どの年代のモチベーションも気になるもの。人事担当者が気にしているのは若手のモチベーションばかりではない。
中高年齢者のモチベーションを向上させるには?

 今年4月の改正高年齢者雇用安定法の施行以来、話題として多いのが中高年齢者のモチベーション向上である。ちなみに、厚生労働省の定義によると、中高年齢者とは45~64歳を指す。高年齢者というと65歳以上である。多くの人が話題に挙げているのは、この45~64歳の中高年齢者のことのようである。話をよく聞くと、大きく3つに分類される。

 一つ目は、45~50歳くらいの社員で、まさにバブル世代。社内の人員構成の比率が高く一大勢力を形成しており、管理職になる年代であるにもかかわらず人数が多いバブル世代のため非管理職にとどまっている割合が多く、社内的には多分このままずっと昇格せず非管理職にとどまるだろうと目されている。非管理職のままで働き続けるにせよ、再雇用まで含めるとこれから10数年以上あるわけだから、モチベーション高く働いて組織に貢献してほしいというのが人事担当者の思い。
 多くの企業ではリストラモードが一段落しており、バブル世代の人員構成の歪さは承知しつつも、できればこの一大勢力を再活性化させて組織の活力や業績を向上させたいという思いの企業が最近では多くなっている。これに対し、キャリアの棚卸しを行って再度エンジンを掛け直す、というキャリア研修を実施する企業が多いが、研修を実施するのであれば業績に貢献できるよう、身近なスキルを習得する研修を実施してもらったほうがありがたい。それこそOAスキルやプレゼンスキル習得の方が実践的である。
 
 二つ目は、定年前の社員で、多くは役職定年を迎えている世代。早ければ55歳で役職定年となっており、以前の部下が今の上司。本当はもっとバリバリ働けるのに、後進に道を譲るという名目でポストから外れ、組織の中でも何となく扱いづらい雰囲気で周りが接してくる。定年前から再雇用のような働き方になっている人も見られ、役職定年後は実質的な再雇用期間と言う人もいる。大企業のように人材が潤沢にプールされているならともかく、中堅規模以下の企業ではすでに役職定年が機能しないところも出始めており、役職定年をそのまま実行してしまうとポスト人材が不足する組織もあるなど、運用上困っているのが実態である。
 多くの企業で年齢によらない制度や運用を指向しているにもかかわらず、気力も体力も実力も充実している50代を、単純に年齢を基準とした役職定年制度を適用してポストから外すのだから、その後のモチベーションが上がるはずもない。

 三つ目は、今後増えてくる定年後の再雇用者である。試算したら今後全社員の1割を超えるという企業も少なくない。今までは、年金も支給されるし、別に無理して働かなくてもということで再雇用に応募せず定年を迎える人の方が多かったが、年金支給開始年齢が段階的に引き上げられる現況下では、年金分を穴埋めするために再雇用を選択する方が一般的になるだろう。人事担当者が悩んでいるのは、今までは再雇用のボリュームも少なく目立たなかったため、仮に生産性が低かったりモチベーションが低い再雇用者がいても個別の問題として片付けられたが、今後は職場に一定割合存在する社員として存在感を増してくるため、モチベーション高く働いてほしいのに実質そうではない、というギャップである。再雇用の場合、定年時の賃金の60~70%程度などに賃金を減額することが一般的だが、定年前に役職定年で給与が減額していたら、定年を軸に2段階の給与減額が発生していることになり、それだけでモチベーションはガタ落ちである。
 さらには、そもそも仕事の中身が定年前とそんなに変わらないのに給与だけが大幅に減額していたり、年収300万円程度まで給与を減額し、さらには仕事の中身も簡易的な定型作業だけお願いしておきながら、モチベーションだけは高く働いてくださいというのは土台無理なのではないだろうか。

 いずれの年代にも共通して言えることだが、本当にモチベーション高く働いてほしいと考えるのであれば、業績や組織に貢献してもらえるよう「戦力化」を検討すべきである。戦力化するかどうかのスタンスと処遇が一致していれば、現在の悩みは解消されるものと考える。


HR総合調査研究所 客員研究員 芝沼芳枝

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