株式会社ベネッセコーポレーション | HRプロ

VOL.03

NTTデータ先端技術が推進する
“2次元フィールド”の評価制度
いかに専門人材を獲得・定着させて、事業成長へとつなげていくか

株式会社NTTデータ先端技術様

Udemy Business

INTRODUCTION

NTTデータグループのIT基盤領域のコンサルティングから開発・運用を担う株式会社NTTデータ先端技術では、高い専門性を持つ人材をより適切に評価・処遇するため、2021年に新たな評価フレームを構築しました。従来のマネジメント力の発揮を評価する「Management Band」(またはM軸)と、技術力や専門性の発揮を評価する「Specialty Band」(またはS軸)の2軸によって、社員一人一人の多様なキャリア実現を後押ししています。そこで今回は、この人事制度変革を人事総務部長として主導し、現在は事業部門を統括されている小林武博氏を、株式会社ベネッセコーポレーションで多くの企業の人事制度改革を支援してきた飯田智紀氏が訪問。NTTデータ先端技術が新たな人事制度を導入した背景や狙い、そして制度浸透のための工夫や成果について語り合っていただきました。(以下敬称略)

【用語解説】

・Management Band
マネジメント力を評価する軸(M軸ともいう。等級段階はMB5~MB1)

・Specialty Band
技術力や専門性を評価する軸(S軸ともいう。等級段階はSB4~SB1)

「マネジメント × 専門性」の両軸で社員の多様なキャリア形成を支援

飯田御社では、社員の皆様の多様なキャリアを支援するために「2次元フィールド」の評価制度を導入されています。まずは、この制度を導入された経緯や背景についてお聞かせください。

小林弊社ではこれまで「マネジメント力(Management Band、M軸)」という一つの軸で人事評価を行ってきました。マネジメント力の発揮度合いをもとに社員を課長、部長、事業部長へと昇格させるという処遇の決め方をしていたのです。実際には、社員の8割以上が技術者であることから、専門性の発揮度合いが必ずしもマネジメント力の発揮度合いとして評価できない場合もあり、「どうしたら給料が上がるのですか?」といった戸惑いや不満の声も少なくありませんでした。さらにもう一つの課題は、スペシャリストを採用しづらいことでした。従来の給与体系では、優秀な技術者を採用する際に、その専門性やスキルを適切に処遇へ反映できず、最終的に他社のオファーに負けてしまうケースもあったのです。こうした背景から、技術力や専門性を正当に評価し処遇するためのSpecialty Band、S軸を加え、M軸とS軸をそれぞれ評価できるフレームを構築しました。

飯田人事制度の全体像、具体的な枠組みはどのようになっているのですか。

小林弊社では、新卒採用の場合、すべての社員に対し入社後まず「Common Band」という基礎的な能力を身につける期間を設けています。ここで5~6年程度かけて幅広い経験を積んだうえで、その後M軸とS軸からなる二次元空間に移ります。M軸は5段階(MB5~MB1)、S軸は4段階(SB4~SB1)のレベルを設定しており、たとえばマネジメント力を十分に発揮できずM軸の等級が上がらなくても、技術力や専門性を高めてその力量を発揮すればS軸の等級が上がり、課長や部長と同等の処遇を受けることができます。もちろんその逆もあり得ますし、両軸のバランスを取りながら等級を高めたり、キャリアの途中でどちらかの軸に重点を置くことも可能です。いずれにしても、この枠組みによって、社員一人一人が自分らしいキャリアプランを描き、実現できるようになります。

飯田2つの軸で人材の強みを捉えられるというのは、とても良いアプローチですね。最近は、必ずしも管理職ではない高度人材を獲得したいというケースや、今いる人材のリテンションという観点からも、「もう一つテーブルが欲しい」という話をよく聞きます。その中で、実際にこうしたフレームを構築されているのは、特に新規採用の面で非常に効果があるのだろうなと感じました。

飯田一方で、導入後に既存社員の方々をこの新しいテーブルに馴染ませる際にご苦労されるケースも多いと聞きます。そうした点も含め、制度の設計や運用ではさまざまな試行錯誤があったのではないでしょうか。ご苦労された点や工夫された点を教えてください。

