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採用力を弱めてしまう採用担当者の特徴―採用活動の教科書・応用編―

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2015年12月03日

 

※本コラムは株式会社リクルートキャリアが外部有識者に依頼・執筆いただき、掲載しております。

曽和 利光

≪コラムニスト プロフィール≫
曽和  利光 (そわ・としみつ)
1995年(株)リクルートに新卒入社、人事部配属。
以降、一貫して人事関連業務に従事。採用・教育・組織開発などの人事実務や、
クライアント企業への組織人事コンサルティングを担当。リクルート退社後、
インターネット生保、不動産デベロッパーの2社の人事部門責任者を経て、
2011年10月、(株)人材研究所を設立。
現在は、人事や採用に関するコンサルティングとアウトソーシングの事業を展開中。

 

◆イントロダクション

 

こんにちは。組織人事コンサルタントの曽和利光です。
今回は、私が人事実務家から転じて
人事に関するサービスを提供する立場になって感じた、
知らず知らずのうちに 「採用力を弱めてしまう」
採用担当者の特徴について述べたいと思います。
もちろん、日々皆さんは責任感を持って採用の仕事をされていると思います。
しかし残念ながら、採用担当者が会社の成長の
「ストッパー」 になってしまっている例があると思っています
(なお、私自身も実務家でしたので、以下はすべて自戒を込めて申し上げるものです。
申し上げるすべてを私自身が完璧にできていたとは到底いえません……)。

まず、採用の仕事というものは出来不出来が見えにくいために、
あえて言葉を選ばずにいえば成果を 「粉飾」 できてしまいます。
それはこの仕事に、以下のような特徴があるからです。

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もちろん悪意があるわけではないと思いますが、採用担当者によっては、
「採用最適」 (自社の採用にとって最も都合のよいやり方) ではなく、
「採用担当者最適」 (採用担当者である自分にとって最も都合のよい、楽なやり方)
で採用活動を行ってしまうことがあるのです。
こうした採用担当者が、 「採用力を下げる採用担当者」 です。

 

◆採用力を下げる採用担当者の見分け方

 

最も分かりやすい見分け方は、
「面接数」 で面接を極力避けようとするかどうかです。
極論すれば、そうした方は 「ストッパー」 採用担当者である
可能性が高いと思います。

また、書類選考や適性検査の合格基準などを厳しくしすぎている人も要注意です。
素晴らしい経歴の持ち主のみを面接工程に上げても、
そうした学生は引く手あまたであり採用競合が多く、
なかなか採れません。辞退率も高いことでしょう。このようなことをしていると、結局、
「経歴は立派でも、実際の中身はそれほどでもない」
応募者を採用するようなことになりがちです。そうではなく本来は、
他社が見逃しそうな 「原石」 を探し当てることこそが、
採用担当者の介在価値なのではないでしょうか。
そのためには、一見合格基準には満たなさそうな学生であっても、
万が一の可能性があるならばできるだけ 「会う」 ことが重要です。
いわば、「採用力は面接数」 「裾野広ければ山高い」 が、
採用の鉄則なのです。

さらに、「完璧を装う採用担当者」 も
採用力を弱めてしまうタイプの可能性があります。
採用は、 「戦略」 (ターゲティングやコンセプト等) や
「戦術」 (予算配分やスケジューリングや実施施策等)
で勝ち負けが決まるのではありません。
それよりも、 「戦闘」 (個々の説明会や面接やフォローといった
実際の応募者に対峙して行う行動のレベル) で決まります。
つまり、立派な 「戦略」 「戦術」 があったとしても、
日々の活動で細かい部分を工夫・鍛錬をして、きちんと実行されていなければ、
よい採用結果にはならないのです。
「完璧を装う採用担当者」 は、経営者や人事部長がどんなことを聞いても
「手を打っています」 「それはやっています」 といいます。
上に述べたように、本当は 「やったか(やろうとしたか)」 ではなく
「できたか」 にしか価値は無いにもかかわらず、です。
ただ、「できていない」 ことはなかなか証明しづらいものです。
担当者が 「やっています」 というならそれ以上は突っ込みにくく、
本来改善すべきところがされないままに残ってしまいがちです。
その結果、採用結果が思わしくない理由を
「自社のポテンシャル」 「自社のブランド力」 といった 「不可抗力」 や、
採用メディアや人材ビジネス会社といった、「外」 の問題にされてしまうのです。
このように犯人捜しやスケープゴートづくりをしても、
当然、採用力は向上しません。

