近年、メンタルヘルス不調による従業員の勤怠不良などの問題がとても多くなっています。採用面接では、応募者の能力はもちろん、体の健康状態は欠かさずチェックするのですが、心の健康状態とも言える、ストレス耐性がどの程度あるか、といったことは見落とされがちです。そこで今回は、採用面接で「ストレス耐性」をチェックできる方法をお伝えします。
採用面接時に「ストレス耐性」を見抜くポイント

「ストレス耐性」を見極めるのに先入観は不要

ストレス耐性のある人とは、「精神的にタフで打たれ強く、悩みを解決する方法を持っている人」のことです。職場のメンタル不調者を減らすためには、悪質なストレス要因を取り除くことと同時に、採用において、こうしたストレス耐性の高い社員を雇い入れる必要があります。

厚生労働省の「平成29年度 労働安全衛生調査」によると、メンタルヘルス不調により連続1ヵ月以上休業した労働者の割合は、産業別では、「情報通信業」と「金融業、保険業」が1.2%と最も高くなっていますが、このような過重労働で、かつストレス要因の高い職種は、特にストレス耐性を重点的に見るべきでしょう。

採用時、面接官のミスでよくあるのが、「体育会系だから精神・体力ともに鍛えられただろう」という先入観です。

確かに、厳しい部活であれば、ある程度当てはまる可能性はありますが、それはあくまでも憶測に過ぎません。先入観を持って判定することは、避けたほうが無難でしょう。

「ストレス耐性」を見抜くための3つの視点

ではここから、「面接でストレスに弱い人を見抜く方法」を大きく3つに分けてご紹介したいと思います。

・見た目で見抜く
まず体型を見ます。お腹周りは太めでしょうか?メタボリックシンドロームは心筋梗塞などの発症リスクが約30倍、糖尿病にかかる確率も10倍ほど高くなります。また、自制心がないと捉えることもできます。

単に恥ずかしがり屋なだけかも知れませんが、目を合わせない人は、少なくともコミュニケーション能力が低いと言えます。

落ち着きのないソワソワした態度にも注意が必要です。精神的に弱くなっている時は、誰しも人の目を気にするものです。ストレスに弱いがゆえに、ソワソワしているのかも知れません。

また、あまりに早口でまくしたてるような話し方をする人、必要以上にオーバーリアクションをする人も注意が必要でしょう。

その他、チェックできる箇所と言えば、極端に額に汗をかいている場合は、プレッシャーに弱く、プレゼンなどの発表が苦手な場合があります。

もちろん、一概に上記のような傾向があるからといって、ストレス耐性が弱いと断定することはできませんが、判断基準の一つとして知っておいていただきたいと思います。

・質問から見抜く
ストレス耐性を見極めるには、「その人がストレスに対処できる考え方の持ち主であるか」をチェックすることが重要です。ですから、“肯定的な考え方”を持っているか確認します。「過去に引きずられて気持ちを切り替えられないことが多くないですか?」、「他人の目を気にし過ぎてないですか?」などと間接的に訊いてみましょう。

また、普段、運動する習慣やストレスを発散する方法を持っているかどうか訊くことも有効です。その答えとしては、できれば複数の方法を持っていたほうが理想的です。合わせて、身近に何かあったときに相談できる相手がいるかどうかも確認していただきたいと思います。

さらに、熱中できる趣味を持っているか訊くのもよいでしょう。家と職場の往復で趣味がない場合は、ストレスをため込みやすい環境であると言えます。

その他、睡眠時間を訊いて分かることもあります。寝つきが悪いということは、ストレスが表面に現れている状態と言えます。精神的に悩みがあった場合、最初の症状は睡眠障害から始まります。とは言え、いきなり、「何時間寝ていますか?」と訊くのは不自然なので、遠回しに質問してみてください。

最後に、これは非常にデリケートな質問ですが、常時飲んでいる薬を確認することも、ストレス耐性を見抜くのに有効です。プライバシーの侵害だと感じる応募者もいるので注意が必要ですが、この質問によって、本人に持病があることが分かることもあります。

・適性検査で見抜く
面接の補助として精神状態(性格試験)を見ることができる試験の導入は有効です。適性検査の結果を見ながら質問することで、よりストレス耐性を見抜きやすくなります。採用時に使うのであれば、エゴグラムがお勧めです。

当然、このような適性検査のみに頼ることは危険ですが、適性検査と面接を併用することでより精度が上がります。

職場の環境づくりを忘れずに

ここまで、ストレス耐性を見抜くポイントについてお伝えしてきましたが、たとえ採用の時点で問題がなくても、働く職場環境が悪ければ、うまく適応できず、新たに病気にかかる人材も増えていきます。

採用時に行う適性検査は、あくまで本人の内面にフォーカスしたものですので、ストレスを感じやすい、責任感が強いなどの傾向は把握できますが、入社後の環境によって生じる変化までは予測できません。

実際にメンタル不調は、本人の問題ではなく、労働環境や仕事内容、ストレッサーの存在など、本質的な問題が隠れているケースも多くあります。ですから配属前に、配属先の環境整備をしっかりと行っていただきたいと思います。

仕事は「何をするか」より「誰とするか」です。人はどんなに大変な仕事でも、尊敬と信頼の念を持てる人たちと一緒に働いていれば、自然とモチベーションは上がるものです。

ぜひ、誰もが働きやすく、人が輝く職場づくりに取り組んだ上で、採用活動に注力していただきたいと思います。


人を育てる人、を育てる。
採用定着コンサルティングOFFICE「サン&ムーン」
代表 社会保険労務士 田中 亜矢子

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