今回は、『仕事と介護』について、社長や担当者の心構えについて述べる。
中小企業のための『仕事と介護』を提案します[6]

社長・担当者の心構え

ⅰ)風通しの良い職場になっているか確認すること
仕事と介護を両立させるためには、まず、『相談しやすい』体制になっているかがポイントである。具体的には、相談しやすい上司か、相談しやすい人事総務か、相談しやすい先輩がいるか、相談しやすい社風になっているか。働いている社員に親がいれば、誰でも働く介護者になる可能性があるので、まず、会社はお互い様の精神がもてる職場作りを目指すことが重要である。


ⅱ)社員の不安な気持ちに寄り添うこと
コミュニケーションは重要と良く言われるが、そもそもコミュニケーションとはなにか? 日頃から積極的に声をかけることなのか? 仕事終わりに一杯飲みに行くことなのか?
中小企業の社長によくあるタイプだが、自分の話を一方的に話す社長に、社員は本音を言わない。なぜかと言うと、相談する前に結論がわかるからだ。中小企業の経営者は、自分の意思がはっきりしているので、相手の気持ちに寄り添って対応することが苦手である。どのようなタイプが相談したくなるかを考えてみて欲しい。

社員が勤務を続けるには、社員本人から課題や不安、悩みを聞き取ることがポイントになる。この時は、『解決策を示す』よりも本人の状況を理解して、『大変だね』と声がけすることが重要だ。ただし、社員本人から状況を聞き取っても、介護の状況は常に変化する。
例えば、被介護者は冬場に急に体調が悪化して、しばらくお休みが必要になることがある。また、病院の都合で、急に入院してくださいと言われるケースもある。介護の状況に応じた柔軟さが必要になる。


ⅲ)地味だが重要な役割をはたす社員にも目を向ける
売り上げに貢献している等、客観的に数字で評価できる社員はとてもわかりやすいが、中小企業の現場では、数字に表れないが前向きに仕事へ取り組むための雰囲気作りをする社員がいる。40代・50代の年齢層に多く、このような社員は実に貴重である。
例えば、つらそうにしている社員にそっと声をかけたり、さりげなくおやつを配ったり、他の社員が仕事しやすいように段取りをつけたりする社員がいる。一見地味だが、中小企業の職場では潤滑油としての役割は大きい。中小企業の社長は現場を知らないことが多いので、現在のメインとなる戦力の見極めとともに、数字に表わせない貢献をしている社員にも目を向けて欲しい。


ⅳ)会社はできる範囲でルールを見直すこと
 どうすれば仕事と介護が両立できるのか、働く介護者の立場にたって検討することが重要だ。たとえば、始業時間を30分繰り下げることで、勤務が続けられることだってある。家族の介護が必要な時だけ、時効で消滅した年次有給休暇を利用できる制度を導入する方法もある。手間や時間をかけなくても創意工夫の余地はいくらでもある。

ルールの見直しのポイントは、社内にお互い様の精神を根付かせるルールになっているかだ。『働く介護者』が働きやすい環境になれば、どのような社員でも働きやすい環境になる。採用難で人材がとれない時代になっているので、『働く介護者』の視点から、働き続けられる仕組みを考えたいものである。


ⅴ)介護離職者の再雇用制度
会社としてできる範囲で対応したが、残念ながら、介護離職してしまっても、介護離職者を再雇用する制度は導入しておきたい。再雇用制度の運用がうまくいくかは、これまで社員とどのような関係性を築いてきたか、どのような関わり方をしてきたかに左右される。優秀な介護離職者の転職先はすぐに見つかる。同業他社の戦力をアップさせないためにも再雇用制度は導入しておきたい。


再雇用を促すため、意図的に社員と接触機会をもつことが重要だ。年賀状や暑中見舞いを欠かさずに節目で書くようにする。介護離職者を大事な顧客と思えば、すぐにやれるはずである。100名規模の会社ではエクセルの表で管理することをお勧めする。


ふくすけサポート社会保険労務士事務所 社会保険労務士 
産業カウンセラー 森大輔

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