながら、それができずにゴーン氏が経営や役員報酬の最終決定権を握り続けるような「2.0」延命状況が、結果として晩節を汚す事象を招いたとも言えるのではないか――そんな風に思えてなりません。

全ての人がリーダーである時代へ

さて、私たちはいま、さらにその先の予兆も感じています。「リーダーシップ4.0®」です。

「リーダーシップ4.0®」の定義は今後、明確化されていくことになると思いますが、現時点で解説するならば「自己実現」のようなものが軸となるリーダーシップ、となるでしょうか。

マーケティングの父、フィリップ・コトラーは「マーケティング4.0」=「自己実現」と言っており、組織論の大家であるピーター・センゲも「ラーニング・オーガニゼ―ション(学習する組織)」を極めていく中で、あるいは『持続可能な未来へ』の中では、古から学び、過去と未来の架け橋となり、両方を受け止めながらリーダーシップを発揮すること、とかなり精神性の話になって来ています。

「リーダーシップ4.0®」とは、全ての人がリーダーである、とも言い換えられます。

自分自身に対してリーダーシップを発揮しないと、「今この環境の中で、ただ言われたことだけをやるんですか?」という話になります。自分のやりたいことに対して、自分が能動的に関わっていく。「WHAT(テーマ)」を設定して、それに向かってやっていく。そもそも組織としても言われたことしかやらない集団というのは、もはや機能しなくなっています。一人ひとりがリーダーシップを発揮することを、一人ひとりが意識しないといけない時代になっています。AIが普及し、これまで人間が担っていた「言われたことをやる」ことについては、全てAIが人間以上のクオリティ、精度、スピードで24時間365日、こなしてくれるようになり始めています。

そこで、これから「人が行うべきこと」は何か。その答えが「リーダーシップ4.0®」だとも言えるのです。

つまり、「リーダーシップ3.0®」、「リーダーシップ4.0®」をスタイルとして体現していくことこそ、現在部長・課長としてご活躍中の読者の皆さんが、今後リーダーとしての良い歩みを実現するポイントになるでしょう。

そして組織は「人」と「人」をつなぎ直すものへと

それはある面、原点回帰の部分もあります。

特に21世紀に入ってから日本企業は、機能的に(機械的に)単一の会社として効率や成果をあげることを、アメリカ企業以上に追求し過ぎてしまった部分があります。それで職場がギスギスして、人間の営みではなくなり、コミュニティ意識が持てなくなって、悩みが増え、簡単に社員が辞めていくようになってしまった側面があります。これは、むしろアメリカ以上に進んでしまったと言えるでしょう。(実際、米国企業の方が、会社でオフィサイトのイベントやバースディサプライズパーティをやったりしている割合が多くなっている現実がありました。)

思えば、「リーダーシップ1.5」の時代は、上司と部下の関係も、「人間」と「人間」でした。運動会をやれば、上司が不格好に転んだり、思いのほか活躍したりしました。社員旅行に行けば、酔っぱらって裸踊りしたり、卓球が上手だったりしました。あるいは、上司の家に行ってごちそうになると、実は奥さんに頭が上がらないこともわかりました。そんな人間的な側面を見る機会がたくさんあったのです。しかし今は、それがどんどん排除されてしまい、部下と飲みにいくのも憚られるような時代になっています。

少し前に注目されて流行った「稲盛流コンパ」や「ヤフーの1on1」などと注目された“新しい手法”は、なんのことはない、高度成長期の日本企業は大手から中小までほとんどの企業がやっていたことです。

「人」としてのあり方に改めて見つめ直しが起こりつつあるいま、まさにぐるっと時代が戻って来たのかもしれません。


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「リーダーシップ3.0®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です(登録番号:第5435135号)
「リーダーシップ4.0®」は、株式会社 経営者JPの登録商標です(登録番号:第5934148号)
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