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“終わりの見えない介護”による人材流出を防ぐには

HRプロ編集部
2014/12/19

 厚生労働省が、育児介護休業法に定める介護休業日数の延長を検討しはじめた。親族介護を理由に退職を余儀なくされる労働者が増加しているためだ。現行法では、労働者の申し出があれば、介護休暇や時短勤務措置をはじめ、通算93日間の介護休業を与えることを会社側に義務付けている。しかしながら育児と異なるのは、介護には終わりが見えない、すなわち先の見通しが立たない点が決定的に異なる。したがって、通算93日間の休業程度では介護問題を吸収できないということである。

要介護認定を受ける人は10年前の1.6倍に増加

 厚労省によれば、要介護認定を受ける人の割合が10年前と比較して1.6倍程度に増加したと指摘している。人口の層が厚い団塊世代が長寿医療保険制度に移行する75歳を迎えるまであと10年も残されていない。今後、高齢者人口が加速度的に増加することは周知の事実である。これまでも筆者は介護問題について指摘してきた。再度ここでその概要を確認してみたい。

 第1は、2000年初期までは政府主導で介護問題を推進してきたが、予算上の諸問題から介護施設やデイサービスを民間解放して投げてしまった点である。介護保険のなかで運営しなければならないことから、民間企業も営利を目的とする以上、施設型介護の設置は避ける傾向がある。ゆえに現状でも施設型は入所するまでに待機組がいる状況だ。

 第2に、上記のようなことから要介護者を抱える家族が頼る場所はデイサービス施設になる。しかし、デイサービスは日中に要介護者を預けているに過ぎず、夕方には介護施設から送り届けられるバスを家族が自宅前で待たなければならない。これは働く者にとって残業ができないことを意味する。

第3は晩婚化だ。さらに昨今は一人っ子も多いことから介護問題をシェアするパートナーや兄弟姉妹がいないため、一人で抱え込まなければならない事態に陥る可能性がある。

 第4として企業の視点では、長期にわたり育成してきた人材が退職することは大きな損失ということだ。代わりの人材を探せば良いとしても、採用や教育に費やす時間や諸費用は目に見えぬ損失である。かといって、これらのコストを蔑ろにすれば、瞬く間にサービス低下、業績低迷へと繋がる危険性もある。さらに最近では、労働力人口の減少が顕在化しはじめており、人材不足から採用自体も難しくなっている。企業としても既存の社内事情をよくわかっている社員に長く勤めてもらった方が得策だ。

介護退職者の再雇用を推進する仕組みを

 このように、介護問題は一筋縄ではいかない要因が複雑に絡み合っている。さて、冒頭で厚労省が介護休業の期間延長の検討を始めていることを述べたが、単なる期間延長だけで解決できるほど日本が抱える介護問題が単純なものでないことはお解りいただけたはずである。介護休業制度を充実させることは意義あることだが、同時に働き方もまた見直さなければ休業期間を拡大したところで介護を理由とする退職者が減ることはない。

 国は介護休業者に対する所得保障として、雇用保険を財源に介護休業給付を支給しているが、現状は月額給与の40%相当だ。これでは足りない。この更なる充実も同時に検討していかなければならないだろう。拡充により財源が足りないのなら、国の責任で雇用保険制度の再設計をすべきである。また、介護休業期間中の教育訓練や親族介護を理由に一度退職してしまった社員を再雇用するような仕組みを作った企業へ補助金や一定の優遇策を施すこともあわせて考えていくべきだろう。

 企業側は「働き方」改革を進めていかなければならない。具体的には、いまある職務を洗い出した上で職務区分を明確化し、誰がどの職務を負っているのか整理すべきだろう。その上で、自社の職務設計が所定労働時間内に終了できるものであるか検証するのだ。時間を見積もった時に、もし所定労働時間を超過しているのであれば、そもそも社員に追わせている仕事量が多すぎるか、あるいは仕事と担当者のミスマッチである可能性が高い。製造業と異なりサービス産業は仕事と時間を読むことが難しいとされる。しかし、パソコンやタブレット等の普及で、使用するフォーマットの統一や社内システム改善により十分対応可能だと筆者は考えている。

 企業規模を問わず、介護問題はどの企業でも直面する問題だ。恒常的に残業が発生する会社は介護問題に直面した時に対応できない。前述した通り、人材流出が生じれば損失であるし、新たな人材を獲得するにせよ労働力人口の減少からこれすらも容易ではなくなってきているからだ。残業ありきの漫然とした職場は、国の諸制度が整備されても介護との両立は難しい。就労継続が可能な組織への変革ができなければ、人が足りず事業継続が危うくなる事態に陥るといっても過言ではない時代がそこまで来ている。来たるべき介護問題の突破口は、日々の人事労務管理の積み重ねのなかにある。

SRC・総合労務センター、株式会社エンブレス 特定社会保険労務士 佐藤正欣

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