「自律」した社員を育てるには、組織全体としての一貫性を担保した上で、個々が自主性を発揮することが第1歩である。
そのためにも、ベースとしてのマニュアルは必要である。それがあって初めて、マニュアルを超えた対応や自律性の発揮が可能となるのである。相手へ丸投げするだけでは強みが積み重ならない。
「自律」へのカギ

「自律」には「共感」が不可欠である

組織としての一貫性を担保するには、製品やサービスの開発背景や想い、開発・販売過程での失敗談や苦労話、サービスや商品のお試し体験などを人財教育プログラムへ組み込み、まず社員自身をファン化することが大切であろう。
トップから新入社員まで全員野球で一緒にブランドを創り、強化していくのである。それを前提に、習熟度に応じランク別の研修を実施したり、仕事を割り振ったりするのである。

そろそろ、「モノを売る」という意識を変えることが必要である。
営利団体である会社にとって売上や営業利益は重要である。しかし、あえて社員はお客様のことだけ考え、お客様の悩みを伺い、その悩みを解決するあらゆる手段を考え提案する。万が一、自社製品ではお客様の悩みを解決できない場合、ニーズに合わない場合、自社のサービスや商品を勧めないという判断ができる社員が欠かせない。
あくまでも、主体はある種のカウンセリングである。お客様の悩みやニーズに誠実に向き合い、応えることが結果的に売り上げに結びつくのである。

業務効率の視点をあえて外し、お客様要望にすべて答えたらどうなるか、というシミュレーションをしてみる。顧客努力(Customer Effort:お客様側の手間や負荷、労力を示す指標)を課してしまっているかどうかを確認・分析し、可能な限り減らしていくのが、「サービス」である。
ただ、改善ポイントは分かったが、どのように解決したらいいのかが分からない場合もある。その際は魚の釣り方(やり方・Do How)をワーク形式等で教え、成功体験を積ませることである。100%の回答など誰も提供できないのだから、小さなヒントやアイディアでもOKである。それが小さな成功体験につながる。後は、継続し、積み重ねるのである。
柔軟性と発想力こそが『感情労働』の支えになる

柔軟性と発想力こそが『感情労働』の支えになる

またサービス業の場合は、感情労働のため、当人がどんな気持ちだったかを無視するわけにはいかない。
もし、「腹が立ってしょうがない」なら「腹の虫がおさまるようなストレス軽減方法を学ぶ」という対処が必要になる。アンガーマネージメントを試してみるのも一つの手である。それが相手の気持ちを察することにも通ずるからである。
同様に、労働者側ももっとユーザー側や、経営層と向き合い、「何ができたら経営貢献か」の共通認識を持つ必要がある。単純に数字だけなのか、目には見えない経営貢献があるのか、もしあるなら見える化し、積極的に提案していくことが「自律」である。

『上司は使い倒してなんぼだから、3回は掛け合ってみろ』というお話をある経営者から伺ったことがある。最後には、「勇気、情熱、あきらめない」という泥臭さが最も必要であろう。人間味の感じられない相手とは誰も仕事したくないからである。

結局のところ、労使共に、環境変化に対する柔軟性や発想力が肝となる。知識や経験に縛られ、「新しいことはできません」では生き残りは難しい。

経営者の期待を理解しつつ、顧客のニーズを合理的に公平に社内へ浸透させていくキーパーソン、自律したリーダー社員がどれだけ居るか、育成できるかが生き残りの要になる。


アーネスト・ハート
社会保険労務士 竹内 元宏

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