指導的地位に占める女性の割合を2020年に30%とする目標を達成するために、政府が本気度を上げている。
進まぬ女性登用~なぜ女性はロールモデルを必要とするのか

 今年4月から、各証券取引所が上場企業に対し、女性の管理職への登用状況を「見える化」し、報告書「コーポレート・ガバナンス」に記載するよう促す取り組みをスタートさせた。6月には、日本経済の再生に向けた3本目の矢である成長戦略「日本再興戦略」に、“女性が輝く日本へ”として特集ページが組まれ、全上場企業に対して役員に1人は女性を登用してほしいとの安倍首相のコメントが発表された。内閣府はさらに来年1月より、上場企業を対象に、男女別の役員数や管理職数、勤続年数のほか、産休取得者数や育休からの復職率、月平均残業時間、入社3年後の定着率など計12項目にわたり、了承を得た企業のデータを内閣府のホームページで公表することとした。データの開示により目標達成のスピードが加速されるとともに、社外からは女性の登用状況が分かるだけでなく、社員の働き方を推測する手掛かりともなるため、就活中の学生にとっても有用な情報となると思われる。
 このように、女性の登用を後押しする取り組みが貢献してか、女性登用に関するニュースは連日報道され、女性登用に対する取り組みが以前よりも進んでいることは皮膚感としても伝わってくる。
 その一方で、管理職への女性登用が促進されない実態も存在する。背景には、日本の家族制度から来る男女の固定的な役割分担や意識、総合職・一般職等の複線型人事管理の弊害、男性の(もしくは男性的な)企業戦士的、長時間対応型の働き方への奨励、女性側の就業意識、ロールモデルの不在等が挙げられる。
 これらの背景については一般的に語られる内容であるが、女性登用を進める上で、女性側からよく出てくるのが“ロールモデルの不在”である。現在登用されている多くの女性は、結婚していないか、子供がいないか、子供がいても離婚しているかで、しかも男性と同等(か、それ以上)に働く傾向にある。若手からは、これは自分たちにとってのロールモデルではなく、望んでいるのは、結婚して子供もいて、女性ならではの管理職っぷりを発揮している人を求めているのだと言われる。
 不思議なのは、なぜ女性は“ロールモデル”を求めるのだろう。他の人より突出することを好まずに群れるというのは男女に関わらず見られる傾向だし、他人と同じスタイルを好まないというのは個別性であり男女の問題ではないと思われる。そもそも、男性に対して育児休暇取得が促進しない理由を聞いても、“ロールモデルの不在”とは言わないだろう。これは女性固有の意識のように思える。
 ちなみに、旧型の女性管理職は、“ロールモデルの不在”を言わない人が多いと思われる。男性社会であることは重々承知しているし、むしろ「男性社会だからといって何なの?」という認識をもっているのではないか。となると、現在の候補者たちにヒアリングして、“ロールモデルの不在”を挙げなかった人は登用人材の有力候補であるかもしれない、と密かに思うのである。


HR総合調査研究所 客員研究員 芝沼芳枝

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