 

◆「口説けない採用担当者」の心理

 

一見するとよい採用担当に見えて、
実はあまりよろしくないのが 「口説かない採用担当者」 です。
いうまでもなく、人を採用するというのは大変おそろしい仕事で、
応募者の人生を狂わせてしまうこともあります 
(早期退職やメンタルヘルス問題等)。
ですから、感受性や敏感性が強く優しい人 (人事には多いと思います) は、
その責任を負いたくないと思ってしまいがちです。
そして、本来ならば口説かないといけないタイミングで、
「あとはあなた自身が決める」 と選択の責任を応募者に預け、
あまり口説こうとしない傾向にあります。
加えて、RJP (Realistic Job Preview = 入社前に実態を伝えて
応募者に自己判断させ、ミスマッチを防ぐという考え方) の大義名分の下、
「将来目指していること」 を熱く語らない傾向もあるかと思います。
なるべく責任を負いたくないと思うと、
夢や理想を語ることが憚られてしまうわけです。
しかし、成長途上にある会社には特に現実的な資産より夢や理想が豊富にあるわけで、
それらを語らなければ採用上の武器がなくなってしまいます。
採用担当者が応募者に与える影響は、どんなことをしていても強いものです。
口説かず、夢を語らずに責任を回避したつもりでも、相手に影響を与えざるを得ません。
「○○さんがいたから、この会社に入りました」
 と言う学生は大変多いです。
ですから、責任回避などはできないのです。
採用担当になった以上、引き受けねばならないことなのです。

以上、採用力を弱めてしまう採用担当者の特徴をいくつか挙げてみました。
この3つの特徴に共通するのは、
率直にいってしまえば 「勇気が無い」 ということです。
採用という責任重大な仕事を目の前にひるんでしまい、
そこから逃げようとしているわけです。
しかし実際は、そのように防御して
やり過ごそうとしているだけではいけません。
では、どうすれば勇気が湧いて来るのでしょうか。
一つは、自分の会社や事業を愛することです。
採用担当者自身が自社を信じていない、愛していないとすれば、
そこへの入社をどうして積極的に勧めることができるでしょうか。
「知るは愛に通ずる」 という通り、自社を愛するためには、
自社についてとことん知ることが重要です。
現場の社員にたくさん会って、いろいろな話を聞き、
彼らと夢や理想を語り合うことで、どんどん愛情が芽生えてくるはずです。
もう一つは、理論(※) を学ぶことです。
人事や採用は心理学や組織論等の行動科学の応用分野の一つで、
そこには様々な知見があるのですが、
残念ながら日本では人事の世界に十分に展開されているようには見えません。
さらに、人事は法務や経理などの他の事務系専門職と異なり、
誰でも評論家になれてしまう可能性がある領域です。
ですから、経営者や現場で強い力を持つ人々が
どんどん介入してしまいます。
もちろん彼らの意見は尊重すべきなのですが、
もしも彼らが誤っている時にはきちんと対抗できるか、
いさめることができるかが、採用担当者の試金石だと思います。
その際、経験豊富な経営者らにモノを申す勇気を得るためにも、
理論という 「武器」 を持ち、自分の考えに自信を持つ必要があるのではないでしょうか。
今回は色々と厳しいことを述べてしまいましたが、
冒頭にも述べましたように、私自身も完璧ではありませんでしたし、
現在のような採用難の時代に
日々努力されている採用担当者の皆さんを揶揄するものでは、
決してございません。
むしろ、その大変さを身を持って分かっているつもりでいるからこそのエールと
思っていただけましたら幸いです。
本稿をお読みいただいた採用担当者の皆さんが、
勇気を持って 「できる」 「口説ける」 「採用力を上げる」
採用担当者になっていただければ、とてもうれしいです。

 

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