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インターンシップに関わる現場社員に準備してもらうべきこと―学生は会社でも仕事でもなく“あなた”を見ています―

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2016年05月19日

※本コラムは株式会社リクルートキャリアが外部有識者に依頼し、執筆いただき、掲載しております。

小宮 健実

 

コラムニスト プロフィール≫

小宮 健実(こみや・たけみ)1993年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。
人事にて採用チームリーダーを務めるかたわら、社外においても採用理論・採用手法について
多くの講演を行う。さらに大学をはじめとした教育機関の講師としても活躍。
2005年首都大学東京チーフ学修カウンセラーに転身。
大学生のキャリア形成を支援する一方で、企業人事担当者向け採用戦略講座の講師を継続するなど
多方面で活躍。
2008年3月首都大学東京を退職し、同年4月「採用と育成研究社」を設立、
企業と大学双方に身を置いた経験を生かし、企業の採用活動・社員育成に関する
コンサルティングを実施。現在も多数のプロジェクトを手掛けている。
米国CCE,Inc.認定GCDF-Japanキャリアカウンセラー。

 

◆イントロダクション

皆さん、こんにちは。採用・育成コンサルタントの小宮健実です。

学生の話題にインターンシップという言葉がよく登場するようになりました。
15年卒の学生に混じり、16年卒の学生の顔もちらほら見えるようになっています。
採用活動のスケジュールの変更も影響しているに違いありません。

それらの大きな変更に対して、企業の施策については正直、あまり魅力的な動きがあるようには
感じられません。インターンシップについても、その本質的な目的や効果の設計よりも、
「やるかやらないか」という極めて外郭的な議論から抜けられていないように思います。

そのような状況を憂いつつも、もしもインターンシップを実施するならば、その目的如何によらず、
はっきりといえることもあると思っています。

そのうちのひとつが、インターンシップに関わる現場社員が、
どのような準備をしておくべきか、ということについてです。

今回は、インターンシップに関わる現場社員を題材に、話を進めてきたいと思います。

 

◆目的がさまざまでも変わらない本質

インターンシップというと、普段社員がしている仕事を学生にも体験してもらうという
従来の意味合いは薄れつつあり、最近ではほとんどの場合、インターンシップ用の特別コンテンツ
(仕事ではないことが多い)を用意することが多いと思います。

ご存知の通りその内容はさまざまで、ほぼ説明会に等しかったり、仕事場や工場を見学させたり
、課題を与えて別室に集めて提案を求めるものなど、いろいろ趣向が凝らされています。

確かに、それらのコンテンツの面白さイコールその会社の魅力になる可能性も高いわけですが、
数は少なくても学生一人ひとりと強い接点を持つことができるインターンシップの可能性を考えた際、
「そこで何ができるのか」「何が一番よいことであるのか」
を、今一度、客観的に考えてみる必要もあるように思います。

学生についても、インターンシップで何を得たいのか、その答えを明確に設定することは
難しいように思います。インターンシップは就職活動よりも早く行われることが多く、
多くの参加者は就活生以上に、
自身のキャリアに対して意識が希薄な状態で参加することになるからです。

インターンシップで得たいものは、仕事の理解でしょうか。社会人との交流でしょうか。
学校では得られない体験といういい方をすれば、すべてがそうだと
自分を納得させることもできるかもしれません。

企業と学生、両者はお互い、何を目的にその場に立つのでしょうか。

そこでまさしくリアルな接点となる現場の社員は、学生に何を媒介すればよいのでしょうか。
それがはっきりしなければ、インターンシップの成果を狙い通りに挙げることは
難しいように思えてなりません。

ただ、どういう成果を手にしたい場合でも、やらなくてはいけないことが
はっきりとひとつあります。

なぜはっきりといえることがあるかというと、どのようなインターンシップを行ったとしても、
「社員と学生の接触」がその構図の核であり、そこで「何を与え、何を受け取るか」
という意味において、できることはただひとつであり、
そのためにできることもほぼ決まっているからです。

インターンシップでやらなくてはいけないこと。
その答えは、社員の「働きざま」を感じてもらうことです。
「働きざま」にリアルに触れ、それに魅力を感じてもらうことが、
ひいてはその会社全体の魅力にもなり、学生にとっては自己のキャリア形成のヒントにもなるのです。

しかしそこで、また新たな課題を感じることになります。
そもそも自社の社員は、特別な日でもない日常において、そのように魅力的に働いているだろうか。
傍から見て平凡な日常でも、それは仕方のないことなのであって、いつもいつも学生から見て
魅力的な仕事をしているわけではないだろう、と。

ではどうすればよいでしょうか。

もちろん、特別なおめかしをしたり、何かのフィクションを創作したりすることが
正しいとは思いません。

次の章で、その答えについて述べていきたいと思います。

 

◆最大の武器は自分の中に

自分の働きざまを他者に伝えるにはどうしたらよいでしょうか?
それには、自分の「ハイポイント・エピソード」を語ることが効果的です。

「ハイポイント・エピソード」とは、仕事上の最高の体験、もっともいきいきしたとき、
もっとも誇りに感じたときのことです。

我々は、自分の働きざまについて、「ハイポイント・エピソード」を伝える以上のことはできません。

それ以上のことを意図的にしても、リアルではない情報は、あっという間に色褪せて
効果を失ってしまうからです。逆にいうと、リアルな情報のうち、最大の武器が
「ハイポイント・エピソード」です。

「ハイポイント・エピソード」を効果的に伝えるには、自分のことを「よく思い出すこと」です。
思い出し方のコツについて、説明します。

自分の「ハイポイント・エピソード」を他者に伝えられるようになるには、
それがひとつのストーリーとして、きちんと整理されていなくてはいけません。

例えば、それはいつ、どのような状況で、どのような人たちと協力しながら、
どのように取り組んでいったのか、といったようにです。
そして、聴いている人が、自分の仕事上もっとも生き生きとした場面をありありと想像できるように、
とことん具体的に話すことが必要です。

これらを、何かの機会を掴んで社員が学生に熱く語れるように、
事前の準備を施しておくことが大切です。
最大の成果が生まれるように、人事がきちんと仕組んでおくことが大切なのです。

そしてそれには、以下のような質問に答える方式で、
社員に「ハイポイント・エピソード」を考えてもらっておくとよいでしょう。

 

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このようなことを読んで、もしかしたら、さらに現場の社員に対して不安が拡大した採用担当者の方も
いるかもしれません。学生を動機づけられる、魅力的な「ハイポイント・エピソード」
を語れる社員の人選もまた、採用担当者の重要な仕事だといえます。
社内にある魅力的な仕事のエピソード、その仕事に関わって輝いた人を探してください。

 

さて、今回はインターンシップに関わる現場社員に準備させておくことについて書いてきました。

インターンシップの目的がどのようであろうとも、もしくはインターンシップに対する
学生の期待がどのようなものであっても、「働きざま」を伝えることは本質であり、
一人ひとりができる唯一にして最大のアクションであることに疑いの余地はありません。
人の魅力が伝わることが「動機づけ」に重要であることもまた、疑いの余地はないと思います。

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