心理学者のソーニャ・リュボミルスキー氏、ローラ・キング氏、エド・ディーナ氏の2005年の研究結果によると、『幸福感の高い従業員の生産性は平均で31%、売上げは37%、創造性は3倍高い』そうだ。従業員の幸福度を上げることは、企業の業績向上、ひいては幸せな企業につながるともいえるのでないだろうか。
労使双方幸せな企業になるための就業規則活用法(前編)

 それでは、従業員の幸福度を上げるために、企業としてはどう取り組めばよいのであろうか。企業には労働時間や賃金などの労働条件や服務規律など職場のルールを定めた就業規則というものがある。
 就業規則は、労働基準法第89条において『常時10人以上の労働者を使用する事業場では必ず作成しなければならない』とされているが、労使トラブルが年々増加する近年においては、10人未満の企業であっても作成するのが望ましいといえる。
 職場において、労働条件や職場で守るべき規律などが明確に周知されていれば、経営者と従業員の間での無用の争いを未然に防ぎ、明るい職場づくりが可能となるといえる。
 しかし、就業規則を作成しただけでは、労働条件が明確になったことで従業員の満足度は上がることにはなるが、幸福度が向上するとはいえないかもしれない。幸福度向上のためには就業規則の活用が必要となってくるのである。
 2回に分け、『幸せな企業になるための就業規則活用法』を紹介していきたい。

表彰制度と就業規則

 まずは、表彰制度である。

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第7章 賞 罰
 第1節 表 彰

第98条 表彰
 会社は、社員が次の各号のいずれかに該当するときは、その都度調査の上表彰することがある。
(1)服務心得に定める事項を守り、品行方正、技術優秀、業務熱心で他の者の模範と認められるとき
(2)事故、災害等を未然に防ぎ、または非常事態の際し適切に対応し、被害を最小限にとどめるなど特に功労のあったとき
(3)業務上、有益な発明、改良または工夫、考案のあったとき
(4)社会的に会社に名誉になるような行為のあったとき
(5)長年にわたり無事故で継続勤務したとき
(6)前各号に準ずる程度に善行または功労があると認められるとき
 
第99条 表彰の方法
 前条の表彰は、賞状のほか賞品または賞金を授与してこれを行う。
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 表彰制度は、就業規則作成・変更の際は脚光を浴びることがほとんどない規定となっているが、幸せな企業になる為には、とても重要な規定であるといえる。職場に『褒める文化』が醸成されていると、従業員は自分の頑張りはいつも誰かが見てくれていると思い、モチベーションが上がる。
 そしてモチベーションが高い従業員のサービスが顧客の満足を更に向上させ、企業の収益も上がる。
 また、他の人が褒められている事例をみて、どういう行動が望まれているかも分かり、更なる業績向上のスパイラルが期待される。業績の良い企業は『褒める文化』醸成の為の仕組みがあるといえる。売り上げや顧客獲得数など営業成績の表彰を行う企業は多いと思うが、最近増えているのは、「なんでも表彰制度」のような、全ての従業員が、表彰の対象となる従業員を推薦し、また、自身も表彰の対象となってくるような制度である。
 なんでも表彰制度だと、「気持ちよく仕事を引き受けてくれてありがとう」「明るい声で挨拶をしてくれてありがとう」「いつも笑顔でありがとう」のような、日常の些細の所も対象となってくる。褒められるとモチベーションがあがるのはもちろんのこと、褒める方も相手の良いところを探すようになる為、社内風土にも良い影響を与えるといえるのである。
 また、格式ばって『表彰』とせずとも、サンクスカードを活用するなど、従業員同士で褒め合う仕組みは簡単に導入できる。
 そして、筆者が特筆したいのは、若返りホルモンと言われているベータ・エンドルフィンが最も多く分泌されるのは、なんと、感謝しているときだそうだ。
 感謝する人も、される側にもメリットがある『表彰制度』。
 就業規則に定めるだけではなくぜひ活用して頂きたいものだ。


松田社労士事務所 
特定社会保険労務士 松田 法子

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