3月20日、日経新聞の広告を見てすぐに『WEDGE』の最新号を買った。巻頭特集は「就活が日本をダメにする――不満続出するリクルートのビジネスモデル」。興味深く拝読した。リクルートのビジネスモデルに批判的な内容だった。
各方面に詳しく取材してあり、この特集記事をきっかけに就職ナビについて論争が起きそうな気がする。
就職ナビは本当に悪者なのか? ―― 『WEDGE』4月号を読んで考えた

 そこで、私の就職ナビに関する意見を述べたいと思う。私は、就職ナビは情報収集のひとつの手段に過ぎないと思う。それ以上でも、それ以下でもない。学生は就職ナビの使い方を間違えなければいいのだ。
 就職ナビでは、企業についてわかりやすく説明している。また、就職ナビが開催する合同企業説明会での説明もとてもわかりやすい。就職ナビのおかげで、短時間でおおまかに企業を理解することができる。

 合同説明会の取材に行くと、私も企業の説明を聴くことがあるが結構おもしろい。考えてみれば当たり前だ。企業は少しでも優秀な学生を採用しようと必死に努力している。そこで、知恵を絞って学生が興味を持つような記事を作ったり、説明会を行ったりしている。つまらないわけがない。
 以前、大手企業数社から内定を得た学生を取材した時、その学生は「就職ナビを使うと企業研究が簡単にできてよかった」と言っていた。有価証券報告書やIR資料を読む方が企業を深く理解できるが、手間と時間がかかる。そもそもほとんどの学生は有価証券報告書の読み方を知らないだろう。
 まずは、就職ナビを見て概要を把握し、それからさらに他の資料を読んだり、OB・OG訪問をしたりすれば、企業研究がスムーズに進むのではないか。

 もちろん、就職ナビには企業にとって都合の悪い情報はほとんど掲載されていない。それは、就職ナビのビジネスモデルを考えれば当然だ。顧客である企業の悪い情報をメディア側の就職ナビが載せるわけがない。
 こんなことは20歳を超えた大学生ならば気付くべきだろう。もし、気付かないとしても大学のキャリアセンターの職員が「就職ナビだけでは不十分だ」と学生にアドバイスすればいいだけのことだ。企業のマイナス情報が掲載されていないからといって、就職ナビを責めるのはおかしいと思う。

 就職ナビのせいでエントリーが増えすぎて、学生と企業の双方にとって不幸な状況となっているとの指摘がある。確かに学生と企業の人事部が労力を無駄に使っているケースは多い。
 しかし、学生が就活の状況をきちんと把握すれば、不毛な事態に陥らなくてすむのではないか。就職ナビはたくさんエントリーさせようとする。しかし、現実を知れば、就職において「数打ちゃ当たる」ことはあり得ないことがわかるはずだ。
 大学、学部、語学力などで入れる企業が決まってしまうのが現実だ。例えば、偏差値40の大学から大手総合商社への入社はほとんどあり得ない。実力のない学生が大手有名企業100社以上にエントリーしても内定を取れないのが現実だ。

 就職ナビのおかげで、企業が全ての学生に門戸を開けているように見えるが、実際は違う。こんなことは先輩学生を見ればすぐにわかるはずだ。現実をわからない学生には、キャリアセンターが「この大学からその企業は無理だ」と教えてあげればいい。
現実がわかれば、就職ナビが大量エントリーを煽っても、学生はそれに乗らないだろう。大量エントリー・大量不採用の責任は就職ナビだけにあるのではなく、何も考えずに大量エントリーする学生と、学生を指導できないキャリアセンターにもあるのではないか。


東洋経済HRオンライン編集長 田宮寛之

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