本格的な夏が到来し、いよいよ暑さもピークとなる頃。連日マスコミでは熱中症の話題で持ちきりである。厚生労働省は、『職場における熱中症による死亡災害及び労働災害の発生状況(平成25年)』を今年5月末に公表した。これによると、平成25年には、職場における熱中症によって30名の労働者が死亡している。これは平成24年よりも9名増えている。そこで、今回は企業における熱中症対策として4つのポイントを挙げてみたい。
熱中症対策4つのポイント

 厚労省発表によると、死亡者30名のうち、28名はWBGT値を測定していなかったという。WBGT値とは労働環境において作業者が受ける暑熱環境による熱ストレスの評価を行う簡便な指標のことである。簡単に言うと、熱中症の発生するリスクがどれくらいあるのかが分かる値のことで、ある基準値を超えると熱中症リスクが高まる。
 実は、厚労省では、平成17年からこのWBGT値を活用した熱中症対策を呼び掛けており、WBGT値測定により、熱中症のリスク低減の措置の機会とすることを企業に望んでいる。要は、「熱中症が発症しない職場環境を整備しましょう。そのためにWBGT値を測定してみてね」ということである。
 厚労省が力を入れているため、今後も職場における熱中症事例の際には、このWBGT値の測定をしていたのかどうかの調査は行われると推察される。

 熱への順化期間(熱に慣れ、その環境に適応する期間)を計画的にもうけることも大切である。死亡者30名全員がこの順化期間がなかったことも分かっている。平成22年から24年の3年間で、作業初日に死亡事故件数が最も多いことも、熱への慣れが原因だったと考えられる。
 対策としては、作業初日からハードな仕事を課さない、作業開始日の数日前からその環境に慣れさせる等、であろう。

 スポーツドリンクや塩飴等を支給するなど、水分や塩分を摂取することを対策として取られている企業は多いだろう。しかし、それを労働者の自主性に任せていてはいけない。
 死亡者のうち半分近くが定期的に水分や塩分を取っていなかった事実があることを鑑みると、上司や管理監督者が頻繁な巡視や朝礼での意識喚起などを行う必要があるだろう。

 平成24年のデータによると、死亡者21名のうち11名については健康診断が行われていなかったという。ご承知のとおり健康診断は、労働安全衛生法で企業に義務付けられているため、それ自体法違反は免れないが、熱中症予防対策という意味では健康診断はやはり重要である。
 それは、糖尿病や高血圧症、腎疾患等熱中症の発症に影響を与えるおそれのある疾病を有していたかどうかを把握するためである。企業には従業員の健康配慮義務があるため、従業員の適正な配置、作業内容の特定のためにも日頃の健康状態を把握することはまず基本であろう。


三谷社会保険労務士事務所 三谷 文夫

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