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AI時代のコンセプチュアル思考[4] ~物事をしなやかに鋭くとらえなおす力

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2026年08月23日

AIが協働パートナーとなる時代、人間に残される思考は「コンセプチュアル(概念的)思考」になる。それはつまり──雑多な出来事・情報から本質を抜き出し、概念を形成する。客観的認識にとどまらず、主観的意志(信念・理念)を行動に変える。そのコンセプチュアル思考における5つの基本スキルについて拙著『入門コンセプチュアル思考』からサマリー解説する。今回はその4つめ──「精錬」のスキル。

「既成概念」というラクな思考

私たちは往々にして、自分のなかにいったん取り込んだ概念や考え方を固定化させてしまう傾向があります。人間は自己のなかにいったん物事の処理回路(=思考の枠組み)をつくってしまったなら、それをむやみに変えようとはしません。変えないほうがラクだからです。その観点からながめると、既成概念はいわば、思考の省力回路であり、変えたくない安心回路といえます。

そのように人間がある部分、安定を選びたがる性質をもつことは自然なことです。しかし、そこに安住しきってよいということではないでしょう。どんな概念・考え方も完全ではありません。また、そもそも概念・考え方は自分が変わっていくとともに、また、環境が変わっていくとともに、変化が必至のものです。さらには、世の中にはいまだ概念化されていないことが無数あり、あなたによってとらえられることを待っているかもしれません。

入門コンセプチュアル思考 既成概念

私たちは「卵は丸い。丸いから立たない」と思っている。そして実際に立ててみようと、神経を集中して試みる。……案の定、うまく立たない。「やっぱり立たないか」とそれで安心する。

しかしコロンブスは、卵の底をテーブルにガツンとぶつけて殻を壊し、立たせてみせた。

入門コンセプチュアル思考 コロンブスの卵1

それを見て、事後に「なーんだ、そんなこと(殻をつぶしていいのなら、だれだってできたさ)」と思います。が、その最初に起こす既存の枠外からの発想と行動こそがむずかしい。

ほおっておくと、私たちはついつい既存の考え方や枠組みのなかで思考を怠けがちになります。そんななかでコンセプチュアル思考4番目の基本スキル「精錬」は、物事につねに新しい目線や切り口を与え、概念を進化・深化・創出させていく作業になります。

入門コンセプチュアル思考 コロンブスの卵2

二項対立を超え第三の答えをつくり出す

私たちは物事をとらえようとするとき、二項対立という形をよくとります。「白か、黒か」とか「善か、悪か」のように。

二項対立というアプローチ自体はけっしてわるいものではありません。二元論のように、そこで扱われる2つの要素が根源的であればあるほど、深い思索を生むものです。

しかし問題なのは、二項の比較や評価だけに目がいき、安易に二者択一に走って、結局出す答えは「妥協の折衷案」に陥ってしまうことです。そこには自分の選択肢がAかBしかなく、両方の部分的な組み合わせだけで済まそうとする態度があります。

入門コンセプチュアル思考 二項対立

そんなときに学ぶべきは、弁証法といわれる思考法です。
弁証法を簡単に説明すると──

1) ある意見・考え方[正|テーゼ]があり、
2) それに対立する意見・考え方[反|アンチテーゼ]がある。
3) そこから両者をより高次のレベルで統合し、
新しい結論[合|ジンテーゼ]を導き出すこと。

このプロセスは「止揚|アウフヘーベン」とも呼ばれます。

この弁証法における止揚というプロセスで重要なことは、「正か、反か」という二項の世界に思考を閉じてしまわず、次元を上げて第三の選択肢をつくり出すことにあります。

私たちはややもすると、物事を二項対立で単純化させ、「さあ、AかBかどっちだ」と二択議論に走りがちです。概念にせよ、製品・サービスにせよ、真にイノベーティブなものは、既存の枠のなかにある「正」と「反」の妥協的組み合わせからは生まれません。二項・二択を超え、枠の外に「合」という第三の新たな答えを求める思考のもとに生まれるものです。

入門コンセプチュアル思考 止揚 アウフヘーベン

思考ワークチャレンジ ~止揚を起こす眼

では、二項対立のなかで思考を閉じるのではなく、次元を上げて第三の答え創造に思考を開いていくワークに挑戦してみましょう。

【ワーク概要】
下のワークシートを使用。
広く仕事・事業や社会に関わる物事をながめ、何か対立する2つの概念(または要素)を取り上げます。それら2つをその対立を超えて1つのものに統合するとき、どんな新しい概念が生まれ出てくる(高度な次元で止揚される)でしょうか、独自の目線で考え、記入してください。
自分が新たに考える止揚的概念でもいいですし、世の中に起こった事例を探してもよいです。

入門コンセプチュアル思考 止揚 ワークシート


では、私の主催する「概念工作塾」ではどんな答案が出たか。受講者たちの答えの中からいくつか紹介しましょう。

入門コンセプチュアル思考 止揚ワーク1
入門コンセプチュアル思考 止揚ワーク2


製品やサービスを開発するうえで技術はとても重要です。しかし、技術のみで真に優位性のある製品・サービスを提供し続けることができるでしょうか。リバースエンジニアリングのように、先行する技術がすぐに解析され、模倣される技術もまた発達している時代なのです。技術はむしろ、ある強力な商品・事業コンセプトのもとに置かれることで輝きを放つ、と考えたほうがよいでしょう。

そんななかで私たちは、ごく一般的な物事のとらえ方、論理秩序、枠組みに依らず、つねに鋭い思考の投げかけを行うというコンセプチュアル能力が求められています。

コンセプチュアル思考における「精錬」には下表にあるとおり、そのほかにもいろいろな精錬のやり方があります。これらについては、拙著『コンセプチュアル思考』にくわしく解説をしましたので、発展的に学びたい方はそちらをご覧ください。

コンセプチュアル思考 精錬方法

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