マイナンバー制度による影響と実務上の注意点

国民一人ひとりに番号を割り振り、税務署・年金事務所・市区町村等の複数の公的機関に存在する同一人の個人情報を紐づけし相互に活用する仕組み、いわゆる「マイナンバー制度」が近づいている。
2015年10月には国民にマイナンバーが通知され、その3か月後の2016年1月には個人番号が記載されているカードが配布され、マイナンバーの本格的な運用が開始される。
 民間企業の一部ではマイナンバーが導入されても何も変わらないのではないかといった声があるようだ。実際、私の関与先企業からもそういった声が聞かれる。

 しかし、これは全くの誤解だ。
マイナンバーの導入はすべての民間企業の実務に影響を及ぼし、その対応のための準備が必要だ。

 例えば、毎年7月上旬に定時決定(健康保険及び厚生年金保険の被保険者の実際の報酬と標準報酬月額との間に大きな差が生じないように、7月1日現在で使用している全ての被保険者に4〜6月に支払った賃金を、「算定基礎届」によって届出し、この届出内容に基づき、毎年1回標準報酬月額を決定すること)がある。
 「算定基礎届」により決定された標準報酬月額は、原則1年間(9月から翌年8月まで)の各月に適用され、納める保険料の計算や将来受け取る年金額等の計算の基礎となる。
 この算定基礎届提出時に、社会保険料の適正化を図るための調査を並行して行っている。
この調査はどの事業所においても4,5年に1回は必ず調査の対象となるよう進められており、およそ3年前から実施されている。

 パート・アルバイト社員等のいわゆる非正規社員については、正社員の労働時間及び労働日数が概ね3/4以上の場合においては社会保険に加入する必要性が生じる。

 この概ねがポイントで社会保険未加入の非正規社員についてのチェックが年々シビアになってきている感がある。
また、自社で算定基礎届の作成をしている場合などは、賃金台帳と算定基礎届の賃金額が違っていることもある。

 このような状態でマイナンバー制度の運用が始まったらどうなるのか。

 マイナンバー制度が始まると所得税の源泉徴収や住民税の特別徴収・社会保険料の納付状況等が紐づけされる。
さらには、過去の状況までもが確認できるようになることが容易に予想される。

・アルバイト・パート労働者や契約社員・嘱託社員の中に社会保険の未加入者がいる
・社会保険料が適正でない
・一定の収入があるにもかかわらず扶養に入っている
等の基本的なことを徹底して確認し、適正化することが必要だ。

 総務部門ではマイナンバー制度について研修を行うなどして全社的に周知徹底する必要がある。なぜなら、すべての民間企業に対してマイナンバーのついている個人情報の取扱いに関して管理義務が課されているからだ。

 人事給与・経理部門においては所得税の源泉徴収や住民税の特別徴収の際にマイナンバーを利用することになるので、社員からナンバーの告知をしてもらう必要がある。(配偶者や扶養親族についても同様)

 マイナンバー制度については周知徹底が図られていないのか、まだまだ認知されていないようだ。
まずは、マイナンバー制度について理解し、部署ごとに何をいつまでにしなければならないのか制度開始までのスケジュールを確認することが重要だ。


社会保険労務士たきもと事務所 代表・社会保険労務士 瀧本 旭

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HRプロ編集部

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