パートタイム労働者の公正な待遇を確保し、納得して働くことができるようにするために、平成26年4月23日、パートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が改正・公布された。
以下、パートタイム労働法改正のポイントや留意点等について考えてみる。
パートタイム労働法改正による影響と実務上の留意点

パートタイム労働法改正の主なポイントはこうである。
1.正社員と差別的取扱いが禁止されるパート労働者の対象範囲を拡大
 改正前は、正社員と差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者とは
(1) 職務内容が正社員と同一
(2) 人材活用の仕組み(人事異動等の有無や範囲)が正社員と同一
(3) 無期労働契約を締結しているパートタイム労働者であること、とされていたが、
改正後は、(1)、(2) に該当すれば有期労働契約を締結しているパートタイム労働者も正社員と差別的取扱いが禁止される。

2.「短時間労働者の待遇の原則」の新設
 パートタイム労働者の待遇と正社員の待遇に差をつける場合には、職務の内容・人材活用の仕組み等の事情を考慮して、不合理なものであってはならないとするパートタイム労働法の待遇の原則規定が創設された。

3.パート労働者の雇い入れ時に事業主による説明義務の新設
 パートタイム労働者を雇い入れたときは、実施する雇用管理の改善措置の内容について、説明しなければならない。(どういった賃金制度か、どのような教育訓練をうけられるのか、福利厚生施設の利用機会があるのか等)

4.パートタイム労働者からの相談に対応するための事業主による体制整備の義務の新設
 パートタイム労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備をしなければならない。(相談担当者を決め、対応する等)


 これらの旨をある卸売業を営んでいる社長にご説明すると、こう言われた。
「何のためのパート労働者ですか?」と。
社長の言わんとしていることも解らないでもない。

 しかし、社会保険労務士として公平な立場で現場を見ると
□パートタイム労働者も昇給している
□パートタイム労働者に健康診断を実施している
□パートタイム労働者の評価制度がある
□パートタイム労働者が正社員と同等の職責を果たしている、等正社員との違いがほとんどないケースが多々ある。

 特に、製造現場・スーパー・飲食店・販売店等では、パートタイム労働者と正社員の区分がわからない会社や店舗はたくさんある。

 しかし、そのような会社・店舗にこそたくさんのパートタイム労働者がいてそれらの現場を支えている。
 むしろ、パートタイム労働者のほうが正社員よりも会社に貢献している状態も見受けられる。

 しかしながら、パートタイム労働者をひとくくりにして
△賞与なし
△退職金なし
△昇給率も正社員より低い、としている企業も多くある。

 「だって、そのためのパートタイム労働者でしょ!?」と考えている経営者は多い。
 確かに、かつてはそうであったが今後はそういった考え方を改める必要がある。

 まず、直近の課題は【夏の賞与】だろう。
パートタイム労働者である、ということのみを理由として賞与は支給しないといったことはできない。
 もし、パートタイム労働者には賞与を支給しないのであるならば、パートタイム労働者と正社員との職務の内容や人材活用の仕組み等を明確に分けなければならない。

 また、賞与の支給の有無に限らず、パート労働者や正社員といった雇用形態の違いを各社の基準に照らして明確にしなければならない。
 そして、その基準を基にパート労働者就業規則・正社員就業規則といった雇用形態毎に作成し、周知徹底することが求められている。
 そうでなければ、パートタイム労働者であっても正社員就業規則が適用されて、賞与・昇給その他の待遇について正社員と同様の取扱いをせざるをえない可能性があるので注意が必要だ。


社会保険労務士たきもと事務所 代表・社会保険労務士 瀧本 旭

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