小林この制度を導入するにあたって課題となったのは、Specialty Bandの最初の格付けと、評価される側ではなく評価する側の負担でした。
まず、最初の格付けですが、導入の前年度に「Exercise」(格付けトライアル)というスローガンを打ち出し、プレ評価を行い既存の全社員を試験的にS軸の各等級に格付けました。売上など定量的な目標や実績を設定しやすいM軸に対し、S軸は技術力や専門性の高さをどのように判断すべきかが分かりにくいという難しさもありました。そのため、評価項目や基準をどう設けるかを徹底的に議論し、ガイドラインを作成していったのです。
次に、評価する側の負担の問題です。これまでは主にM軸を見ていればよかったのが、今後はM軸とS軸の両方を評価しなければなりません。これまでも技術力や専門性の発揮度合いは考慮していたものの、まったく別に評価するとなると評価にかかる時間やプロセスも単純に2倍になります。チャレンジシート面談といって期首と半期、そして期末に目標のすり合わせや振り返りを行うのですが、部下を多く抱える管理職ほど負担が大きくなります。見えてきた不具合や課題を都度議論し、ガイドラインやチェックリストなどを含め修正を重ねながら制度としての完成度を高めていきました。

飯田これまでの運用から大きく変えられたという意味では、導入当初は少なからず混乱もあったのではないでしょうか。その中でも、S軸の4段階をどのように設計されたのかは非常に興味深いところです。会社としてどんな考え方でこの4段階を定義されたのか。その点が採用における競争優位性にもつながってくるように思います。

小林おっしゃるとおりです。S軸の4段階については、4・3・2・1とレベルが上がるごとに、求められる技術力や発信内容のレベルを明確に設定しました。また、NTTデータグループ内には個々の専門性や能力を評価する認定制度があるのですが、そのレベルとも整合性を取っています。さらに各段階の難易度の目安として、SB3をシニアレベルの技術者と位置づけ、制度導入から3年で社員の半数以上がこのSB3に到達できる水準としたうえで他の等級を設定しました。

現場浸透のカギは、丁寧な説明と納得感のある評価基準

飯田現場への浸透はどのように進めたのでしょうか。

小林人事で説明資料を作成し、社員向けの説明会を5回、管理職向けの説明会を4回実施しました。その場で質問を受け一つ一つ丁寧に答えていきました。また、実際に運用が始まった後も、毎年7月の給与改定のタイミングでM軸・S軸それぞれの詳細な評価内容と給与との関係を紙面にまとめ、全社員に個別に送付しています。社員に理解してもらうためには、透明性の確保と説明責任の徹底が重要になると思います。

飯田社員の皆様の納得感や満足感を高めるために特に工夫された点はありますか。

小林「社員が納得できる評価基準をつくる」これに尽きると思います。そのため、人事だけでなく当時部長職を務めていた事業組織の技術者にも制度設計に参加してもらいました。SB4・3・2・1それぞれのレベルで求められる行動基準や業績基準を、現場の視点も交えながら丁寧に決めていきました。

飯田ちなみに、S軸の評価というのはマネージャーが個々に行うのでしょうか。それとも、第三者の視点も入れているのですか。

小林基本的に弊社のマネージャーは多くが技術者でもあります。そのため、人事で基準をしっかり提示しておけばそこから先はスムーズに評価が進みます。そういう意味ではS軸のほうが評価しやすいですね。技術力を中心にキャリアを築いてきた社員にとっては、逆に、M軸のほうは「この人が課長としてどの程度のマネジメント力があるのか」など、評価が難しい面があると思います。

飯田そうなると、むしろS軸のほうが評価に対する不満は少ないのでしょうか。

小林不満がまったく出ないわけではありません。ただ、もしマイナス評価がついた場合にはその理由をしっかり説明し、本人が納得できるまで丁寧に話し合うようにしています。実は、2軸で評価する仕組みには「M軸とS軸を独立して評価できる」という大きなメリットがあるのです。たとえば、「今回はM軸では期待通りの水準だったけれど、S軸では等級の水準を上回る技術力や専門性の発揮があった」といった具合に評価を分けて見ることで、フィードバックがしやすく動機づけにもつながるため、評価する側にとっても助かると思います。

