社長「生産性を高め、より質の高いサービスを提供するため、我が社も早朝出勤制度を導入する!」

社員「……。」

社長「出社時刻は朝7時半!夜7時には全ての電気を切るからそのつもりで!」

社員「……。」


 朝型勤務の動きが広がりつつある。TVや新聞等で、企業が続々と朝型勤務にシフトするニュースをよく耳にするようになった。政府もこうした動きを後押しすべく、今夏の国家公務員を朝型勤務とし、更に朝型勤務により残業代を削減した企業に対して助成金を出す検討も始めたそうである。
朝型勤務のリスク&デメリットを考える

朝型勤務のリスク

 朝型勤務に多くのメリットがあることは万人の認めるところだろう。しかし、今のこの動きは、些かメリットばかりに目が向き過ぎてはいないだろうか。そこで、今回は敢えて朝型勤務のリスクやデメリットについて考えてみたい。

リスク①:かえって残業が増えるかもしれない
 朝型勤務の最大の狙いは、残業を減らし生産性を上げることである。しかし、早く出勤したからと言って、早く帰れるとは限らない。早く帰れなければ、残業は増える。新聞報道によると、カルビーではかえって残業時間が増えたため、朝型勤務を止めたという。

リスク②:職場士気の低下を招くかもしれない
 業務終了時刻が決められている場合、それを守ろうとするあまりに、仕事が完了していなくても帰らされるケースが出てくるかもしれない。そうすると仕事が回らなくなるし、帰宅後に仕事をするようなケースも出るだろう。その結果として職場の士気の低下の恐れもありそうだ。

リスク③:家庭の事情で無理な人もいる
 育児や介護のため、朝早く家を出られない人もいる。こうした事情は実際に自分の身に起こらないとなかなか分からないものである。しかし、そうした事情にきちんとした配慮ができなければ、労働者を苦しめることになり、反発も招きかねない。

リスク④:機会損失に繋がるかもしれない
 夜でないと会えない顧客もいるだろう。そうした場合、「当社は朝型勤務なので」と断る訳にもいかない筈である。「あの会社は、夕方以降は対応してくれない」というイメージが広がると、機会損失にも繋がるかもしれない。

リスク⑤:職場意識改革や、評価制度の確立が必要
 夜遅くまで頑張っている人を見ると、それだけで頑張っているように見えてしまうものである。現実問題として、そうした人が評価される職場風土は依然として存在していると思われ、それは中々変えられるものではない。早く帰る人が白い目で見られるようでは、朝型勤務制度は絵に描いた餅である。

リスク⑥:夕方には体力切れも
 私は社労士開業以来朝5時起きを続けている。30代の頃は、5時起きでも夜までバリバリであったが、40歳を過ぎた頃から、次第に夕方には体力、集中力ともに息切れするようになってきた。夕方以降に勝負所が来るような場合、早起きが裏目に出る場面もあるかもしれない。

リスク⑦:ひらめきは夜?
 科学的根拠がどれほどのものかは定かではないが、夜型人間の方が創造力に富む、という説もあるそうだ。そう言えば小説家や漫画家などは夜型のイメージである。(好きで起きている訳ではないのかもしれないが)また、ハチャトゥリアンの名曲「剣の舞」も深夜に作られたと聞くし、国民的コミック「ドラえもん」も夜通し考えた末に誕生したと聞く。朝型の方が良い仕事をするとは必ずしも言い切れないようである。

盲目的な導入では下策になりかねない

 今後、政府の後押しも期待されることから、益々朝型勤務の流れは進んでいくだろう。そしてそれが多くのメリットをもたらすことも確かであろう。しかしながら、同時にそれにはリスクやデメリットも存在する。盲目的に、それなら我が社も朝型に!というのも考えものである。それぞれの人、仕事内容、職場事情等を考慮して、柔軟に導入する形が望ましいのではないだろうか。もっとも、そうなると労務管理的には複雑になるので、結局、元の時間帯で業務効率化を図った方が余程シンプルで良策ということになるのかもしれない。

 因みにこのコラムは昼間に書いている。内容がイマイチなのはそのせいかもしれない。次回は創造性に富むという夜中に書いてみようかと思案中である。


出岡社会保険労務士事務所 出岡 健太郎

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