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日本の雇用システム……ただいま迷走中!?

HRプロ編集部
2014/07/01

 平成26年4月22日、第4回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議の配布資料として、雇用・人材分科会からペーパー(以下、本稿では「ペーパー」と呼ぶ)が公開された。これが物議を醸している。主な原因は、労働時間の規制緩和だ。かつて、経団連が2005年に提言したホワイトカラーエグゼンプションを皮切りに、現在に至るまで検討しては、反対意見によって引っ込めることを繰り返し議論は紛糾している。今回公開されたペーパーと、これまでの労働時間規制緩和策との決定的な違いは、労使の合意さえ図られれば一般社員も労働時間規制から外せる点だ。
 賛成派の主流は、短時間で高い生産性をあげることが可能となり、結果的に残業時間を削減できるとしている。一方反対派は、今以上になし崩し的に労働時間は形骸化し、長時間残業の温床と化すことを危惧している。今回は、このペーパーを軸に「新しい働き方」を考える際に抜けている視点を筆者なりに考えてみたい。
 そもそも、労働時間規制について繰り返し議論されているのは、某製薬会社CMのキャッチコピーであった「24時間戦えますか」精神のかつての猛烈社員は過去のもので、現代は新しい働き方のニーズが求められていることに端を発している。これから日本の労働力人口は減る一方だし、団塊世代は労働市場から撤退している。あと10年もしないうちに、約660万人(2009年10月総務省統計局人口推計)いる団塊世代は75歳を迎え介護問題も生じる。加えて、団塊世代の子供にあたる団塊ジュニア世代は晩婚化に一人っ子と二重苦だ。親の介護をするために協力してもらえるパートナーがいないばかりか、兄弟姉妹すらいないケースが多い。
 そこでペーパーでは、例えば「子育て・親介護といった家庭の事情等に応じて、時間や場所といったパフォーマンス制約から解き放たれてこれを自由に選べる柔軟な働き方を実現したいとするニーズ」であるとか、「職務等に限定のある『多様な正社員』など、裁量労働制の対象外だが職務内容を明確に定められる者(ex.営業職)について、労働時間ベースではなく、ジョブ・ディスクリプションに基づき、成果ベースでワーク・ライフ・インテグレーションの下で働くニーズ」等が紹介されている。そして、これらの新たなニーズに対応するため、「一律の労働時間管理がなじまない働き方に適応できる、多様で柔軟な新たな労働時間制度等が必要」で「多様な個人の意思や価値観・ライフスタイル等に応じて柔軟に選択できる、職務内容・達成度等の明確化とペイ・フォー・パフォーマンスを基本とする『創造性を発揮できるような弾力的な働き方が可能な労働時間制度』を構築すべき」と提言を行っている。
 筆者は、この方向性自体は正しいと思う。ただ「多様な働き方」・「成果ベースの働き方」といえば聞こえがいいが、どこか腑に落ちないと感じる人は多いはずだ。その原因は日本特有の雇用システムにある。諸外国は仕事に賃金が支払われるのに対し、日本は人を基準に賃金が支払われる。属人的要素が強く、年齢や勤続年数・役職等に応じた部分と人事査定評価による部分、これらを一括りにした総合決定給という形で支払われる。すなわち、わが国日本では、極めて職務概念が希薄なのである。
 ペーパー内の提言が実現されるためには、職務分析等を通じた職務の明確化が必須である。しかし、この環境が整備されている会社は大企業から中小企業に至るまで少ない。職務区分が曖昧なまま適正なペイ・フォー・パフォーマンスは実現できるはずがない。正確な達成度合いを図れない以上、人を基準とした賃金支払いから脱却ができない。となると、長時間労働を厭わない者が企業にとって有能な人材とされてしまいがちだ。したがって、職務基準が不明確なまま労働時間の規制緩和をしても、新たな働き方ニーズに対する抜本的な解決策とならない。
 新たな働き方を考えるときは常に職務概念を考慮した議論がされるべきではないだろうか。


SRC・総合労務センター 特定社会保険労務士 佐藤 正欣

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