「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(マイナンバー法)」が成立し(平成25年5月31日公布)、平成27年10月より国民一人ひとりに「マイナンバー(社会保障・税番号)」が通知され、平成28年1月より運用開始となる。テレビや広告等での広報活動が最近活発化してきており、慌てて情報を収集している企業担当者も多いのではないであろうか。
マイナンバー通知開始まであとわずか! 企業における実務対応は?

マイナンバー制度とは何か?

「マイナンバー」とは、住民票を持つすべての人に付与される12桁の番号であり、法人には13桁の番号が付与される。
政府広報によれば、マイナンバー制度導入により、「国民の利便性の向上」、「行政の効率化」、「公平・公正な社会の実現」などのメリットをもたらすということである。

一般社団法人日本経済団体連合会では、「マイナンバー制度への対応準備のお願い」という文書を発表し、以下のとおり企業が準備をしておく主な事項を示した。
① 対象業務の洗い出し
② 対処方針の検討
③ マイナンバー収集対象者への周知
④ 関連システムの改修
⑤ 委託先・再委託先の監督等
上記の事項はマイナンバーの通知が開始される10月までには行っておきたい事項である。

10月に入ると個人宛にマイナンバー通知が開始される。この時期に年末調整の準備に取り掛かる企業も多いのではないだろうか。年末調整にかかる法定調書へのマイナンバー記載は平成29年1月31日期限分より必要となってくる為今回の年末調整についてはマイナンバーの記載は不要である。しかし、平成28年1月1日以降の支払に係る法定調書よりマイナンバーの記載が義務付けられることから、来年以降の退職者の源泉徴収票の発行に備え、今回の年末調整の業務と併せて準備を検討している企業も多いようだ。

マイナンバーの取得方法は?

マイナンバーを取得する際は、本人に利用目的を明示するとともに、厳格な本人確認を行う必要がある。

利用目的の明示は、今回の取得の際は案内文書等に「マイナンバー利用目的:源泉徴収票作成事務、健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労働保険の諸手続き」等記載し明示する方法が考えられる。その後は入社の際の提出書類の案内等に記載し、明示を行っていくことになるだろう。

本人確認については、10月からのマイナンバー通知は紙の通知カードが送られてくるので、通知カードにより番号確認をし、併せて免許証等の身分証明書を提示して貰い、身元(実存)確認する必要がある。

実務上、マイナンバーの記載が必要になってくるのは、「雇用保険被保険者取得・喪失届」や、退職者へ発行する「源泉徴収票」である。こちらは、平成28年1月1日以降より必要となってくるので、入社や退職がある場合は注意が必要だ。もし、従業員全員のマイナンバー取得がその時点で間に合っていない場合でも、入社・退職者のマイナンバーの取得については、忘れずに行う必要がある。

ちなみに、マイナンバー法により、マイナンバーについては、「特定個人情報」と呼ばれることになり、マイナンバーの取り扱いには、個人情報保護法よりも厳格な規制を受けることになった。「特定個人情報」は1件でも漏洩した場合には、厳しい罰則規定が課される可能性が生じた。

特定個人情報保護委員会が公表しているガイドラインに詳細が記載されているが、「特定個人情報」については、安全管理措置として厳しい情報管理が求められ、書類やデータの廃棄・削除、マイナンバーを取り扱う事務担当従業者の明確化、システムログの保存などが求められている。日頃から社員教育を徹底し、「特定個人情報」取り扱いについては、細心の注意を持って厳格に行っていかなければならない。

マイナンバー通知まであとわずか。企業にとっては頭の痛い問題であるが、さらに大きな問題とならないよう十分注意して少しずつ準備を進めて頂けたらと思う。


松田社労士事務所
特定社会保険労務士 松田 法子

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