日本女子大学は1901年に日本初の女子大学校として誕生。初年度の入学者は222名。この開校により、日本において女性が高等教育を受ける道が開かれた。現在、目白キャンパスと西生田キャンパスには約6,000名の学生が在籍。女性が大学に進学することが珍しかった開学当時からは考えられないほど多くの学生たちが勉学に励んでいる。建学から120年。日本女子大学が取り組む女子教育とキャリア支援にどのような変化があったのだろうか。目白キャンパスを訪ね、学生生活部キャリア支援課 課長 増田一美氏にお話を伺った。

ゲスト

  • 増田 一美 氏

    増田 一美 氏

    日本女子大学
    学生生活部キャリア支援課 課長

    日本女子大学家政学部家政理学科一部(物理化学専攻)化学(理学部物質生物科学科の前身)卒業。企業就職の後、学校法人日本女子大学に中途入職。入学部入学課(当時)、管理部システム企画課を経て現職。
第6回 日本女子大学:女性を取り巻く社会環境を理解するために1年次からキャリア形成科目を開講

日本初の女子高等教育機関として誕生した日本女子大学

日本女子大学の開校は1901年(明治34年)に遡ります。ちなみに、開校の経緯は2015年から2016年にかけて放送されたNHK連続テレビ小説『あさが来た』でも描かれました。

当時の常識は「女子に教育は不要」というもの。そのような風潮の中、日本女子大学は日本初の女子高等教育機関として誕生し、勉学を望む意欲的な女子たちに歓迎されました。

開学後は多くの人材が本学で学び、社会に巣立っていきました。例えば、朝ドラで大島優子さんが演じた平塚らいてうもその一人。女性解放活動家として広く知られています。

開学から現在に至るまで、学生寮を持ち続けていることも特徴の一つです。日本初の女子大学として開学したため、本学で学ぶために上京してくる女子も数多く存在しました。ご両親が娘を安心して進学させられるよう、また、女子たち自身が安心して勉学に集中できるよう、学び舎としての環境作りにも継続して取り組んできた歴史があります。

ただ、開学から120年が経ち、女性を取り巻く環境は大きく変化しつつあります。今では大学に進学する女子は珍しくなくなりました。それに伴って、女子大に進む女子自身にも変化が起きています。例えば、開学当初に多く見られた、カリスマ的なリーダーシップを発揮して周囲を引っ張っていこうとする「積極タイプ」の学生だけでなく、女子だけの環境でしっかりゆっくり勉強したいという「ゆるやかタイプ」の学生も増加傾向にあります。

いずれにしても、本学の学生は芯が強いことが特徴です。何でもかんでも前に出るということではなく、何かあったとき、求められたときには意志を持って前に出ることができます。与えられた場所で周囲が期待する以上の実力を出せるのが日本女子大学生の特徴と言えるでしょう。
第6回 日本女子大学:女性を取り巻く社会環境を理解するために1年次からキャリア形成科目を開講

高まる女子学生の就労意識

私たちは長年に渡り、女子学生たちの就職・キャリア意識を調査し、データを蓄積してきました。データを分析すると時代ごとに様々な変化を感じることができます。特に近年は、女子の就職意識が高まってきています。
 
例として、「どの程度の期間働き続けたいか?」という質問に対する回答データをご紹介します。1990年代は「4~5年」「6年~9年」という短期がかなり多かったのですが、2000年代に入ると回答の傾向が大きく変わってきました。そして、2008年のリーマンショック以降は「10年以上」が約40%、「定年まで」が約35%となり、合わせて4分の3もの学生が長く働き続けることを望んでいるという結果になったのです。

以前までは「寿退社」という言葉もあるように、結婚を機に退職して専業主婦になる女性も多かったでしょう。ただ、現在ではそのような人生を想定している女子は多数派ではありません。キャリア支援課としても、このような女子の就労意識の高まりに応えるべく様々な施策に取り組んでいます。

1年次からキャリア形成科目を履修

本学では1年次からキャリア形成科目を開講しています。早期に始める理由は、女性のキャリア形成が男性以上に複雑で難しいためです。

近年、「女性活躍推進」という言葉の下、女性が果たすべき多くの役割が語られています。生産年齢人口が減少しているので女性の就労が求められる。少子化が進行しているので出産や子育てが期待されている。高齢化社会の終末医療では在宅介護が求められる。もちろん、これらの役割は女性だけが背負うものではありません。ただ、女性活躍の期待があることは事実だと思います。

しかし、1人の人間がこれらの期待に全て応えることは不可能でしょう。学生は自分たちを取り巻く社会環境を理解し、自らの生き方・働き方を考えなければなりません。そのために日本女子大学ではキャリア形成科目を1年次から提供しています。

