経済産業省(以下、経産省)は2022年5月17日、「令和3年度大学発ベンチャー実態等調査」の結果を発表した。本調査は、大学発ベンチャーの設立状況を定点観測するとともに、事業環境やニーズ等を調査し、その成長に寄与する要因等を分析することで、今後の政策展開に活用することを目的として実施しているもの。「設立状況調査」、「実態等調査」、「ヒアリング調査」の3段階で、2021年11月〜2022年2月にかけて行われた。設立状況調査では759件、実態等調査では374件の回答を得ている。
経産省が「2021年度大学発ベンチャー実態等調査」の結果を発表。企業数・増加数や博士人材の活用状況とは

大学発ベンチャーの企業数は増加傾向にあり、2021年は過去最高に

大学発ベンチャーは、大学等における革新的な研究成果をもとに、経済社会にイノベーションをもたらす担い手として期待されている。経産省が「大学発ベンチャーの企業数」を調べたところ、2021年度調査では3,306社という結果だった。2020年度に確認された2,905社から401社増加し、企業数・増加数ともに過去最高を記録したという。
2021年度の大学発ベンチャー企業数

各大学でベンチャー企業数が増加。大きく増加した大学も

次に、同省が「大学別の大学発ベンチャー企業数」を調べたところ、1位は「東京大学」で329社(前年比6社増)、2位が「京都大学」で242社(前年比20社増)、3位が「大阪大学」で180社(前年比12社増)などとなった。上位4つの大学は前年度から順位の変動がなかったものの、5位の「慶應義塾大学」は175社で前年比85社増となり、前年の10位から最も大きく順位を上げた。この結果から、多くの大学がベンチャー創出に注力していることがうかがえる。
大学別の大学発ベンチャー企業数

「他社連携」や「事業計画」の面でコロナ禍の影響大か

次に、同省が「大学発ベンチャーにおける新型コロナウイルスの影響」について、「投資」、「融資」、「人材採用」、「事業計画」、「施設利用・他社連携」のそれぞれの面で、前年と比較してどのような影響があったかを調べた。「プラス面の影響が増大」、「変化なし」、「マイナス面の影響が増大」の3つの選択肢で尋ねた結果、いずれの面でも「変化なし」の回答が最も多かった。その中で、「プラス面の影響が増大」の割合より「マイナス面の影響が増大」の割合が大きかったのは、「施設利用・他社連携」(プラス面:13%、マイナス面:30%)と「事業計画」(プラス面:16%、マイナス面:28%)、「投資」(プラス面:8%、マイナス面:23%)だった。
前年と比較したコロナ禍の影響

大学発ベンチャー企業では、一般企業研究職より博士人材を積極活用か

続いて、同省は「大学発ベンチャー企業の全従業員に占める博士人材の比率」について、ベンチャーの定義別(「研究成果ベンチャー」、「共同研究ベンチャー」、「技術移転ベンチャー」、「学生ベンチャー」、「関連ベンチャー」)に分析した。すると、参考値の「一般企業の研究職」(4%)に比べて特に高かったのは、「技術移転ベンチャー」(46%)や「研究成果ベンチャー」(23%)だった。この結果に対し、同省は「大学発ベンチャーでは、博士人材が積極活用されていることが推測できる」としている。
従業員総数における博士人材の割合(定義別)
調査結果から、大学発ベンチャーの企業数は、年々増加傾向にあることが明らかとなった。こうしたベンチャー企業は、社会・経済にイノベーションをもたらす存在として期待されており、政府としても政策展開に活用するため調査・分析を行っているという。今後も大学発ベンチャーの動向に注目していきたい。