安倍総理の「1億総活躍社会」を聞いて、違和感をもったり、複雑な思いをした方も多いだろう。賛否両論あろうが、人口構造の変化は深刻な問題であることは確かだ。対策を講じなければ貧しい老人だらけの国になってしまう。世代間扶養をとる日本の年金システムにおいておや、である。
騎馬が危うい 

いまどきの騎馬戦=日本の人口問題の将来像

20年以上前から、人口構造の変化によって社会の変革がもたらされることは予測されていた。 幸か不幸か、その構造は変わっていないどころか、それほどの変革もないまま予測が現実のものとなりつつある。 今から35年後、2050年には4割近くが65才以上の高齢者になると言われている。 力んで活躍と言わずとも、働かざるをえないだろう。

先日、小学校の運動会に行き、5・6年生の騎馬戦を見た。 ところが、よれよれで、騎馬戦なんてもんじゃない。 崩れないように、騎馬の回りを先生たちが支えるのである。 さらに、ちょっとでも怪我をすると、救護班なる腕章を巻いた母親たちがすぐかけよってきて手当をする。

先生が支える!? なんと情けない、擦りむいた程度は唾でもつけときゃ大丈夫。 死にゃしない、などと言いたくなるが、いまどきそんなことを口にしたら保護者に睨まれるのである。 しかし、おや?これは、まさに、日本の人口問題の将来像そのものではないか。 自身のサバイバルも危ぶまれる子供に親がどっかり乗っかるわけだ。 

毒づきたい現実問題は沢山あるが、ここでグレても何の解決にもならないし、後戻りもできない、ひょいとかわしていける問題でもない。 

みんなで筋トレして支え合わないことには、戦うこともままならない。 一部の金持ち以外は撃沈が待っている。 ヘタをすると介護する側か介護される側のどちらかになってしまいクタクタで、次のことに備える時間はない、となる。

こんな将来は誰でもいやだろう。 
働くことがうれしい、という働く仲間を増やして、いきいきと前向きに働きたい。老若男女、外国人も含めてそれぞれのステージで働くことができる、つまり多様な働き方が可能な社会に変っていくことにある。
働きたい人が働ける。定年もなし。いくつになっても学習の機会があり、イノベーションを可能にすることが重要になる。老化、というのは学習をやめた時のことになる。 

企業における喫緊の課題として、多様な働き方に対応したルールづくりをし、人と組織で企業を守り育み、不足する部分を人に代わる便利な機械・器具、情報システム等に助けてもらう、という考え方が大切だ。やはり、人が第一、こつこつとした地味な手作業、努力は手放してはならない。 

世の中の変化に合わせた最適化のために

隠れた労働力に出て来て頂くことも解決のひとつだが、労働生産性を上げる事も喫緊の課題だ。 そもそも日本の労働生産性が低いことは以前にも話題にした通りで、スペイン、イタリアより低い世界20位である。 長時間労働、メンタルヘルス、ワークライフバランス等々の課題は労働生産性の問題でもある。 労働生産性の向上に、時間力アップを図ることは必須である。 その上に柔軟な働き方、質の高い働き方がある。 

問題をぐっと個人に引き寄せてみる。 
時間力という基本を前提に、よりよく働くことを可能にする3つの筋トレのすすめ、である。 

①こころの筋トレ
レジリエンスを学び、しなやかな弾力性を磨くこと。 レジリエンスを知ることで、コミュニケーション能力も向上する。
②からだの筋トレ
これはいうまでもない。心身を捉えた、継続できる運動で筋力を磨く。スポーツによる本気の戦いもよし。人との交流もいきいきには欠かせない。健康長寿の最後の10年は筋力にかかっている。死ぬまで自分の足で歩けることだ。そして快食・快眠・快便。 
③あたまの筋トレ
お金のやりくりで鍛えること、と学習である。 

上記の筋トレ、個人のライフプラン、キャリアプランは以前にもまして、人生の長期戦に対して重要さを増している。

ライフプラン、キャリアプランをたてる上で、学校や企業において早いうちから自分の強み弱みに気づき、強みを伸ばし、弱みはひっこんでいただくことがいずれは人生を“築く”ことになる。高齢者にも変革を求められるようになるだろが、これもひたすら強みを磨くこと、生かすことがポイントである。 

 多様な働き方が細切れの労働提供ではなく、キャリアとなるためにも教育・研修は、必須栄養でありスパイスである。 
 変化のなかった時代はない。 世の中の変化に合わせて最適化するために変っていける企業、個人が、崩れない騎馬隊を組んで生き延びていくのだ。


オフィス クロノス 人材育成コンサルタント 
社会保険労務士 久保 照子

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