2016年12月26日、日経新聞電子版にて、「正社員の副業後押し政府指針、働き方改革で容認に転換」との記事が掲載された。内容は、厚生労働省の「モデル就業規則」から副業・兼業禁止規定を削除し、「原則禁止」から「原則容認」に転換するとのものである。
副業容認へ
モデル就業規則の変更が、企業に対し、ただちに副業を認めることを強制するものではない。しかし、モデル就業規則は、企業が就業規則を作成するにあたり参考にされるものであり、そのまま社名を入れ使用されることもある「一般的な就業規則」といえるものである。その「一般的な就業規則」においての転換は、容認への大きな流れとなると考えられる。
以前のコラム(「副業、解禁!?」)の中で、副業を認める企業が増えていること、およびそのメリットについて論じ、副業を推奨すべきではないかとの考えを書いた。だが、「原則容認」への方向転換により、推奨ではなく、容認せざる負えない方向に動いていくと考えるほうがよいであろう。
しかし、副業を認めることにはいくつかの問題を含んでいるといえる。以下では、労働災害の点から副業について見ていくことにする。
副業における労働災害
副業先で業務災害により負傷し、本業も休業する場合を考えてみたい。その場合に、本業にて労務不履行を理由に解雇を行う場合に解雇制限がかかるのだろうか。
結論から言えば、副業での業務災害の場合、本業では解雇制限はかからず、解雇を行うことは可能と考えられる。(しかし、その場合にも就業規則上に規定を設ける必要はあるだろう。)
労働基準法は、「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間」についての解雇を禁止している。ただし、この業務上の負傷、疾病は当該企業における負傷、疾病に限定されており、他企業でのものは含まないと考えられる。
そのため、上記の場合、本業での解雇に影響はないだろう。
だが、これが精神疾患等の疾病による休業の場合はどうであろうか。
本・副業のどちらに原因があるかわからない状態では解雇は難しいとしか言いようがない。
この点に関して、政府がガイドラインを作るとのことだが、本・副業どちらの労働災害か認定することは難しいだろう。この点に関してはガイドライン策定を待ちたい。
解雇を行えない場合、貴重な人材を失うだけでなく、新たな採用を行えないことも考えられる。
副業容認は多様な人材が集まり、イノベーションが起こるような企業風土にする一助となるなどメリットは大きい。しかしその反面、貴重な人材の喪失につながる可能性も秘めている。
では、企業としてはどのようにリスクヘッジを図るべきだろうか。以前と同じことを書くようだが、副業を無制限に容認するのではなく、許可制・届出制とするべきである。そのためには、現状の就業規則では不十分であり、見直しが必要となる。企業を守るためにも就業規則の見直しをお勧めしたい。
社会保険労務士たきもと事務所
代表 瀧本 旭