飯田評価に対する不満はどの会社でも多少はあると思いますが、御社ではネガティブフィードバックに対して、社員にも管理職にもセーフティネットのような仕組みがしっかり機能している印象を受けます。それにM軸とS軸があることで、評価への満足度の向上にもつながっているのですね。

小林そうだと思います。業績が悪かったからといってその人の技術力が低いわけではありません。特に事業を立ち上げた直後は業績がなかなか上がりにくいこともあります。しかしその中で自身の技術を活かして事業に貢献しているのであれば、S軸のほうでしっかり評価することができます。そういう意味では、事業成長のあらゆる場面で社員を評価できる仕組みとして機能していると感じます。

飯田評価する側のリテラシーに関しては、一般的にはS軸のほうが難しいという声をよく聞きます。特に技術者などの専門的な人材が少なく、これから増やしていこうという会社の場合、専門性を正しく評価できる管理職がいなかったり、スキルが特定の人に属人化してしまったりする課題もあります。その点、御社はもともと高い技術力を持った社員が多くいらっしゃったことが、制度をスムーズに浸透させるうえで大きかったのですね。

技術力は持つだけでなく、発信して価値となる

飯田小林様は現在、事業部門に移られて、実際に制度を運用する立場でもいらっしゃいます。この仕組みを事業の成長や成果につなげていくうえで、日頃から意識されていることや取り組まれていることはありますか。

小林技術力や専門性は自分の中に抱え込んでいるだけでは意味がありません。社内外に発信し、活用されてこそ価値があると考えています。たとえば、社内勉強会やウェブサイトを通じて情報を発信することで、その内容をお客様にご覧いただいたり、「この会社で働きたい」と感じる方が出てくることもあります。そのため会社としても積極的な情報発信を推奨しており、そうしたアクションに対してはきちんと評価する仕組みを設けています。
またS軸については、上位ランクであるSB2やSB1にはコンサルティングスキルを身につけてほしいと伝えています。これは技術者に限らず、営業や人事などすべての職種に共通している考え方です。技術を基点としたコンサルティングに注力する弊社ではコンサルティングスキルを専門性の一つの構成要素と捉えており、たとえばSB2に求められる能力として、「お客様と向き合い、問題を解決する」「潜在的な問題を明らかにする」といった項目をすべての職種において評価基準に明記しています。

協力:株式会社ベネッセコーポレーション(Udemy Business)

このあと

  • 社員の“キャリア自律”が進む中で見えてきた、意識と言葉の変化
  • 専門性とマネジメント力――両輪で成長を促すための仕組みづくり
  • 人事制度改革と経営戦略をどう結びつけ、改革を着実に進めているのか

について話題が続きます

PROFILE

  • 株式会社NTTデータ先端技術
    執行役員
    マネージド&ファシリティサービス事業本部
    副事業本部長
    兼マネージドサービス事業部長

    小林 武博氏

    1992年NTTデータ通信株式会社(当時)入社。インターネット黎明期よりネットワーク領域を主軸に新技術・製品のお客様システムへの導入を主導。2015年7月より、株式会社NTTデータ先端技術にて、システム基盤の設計、構築、維持部門を統括。2019年7月より、人事総務部長として新人事制度導入をリード、完遂。2022年7月より現職、同社の技術力を活かしたマネージドサービス事業の立上げに取り組んでいる。

  • 株式会社ベネッセコーポレーション
    執行役員 社会人教育事業領域担当
    (Udemy日本事業責任者)

    飯田 智紀氏

    新卒でソフトバンクグループ株式会社に入社。経営企画・グループ会社管理、事業再生・国内外投資業務などに従事。その後、2015年9月に株式会社ベネッセコーポレーションに入社。2018年4月よりUdemy(ユーデミー)事業を中心とした社会人向け教育および組織開発関連事業の責任者となり、2024年4月より現職。

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