あなたの会社でも、従業員を新規に採用するタイミングで、“すでに通知した内定を取り消した”、“試用期中の従業員を本採用しなかった”ということがありませんか? 「内定の取り消し」や「試用期間中の従業員の本採用拒否」は、やり方を間違えると労使紛争になりやすく、企業にダメージが生じる可能性があります。今回は、そのようなトラブルから企業を守るために“知っておくべきこと”をお話しさせていただきたいと思います。
「内定取り消し」や「本採用の拒否」は“解雇”と解釈? 従業員の「採用」前後の対応が労使トラブルの原因に

内定通知後における「企業」と「内定者」の関係とは

“内定”そのものについては企業によって定義がまちまちですが、法律的には内定を出すと、「始期付解約権留保付労働契約」が成立したものと認識される場合があります。

この「始期付解約権留保」というのは、“入社日は決まっているものの、もし入社日までに内定を取り消さなければならないような事が発生した場合には、その労働契約を解約します=内定を取り消します”というものです。たとえば、学校を卒業予定の学生に内定を出したものの、学生の成績不良で学校を卒業できなかった場合に、内定を取り消すようなケースです。

ここで気をつけなければならないのは、内定を取り消す行為が「解雇」と同じレベルに解釈される事があるという事です。「まだ実際に働いていないのに解雇?」と思われるかもしれませんが、“企業側と内定者との間で、内定者が働く事について明確に合意していた”と判断されると、内定の段階で実質的に労働契約が成立していたことになり、「内定取消し→解雇」と見なされるのです。したがって、内定の取消しは、その理由に客観的な合理性があり、社会的な相当性がある場合に限られます。

内定取消しの理由の例として「業績の悪化」が挙げられますが、「内定取消し=解雇」の状態である場合、「整理解雇」として捉えられるため、“その要件を満たしているか”が判断される可能性が出てきます。

整理解雇の要件とは、「(1)人員整理の必要性があったか」、「(2)解雇(内定取消し)を避けるための努力をしたか」、「(3)人員整理をする人選が妥当か」、「(4)整理解雇の手続きに相当性があるか」、というものです。したがって、企業側の事情が変わったからといって、安易な内定取消しを行えば労使トラブルの原因となり、企業にとってリスクの高いものとなります。どうしても内定の取消しを行う必要があるときは、内定者に対して十分に説明を行なって事情を理解してもらい、相応の補償を行うことがトラブルを避けるための方策の一つとなるでしょう。

さて、次に「従業員を採用したものの、試用期間で労働契約を打ち切り、本採用を拒否する場合」のリスクについてお話ししましょう。

試用期間で労働契約を打ち切るのも「解雇」?

従業員を採用するとき、面接などだけでは従業員の適性を判断することが難しいため、たとえば正社員登用を前提として、一定の試用期間を置く場合があります。これを法律的には「解約権留保付雇用契約」と呼びます。

この「解約権留保」というのは、たとえば、試用期間中に従業員の能力や勤務態度などを問題視して、企業側が正社員登用を拒否し、試用期間満了をもって労働契約を打ち切るケースで、“正社員登用を解約する権利を企業側が持っておく”というイメージです。

ただ、試用期間中の従業員が「業務を遂行する能力が低い」、「勤務態度が悪い」というだけで正社員登用を拒否することは難しいと言えます。試用期間の性格上、その期間は“労使のお試し期間”という意味合いがあるので、正社員登用の拒否が「普通解雇」と同じレベルで判断される可能性は低いです。ですが、試用期間中に「従業員に対しての教育をきちんと行なったか」、「配置転換の可能性を探ったのか」など、企業が正社員登用を拒否するまでの過程が重要視されます。

したがって、従業員に対して教育を怠り、一方的に正社員登用を拒否すると、労使トラブルに発展し、「不当解雇」として裁判となる可能性が出てきます。企業側のリスクを避けるための方策としては、労使で話し合った上で、“どの点が問題になっているか”をお互いに確認の上、必要に応じて試用期間の延長を検討するなど、企業が雇用継続のための努力を行なった実績を積むことが重要となります。せっかく採用した従業員ですから、「大切に育てる意識を、どこまで行動として具体化できるか」がポイントになりそうです。

いかがだったでしょうか。

従業員の採用と育成について、労使トラブルから企業を守るためにお悩みのことがありましたら、お近くの社会保険労務士にご相談されてみることをお勧めします。
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