4月14日に発生した熊本地震の影響で、熊本県下で事業を営む事業所の社会保険料の納付期限は、震災発生後に期限が到来するもの以降は延長されていた。この社会保険料の取り扱いが10月31日に決定したことをご存知だろうか。
熊本地震で延長されていた社会保険料の納付期限が決定へ

7〜8ヵ月分の納付期限が延長に

熊本地震の発生後、被災企業の当面の課題の一つには「直近の社会保険料の支払いができるか」にあった。そこで、厚生労働省では震災発生後、最初に納付期限が到来する「3月分の社会保険料」(納付期限は5月2日)から期限を延長することとし、当面の間、熊本県下の事業所に対して社会保険料の口座振替を行わない措置をとっていた。納付期限が具体的にいつまで延長されるのかは、被災地の復興状況などを鑑みて政府(厚生労働省)が決定し、発表されることになっていたが、10月31日に厚生労働省の新たな告示が発出され、期限が発表されたものである。

具体的には、熊本県下の市区町村が2つに区分され、取り扱いが異なっている。はじめに熊本市、阿蘇郡西原村、阿蘇郡南阿蘇村、上益城郡御船町、上益城郡益城町に所在する事業所の場合には、本年3月分から10月分までの8ヵ月分の保険料の納付期限が本年の12月16日(金)に決定された。本来、社会保険料の納付期限は翌月末日(休日等の場合は翌営業日)だが、本地域に所在する事業所の場合には、3月分から10月分までの保険料は12月16日(金)までに納付すれば期限内に納付をしたことになり、延滞金が発生することもない。対象となる社会保険料は「厚生年金保険料」「健康保険料(全国健康保険協会の管掌するもの)」「船員保険料」「子ども・子育て拠出金」である。また、熊本県下のその他の地域については、本年3月分から9月分までの7ヵ月分の保険料の納付期限が本年の11月30日(水)と決定された。

ただし、期限が延長されたといっても、7〜8ヵ月分の社会保険料をまとめて納めるとなれば、決して容易ではないかもしれない。「期限を延長されても納付が難しい」という事業所もあるであろう。そのような場合には、社会保険料の「納付の猶予」という制度が用意されている。たとえば、災害による納付の猶予制度は、災害により財産に相当な損失を受けた場合、対象保険料の全額が納付期限から1年以内に限り納付の猶予が認められるというものである。

納付方法の変更も可能

期限が延長された保険料については口座から自動的に振り替えられるわけではない。日本年金機構から送られてくる「納入告知書」を用いて、自ら金融機関等の窓口で納めなければならないため、若干、手間がかかる。万一、金融機関等の窓口で納めた日が12月16日(金)、11月30日(水)の延長された納付期限を過ぎてしまえば、期限後納付となり延滞金の問題が発生するので注意が必要である。

また、10月分までの社会保険料の期限が延長されていた地域では、翌11月分の保険料から口座振替による納付が再開される。9月分までの社会保険料の期限が延長されていた地域では、口座振替による納付の再開は翌10月分の保険料からになる。半年以上行われていなかった社会保険料の口座振替が再開することになるので、口座の残高が不足することのないよう、残高管理に注意をしなければならない。もしも、震災等の影響で今後は社会保険料の納付方法に口座振替を利用するのは難しいという事情があるのであれば、今後の納付方法の変更を届け出ることも可能である。

熊本地震から半年以上が経過し、震災に関するメディアの報道もすっかり減ってしまった。しかしながら、熊本で被災された皆さんの生活が完全に元通りになったわけではなく、復興への道のりはまだ始まったばかりであろう。被災地域の事業所が社会保険料を納付するにあたっても、納付の便宜を図るさまざまな制度が用意されている。管轄の年金事務所で各種相談を行っているので、ぜひ利用していただきたい。

コンサルティングハウス プライオ
代表 大須賀信敬
(中小企業診断士・特定社会保険労務士)

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