インターンシップとは、在学中に自らの専攻、将来のキャリア・プランに関連して、企業や公共団体等で一定期間、就業体験を積む実習制度のこと。日本では学生のキャリア支援の側面に重点を置かれた議論が多いが、欧米では古くから就職・転職のミスマッチをなくすための制度としても普及している。
復活する1dayインターンシップ

 日本では、かねてより医師の養成のほか、看護実習や教育実習、技術系での工場実習などの実績があったが、政府は「教育改革プログラム」(平成9年1月24日文部省)、「経済構造の変革と創造のための行動計画」(平成9年5月16日閣議決定)において、インターンシップを総合的に推進することとし、文系をも含めたインターンシップが徐々に普及することとなった。

 インターンシップには、大学、学生、企業それぞれにとって、次のような意義があるとされている。

■大学および学生の意義、
・アカデミックな教育研究と社会での実地の体験を結び付けることが可能となり、大学等における教育内容・方法の改善・充実につながる。また、学生の新たな学習意欲を喚起する契機となることも期待できる。
・学生が自己の職業適性や将来設計について考える機会となり、主体的な職業選択や高い職業意識の育成が図られる。また、これにより、就職後の職場への適応力や定着率の向上にもつながる。
・企業等の現場において就業体験を積み、専門分野における高度な知識・技術に触れながら実務能力を高めることは、自主的に考え行動できる人材の育成にもつながる。また、企業等の現場において独創的な技術やノウハウ等がもたらすダイナミズムを目の当たりにすることにより、新規産業の担い手となる独創性と未知の分野に挑戦する意欲を持った人材の育成にも資する。

■企業の意義
・インターンシップによって学生が得る成果は、就職後の企業等において実践的な能力として発揮されるものであり、インターンシップの普及は実社会への適応能力のより高い実践的な人材の育成につながる。
・インターンシップの実施を通じて大学等と連携を図ることにより、大学等に新たな産業分野の動向を踏まえた産業界等のニーズを伝えることができ、大学等の教育にこれを反映させていくことにつながる。
・大学等と企業等の接点が増えることにより、相互の情報の発進・受信の促進につながり、企業等の実態について学生の理解を促す一つの契機になる。これについては、特に中小企業やベンチャー企業等にとって意義が大きいものと思われる。

 ただ、大学・学生の意義に比べて、受け入れる側の企業はこれまでその意義をあまり実感できることは少なかった。インターンシップ内容の企画、関係部門との社内調整、学生募集、インターンシップの実施・運営、大学への報告などの労力やコストを考えると、相応の負担となる。

 だが、年々インターンシップを実施する企業は増え続けている。その背景は何か。

 新卒採用活動として有効であると判断したからにほかならない。インターンシップからの選考をストレートに謳う企業こそまだまだ少数ではあるが、倫理憲章による採用活動が繰り下げられる中、早期から学生と接触できる機会ができるメリットは大きい。参加した学生本人はもちろんのこと、その学生を通じて周辺学生に対して、業界・企業・仕事の魅力を伝えることができる。また、インターンシップを通して優秀であると判断した学生には個別のアプローチも可能である。

 現大学3年生(修士1年生)を主な対象として開催された昨夏からのインターンシップでは、特徴的な動きが見られた。2011年3月の経団連による倫理憲章の見直しに伴い、インターンシップは「5日間以上の期間をもって実施され、学生を企業の職場に受け入れるものであること」と定義されたことにより、2011年夏以降のインターンシップからは半日や1日だけの「1dayインターンシップ」が影を潜めることとなった。
 ところが、昨夏からはこの「1dayインターンシップ」が盛り返してきている。企業側の調査では実施企業が前年の14%→24%に、参加した学生側の調査では33%→43%(文系)、27%→31%(理系)へ増えている。理由は簡単、受け入れ学生数拡大のためである。倫理憲章に沿った「5日間以上・職場受け入れ」タイプのインターンシップでは、受け入れられる学生数はかなり限定的となる。採用活動につなげるためには、受け入れられる人数は多いに越したことはない。

 この動きは2015年卒採用のためというよりも、採用スケジュールが12月から3月に繰り下げられることになる2016年卒採用を見越しての実験的試みの側面も大きい。解禁日である3月よりも前に学生との接点を持つためにはインターンシップが手っ取り早い。また、3月の解禁から短期間で選考を開始するためには、解禁時点ですでに母集団をある程度確保しておく必要がある。つまりインターンシップでいかに多くの学生と接点を持っておくことができるかがキーとなるわけである。

 2016年卒採用に向けて、今夏はさらに1dayインターンシップが広がることが予想される。


HR総合調査研究所 主任研究員 松岡 仁

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