国などがうつ病への誤解を解くため、「うつ病はこころの風邪」というキャッチコピーを用いて啓発キャンペーンを繰り返してきたことが功を奏したのか、うつ病はきちんと治療さえすれば治る、という認識も広くなってきたようだ。うつ病と聞いても、さして驚かない時代になってきている。

うつ病と落ち込みの違いは?

一般的には、なんとなく暗くなるというイメージがあるうつ病だが、われわれが日頃体験している、落ち込みとどう違うのだろうか?

うつ病とは、DSM-5というアメリカ心理学会の診断基準によると、抑うつ障害・うつ病性障害(Depressive Disorders)と呼ばれるものをさす。医師による診断書では、「うつ病」と記載されることが多い。一方、落ち込みの状態は、「うつ状態」と記載される。

うつ病になると、気分の落ち込みだけではなく、日常生活に与える影響の範囲が広くなる。例えば、眠れない、食欲がなくなる、何をするにも億劫になる、物事に対する興味を失う、性欲がなくなる…等だ。

このような状態が2週間以上続く場合は、単なる落ち込みではなく、ひょっとしたらうつ病かもしれない、と考えてみたほうが良いだろう。

上記のような症状を感じたら、一度まずはかかりつけの内科医に相談し(いきなり精神科に行く必要はない)、指示を仰いでみることをおすすめする。精神科に行くとなると少し気が引ける人もいるかもしれないが、かかりつけの内科であれば気軽に行けるだろう。あなたの話や表情、全体的な様子から、総合的に病状を判断してくれるはずだ。早く治療を始めることが重要である。

職場でできるうつ予防とは?

では、職場ではどういったうつ予防が可能なのだろうか。

メンタルヘルス対策を推進する社労士事務所では、企業向けにセルフケア研修(社員一人ひとりの心のケア)も実施しているところがある。こうしたセルフケア研修では、ストレスとうまく付き合う方法が指導される。そこでいつも語られるのは、メンタルヘルス疾患を予防するには、「食事が大切」ということだ。こう伝えられると、多くの人が驚く。当たり前すぎるのか、それとも、心と食事がイメージとしてあまり結びつかないのか、どちらにせよ、これは意外と見落とされがちなポイントだと感じている。

心の働きの多くは脳が司っている。その脳に栄養を補給しているのは、言うまでもなく食事だ。脳も体の一部だから、「食事による脳への栄養補給」が重要なのは当たり前といえば当たり前なのだが、不思議と人は、心と体を切り離し、別物として考える傾向があるように感じる。

そこで、職場で出来るメンタルヘルス対策として食事を重視してみてはいかがだろうか。
例えば、上司が食事抜きで仕事をしていると、部下はなかなか食事にいけないものだ。しかし、心の働きに不調を生じさせないためにも、ランチをきちんと確保できるように上司自身がきちんと食事に行く。さらに、繁忙期などで残業をするときには、ぜひとも夕食タイムも確保するよう気を付けてあげてほしい。

当事務所が関わっている企業で、よい制度だなと思ったのが、どうしても残業が必要な時期は、部署全体で時間を決め、弁当を注文して皆で一斉に食事をするという制度だ。こうすると、上司に気を使って食事を食べ損なうという部下もいなくなる。さらに、一緒に食事をすることによって、また頑張ろうという雰囲気になるので、チームとしての連帯感・士気も上がるというわけだ。

もう一つのうつ予防策とは?

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