VOL.01
人事がアクションを起こし、組織を変えていく
~従業員の“働きがい”最大化を目指すオリエンタルランドの現在地~
株式会社オリエンタルランド様


INTRODUCTION
ここで働くことが楽しい。そう感じる従業員を増やせるかどうかが、生産性や業績にも影響を与えます。この“働きがい”の向上を重視し、企業に変革をもたらす革新的な取り組み事例を表彰する「HRX of The Year 2024」で最優秀賞を受賞したのが、テーマパーク運営で知られる株式会社オリエンタルランドです。
そこで今回は、同社人事本部・人事本部長の瀧澤雄一朗氏を招き、対談を実施。聞き手は、オンライン動画学習プラットフォーム「Udemy」および「Udemy Business」を運営する米国Udemy社と日本の独占的事業パートナーである株式会社ベネッセコーポレーションの執行役員・飯田智紀氏が務め、各種施策と、そこに込められた思いを解き明かします。(以下敬称略)
「仕事に対するやりがい」と「人間関係」が働きがいを左右する
飯田人的資本経営を推進するためには、トップダウンの施策だけでは不十分です。従業員にとっての働きがいは何かを考えて、現場からエンゲージメントを上げていく、いわばボトムアップのアプローチも必要。そんな施策に取り組んでおられるのが、株式会社オリエンタルランドだと認識しています。
瀧澤われわれオリエンタルランドが従業員の働きがいやエンゲージメントについて深く考えるようになったのはコロナ禍のこと。「不要不急の外出は避けるべし」とされた時期です。テーマパークをはじめ、多くのレジャー産業は不要不急と見られる存在。閉園を余儀なくされ、会社としての収入は激減しました。
ビジネス的な側面と同じように問題として大きかったのは、従業員が自分たちの存在意義を見失い、お客様からの「ありがとう」が触れられなくなってしまったことで、自己肯定感が下がっているようにみえたことでした。振り返ればわれわれは、お客様のハピネスを優先して、従業員の幸福を当たり前にあるものと考えていたように思います。そうした反省から、従業員の働きがいを再確認しようと考えたわけです。
とはいえ、中期経営計画などに盛り込んだのは「従業員の働きがいを高める」という目標を定めつつ、具体的なアクションは随時考えて進めました。まずは経営陣に、入社してから現在に至るまで、どんなことに働きがいを感じたのか語ってもらったところ、これが予定時間を大幅に超えるくらい盛り上がったのです。
【従業員の働きがいを高める取り組みの方向性(体系図)】

飯田働きがいという曖昧な課題を話しながら言語化していく作業、といったところですね。

瀧澤一般的に「働きがいを高める」ためには、賃金や環境などの衛生要因を高めることと捉えがちですが、それ以外の部分が重要だという結論に至るのではないか、そんな予感がありました。具体的には「仕事そのものに対するやりがい」と「上司やメンバーとの関係性」です。実際、その2つがオリエンタルランドにおける働きがいにつながりそうだとわかりました。
次は、その意識をどう社内に浸透させていくか。そのための施策が『KATARIBA(カタリバ)』です。要は、周囲との対話の中で、自らの働きがいを言語化して再確認し、相手に伝えてみることで、お互いの関係性をより深く構築し、広げていく取り組みです。
約60人の部長職を3人1組のグループに分けて「みなさんにとっての働きがいは何ですか?」というテーマで話し合ってもらいました。部長といっても年齢差が20くらいあるため、なるべく世代や入社時期を合わせて、日ごろの関係性を軸に組み合わせにも配慮しました。各人に入社した時からのモチベーション曲線を描いてもらい、会社の歴史年表を用意し、その時々に流行したJ-POPをBGMとして流し…といった工夫も施しています。
何が楽しかったか。辛かった時期はいつか。さまざまなテーマを通じて、会話は大いに盛り上がりました。そのうえで「じゃあ自分たちの部下は、いま働きがいを感じているのか」、「働きがいにつながるメッセージを発信できているのか」などを考え、今後の行動を書き出してもらいます。そしてこの『KATARIBA』をマネージャー(課長職)やメンバーへと段階的に広げていきました。
働きがいについて考えるきっかけを、社内に浸透させていくために
飯田『KATARIBA』をどんどん広げていく中で、部門や世代によって働きがいに関する意識の差は表れてきたのでしょうか?
瀧澤世代や職責に関係なく、出てくるのは結局「仕事そのもののやりがい」と「周囲との関係性」の2点です。どちらかが満たされていれば組織への帰属意識は高まり、両方とも充実していれば自らのエンゲージメントを実感しながら活き活きと働くことができます。一方で、どちらも欠けてしまっていれば、自分自身と仕事・組織の紐づけが弱くなってしまい存在意義を見出せなくなってしまう、といったイメージですね。
もちろん昭和世代と若手では、仕事への動機づけの方法や関係性の作り方といったHowの部分は若干違いますが「そもそも仕事そのもののやりがいと人間関係が大切なんだ」というWhatは一致しています。