1年次の科目を紹介すると、「現代女性論」、「現代男性論」、「日本の女性史」、「世界の女性史」、「女性と身体」、そしてOGや外部NPO法人の講師をゲストスピーカに招く、「女性と職業」、「ライフプランとキャリアデザイン」などがあり、多種多様な講義を用意しています。これらの科目を通じて、3年次から就職活動に取り組む際の土台を築いてもらいたいと考えております。
第6回 日本女子大学:女性を取り巻く社会環境を理解するために1年次からキャリア形成科目を開講

就職活動の早期化に合わせて就職支援プログラムの開催時期を変更

日本女子大学では第1回就職ガイダンスを6月に実施していました。ただ、昨年度と今年度では開催時期を変更しました。

昨年度までの第1回就職ガイダンスは、就活スタートを意識し、女性の働き方・キャリアデザインを考えるきっかけづくりとして、女性外部講師の講演に加え本学学生の就職動向の説明などをキャリア支援課から説明します。その後、夏休み明けの9月に開催される第2回就職ガイダンスまでを学生自身が就職活動について考える期間としています。2回目のガイダンスでは、卒業後の進路に関する希望や、強みなどを記載してもらう進路登録カードを書いてもらい、その情報に基づいて学生への個別指導に当たっていました。

しかし、今年度は第1回就職ガイダンスを5月に早めるとともに、進路登録カードの配付回収も行いました。理由は、サマーインターンシップの相談へも対応するためです。近年はサマーインターンシップが実質的な就職活動のスタートになっています。学生を指導するために、より早い段階から進路登録カードを活用する必要性が高まった為です。

本学では、その他にも3年次の春から翌年2月にかけて様々な就職支援プログラムを実施していますが、これらの開催時期も今年度から半月程度ずつ早めています。
第6回 日本女子大学:女性を取り巻く社会環境を理解するために1年次からキャリア形成科目を開講

学生向けの就活サービスが多数登場。大学を通さず活動する学生が増加

私は2013年からキャリア支援課の仕事をしていますが、ここ数年で学生の動向を把握しづらくなったと感じています。以前は、大学に掲示されている求人票と就活サイトによって応募する企業を探す学生が大半でした。OGについても大学やサークル等直接のつながりを介してしか見つけられなかったのです。そのため、キャリア支援課へ相談に来る学生が大半でした。

ところが、ここ数年で学生向けの就活サービスが多数登場しました。求人サイトだけでも業界・職種別のものがいくつも存在し、逆求人型サイト、インターンシップ情報サイト、OB・OG紹介、就活カフェなど、サービス内容は多種多様です。それらの複数のサービスを活用して、1人で活動する学生が増えているのです。

こうしたサービスを日本女子大学は否定しません。そもそも本学の建学の精神は「自学自動」です。自ら進んで学び行動し、一人の人間として社会へ関わっていく力を育むのが自学自動です。大学のキャリア支援のみに頼らず、自ら学び動く学生は建学の精神を体現しているとも言えます。

しかし、自学自動した上で迷うこともあるでしょう。そんな時は、キャリア支援課を訪ねてほしいですね。例えば、マッチングサービスの中には、学生の素直さにつけ込む例も見受けられます。最近は「相手に悪いから」と断り切れない学生が増えているようですが、大学はそのようなことから学生を守る義務があります。
第6回 日本女子大学:女性を取り巻く社会環境を理解するために1年次からキャリア形成科目を開講

採用実績がなくとも、採用したいという企業を歓迎

昨年3月に実施した合同企業説明会は2日間で20社に参加していただき、延べ300名の学生が参加しました。しかし、近年は就職活動の早期化に伴い、3月開催の合同企業説明会への参加学生数が減少しています。

そのため、昨年からは時期を早めて10月・11月、1月・2月に「業界を知るための企業セミナー」を開催しています。マスメディア、食品などの各業界から5社程度の協力をいただいて実施しています。各業界の企業を一度に知ることができるため、学生から好評の企画です。様々な業界にわたり参加社数は約100社。

合同企業説明会の30社とあわせて130社に学内イベントに参加いただいています。参加企業のメインは日本女子大学卒業生の就職実績がある企業になります。しかし、これまで日本女子大学からの採用実績がある企業に参加を限定しているわけではありません。キャリア支援課は、本学の学生を採用したいという企業からのご連絡をお待ちしています。
第6回 日本女子大学:女性を取り巻く社会環境を理解するために1年次からキャリア形成科目を開講
求人票を送っていただければ学生に公開しますし、学科指定があれば学部学科の就職担当に紹介します。キャリア支援課に直接訪ねてきていただけるならば、是非お話を伺いたいと思います。その際は、企業の魅力や働き方を私たちが学生に説明できるような資料やデータをお持ちいただけると幸いです。私ども職員も、多くのことを勉強させていただいており、ありがたく思っております。

大学規模が小さいため、進路未決定者には直接電話をかけて相談に乗るなど、個別フォローにも取り組んでいます。学生個々についても把握しており、企業採用担当者のみなさまにとっても、抽象的なお話ではなく、より具体的なお話ができるはずです。みなさまからのご連絡を心よりお待ちしております。
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