飯田御社は、テーマパーク運営という単一の事業を展開している会社であるわけですが、多角的に事業を推進している企業でも同じような結論が出てくるのでしょうか?
瀧澤どんな事業分野でも、やはり原点は「仕事そのもののやりがい」と「上司・仲間との関係性」という内発的動機付けだと私は考えています。
飯田事業フェーズの違いも無視できない要素です。会社を立ち上げて間もない時期と事業がある程度成熟した後では、働きがいやエンゲージメントの捉え方が違ってくるのではありませんか?
瀧澤確かに、会社の創成期を知る層から見ると「いまは挑戦が足りない」と感じることもあると思います。それもあって、事業の成長度などを盛り込んだ会社年表と照らし合わせながら、それぞれの働きがいを再確認したのです。客観的・俯瞰的に振り返ることで「事業の成熟度に応じて挑戦の仕方は違う」ことが理解しやすくなったと思います。
飯田「仕事そのものに対するやりがい」と「周囲との関係性」の重要性が社内に浸透し始めたとして、では、どこまで行けばカルチャーとして根づいたといえるのでしょう。というのも、組織というのは“復元力”が強く働く場。取り組みを止めると、すぐ昔の状態に戻ってしまうことも多いと思うのです。
瀧澤会社側から仕掛け続けることは大切ですが、 “やらされ感”があると続きません。幸いにも『KATARIBA』は自走し始めています。われわれ人事部が旗を振らなくても「うちの部でもやりたい」、「語り合うのは楽しい」と自らやってくれています。職場単位での実施となるので、20代から60代まで年齢を問わず、また、役員・管理職・一般職という職位を問わず一緒になって「この職場での働きがいとは何か?」と考え、議論しています。
エンゲージメントサーベイの結果、「働きがいやエンゲージメントという言葉を日常的に話している組織ほど、総合的なスコアが上昇している」ことがわかりました。今後も『KATARIBA』などを通じて職場での対話を増やしていくことになるでしょう。
勇気を持って一歩を踏み出す。チャレンジの場を創出することが大切
飯田働きがいを最大化するための、実際のアクションはどのように進めていらっしゃるのでしょう。
瀧澤各職場単位で取り組んでもらっています。メンバーにどんな状態になってもらいたいのか。そのために何をするのか。部長やマネージャーに計画などを提出してもらいます。
たとえばテーマパークのオペレーションを担う部門からは、「他のサービス業から学んでみたい」という声が上がりました。そこで、サービスの素晴らしさに定評のある飲食店を見学させていただき、またそこで働く方のお話を聞くことで、自分たちの仕事を見つめなおすことができた、という機会につながった事例もあります。
協力:株式会社ベネッセコーポレーション(Udemy Business)
このあと
- 「ジョブトライ」など、従業員の活躍機会を広げる独自の社内制度の全貌
- 小さな一歩を後押しする「それも、一歩」展の仕掛け
- 褒める力を育てる独自研修と、その波及効果
- 「従業員の幸福度」を高めるリーダーシップの本質
について話題が続きます
PROFILE
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株式会社オリエンタルランド
人事本部 人事本部長瀧澤 雄一朗氏
1997年、新卒で株式会社オリエンタルランドに入社。運営本部運営部にてテーマパークのアトラクション担当者、時間帯責任者を経験。2005年より営業本部営業管理部にて2つのテーマパークのマーケティング戦略立案に従事。2007年より人事本部にて、約2万人の準社員(アルバイト)の採用および人事制度の策定・管理業務を経て、2015年にワークフォースマネジメント部長に就任。準社員の労働力需給管理やITシステム開発プロジェクトを指揮し、2019年にはキャスティング部長に就任、新人事制度の導入を牽引。2020年より人事部長として、採用、評価、配置、報酬、教育に至る社員の人事制度全般を管理。2025年5月より、現職にて人事領域全般を担当している。
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株式会社ベネッセコーポレーション
執行役員 社会人教育事業領域担当
(Udemy日本事業責任者)飯田 智紀氏
新卒でソフトバンクグループ株式会社に入社。経営企画・グループ会社管理、事業再生・国内外投資業務などに従事。その後、2015年9月に株式会社ベネッセコーポレーションに入社。2018年4月よりUdemy(ユーデミー)事業を中心とした社会人向け教育および組織開発関連事業の責任者となり、2024年4月より現職。
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