2030年には日本の生産年齢人口は6700万人にまで減少すると予測されている。10年後、企業のコアとなる人材が不足するであろうことは想像に難くない。一方、日本を訪れる訪日外国人の数は年々増え、2014年には1341万4000人が訪日した。政府はオリンピック・パラリンピックが東京で開催される2020年をめどに、訪日外国人を現状の約2倍の2000万人にする目標を掲げている。不足する労働力を補う意味でも、また、毎年着実に増えているインバウンドを取り込むためにも、外国人採用は日本企業の大きな課題になっている。

ProFuture代表、寺澤康介によるキーパーソン・インタビュー第4回のテーマは、「これからの日本企業は、外国人社員を採用することで成長する」。今回お話をお伺いしたのは、外国人を積極的に採用し、その過程で既存の人材紹介会社のサービスに疑問を持ち、自ら外国人に特化した人材紹介会社を立ち上げたダイバージェント株式会社の代表取締役社長、田中修治氏。同社はハイスペックな外国人留学生や海外の優秀な外国人人材に特化し、従来の発想に捉われないマッチング重視のサービスを提供している。流通業を展開しながら、異業種の人材紹介会社を立ち上げた経緯やそのサービス、今後日本が成長するために必要なことなどについてお話をうかがった。

起業のきっかけは既存の人材紹介会社に対する問題意識

「これからの日本企業は、外国人社員を採用することで成長する」
寺澤 ダイバージェントは「ハイスペックな外国人人材に特化した人材紹介サービス」を提供されています。まず、設立の経緯を教えてください。

田中 私はもともとメガネ・サングラスの製造販売を行っているオンデーズという会社の代表をしています。5年ほど前から、その事業を伸ばしていくにあたって、外国人のお客様にももっとご来店いただきたいと考えるようになりました。ですが、メガネという商品はアパレルや飲食店などと違い、検眼をしたり、商品の特性を詳しく説明したりする必要があります。ですから、当初は日本語のできない外国人のお客様は対象にしていませんでした。ところが、たまたま池袋で中国人がメガネ店で買い物をしている姿を見かけたのです。そのとき、もし中国語の話せるスタッフがいて、検眼から商品をお渡しするところまで接客できれば、多くの中国人のお客様に来ていただけると思ったのです。そこで、日本に滞在している中国人をスタッフとして雇い始めました。

寺澤 そもそものきっかけは自社で中国人を雇い始めたことだったのですね。それが人材紹介会社設立につながったのはどうしてですか。

田中 オンデーズで精力的に外国人人材を雇用したところ、外国人社員から、日本企業への就職の難しさ、就職活動のツールの少なさの現実を知りました。彼らの友人の中には日本語学校に通って日本語を覚えたにもかかわらず、日本企業への就職活動に苦戦し、泣く泣く帰国している人も少なくないとのことでした。
オンデーズで外国人人材を採用したことで、売り上げは著しく上がり、既存社員の意識もグローバル化へと視野が広がりました。来る日本の労働人口減少と増加するインバウンド需要を背景に、オンデーズで得た実績や経験、そのノウハウが今後の日本企業と日本で働きたい外国人とのマッチングに役立てることができると感じ、設立に至りました。

寺澤 オンデーズで得た経験やノウハウというのは、ダイバージェントでどういったサービスとして生かされているのでしょうか。

田中 ダイバージェントの一番の使命は、外国人を戦力として必要とする企業に優秀な人材をつないでいくことです。オンデーズで多くの外国人面接や採用を通じ、採用には人材の「能力面」と「人間性」を深く企業に知ってもらう必要があると感じました。
ダイバージェントでは、日本語検定1級保持、TOEIC850点以上など高い能力を持った外国人人材に絞って紹介をするほか、「WEBプロフィール」と呼ばれる独自のフォーマットの履歴書を作成しました。
複数の写真や動画等で人柄や雰囲気も含めた詳細なプロフィールを展開し、企業側と外国人人材のミスマッチが起こりにくい仕組みを作りました。

外国人には宗教やライフスタイルなど日本と異なる優先順位がある

「これからの日本企業は、外国人社員を採用することで成長する」
寺澤 それほど丁寧にマッチングされるのに、報酬は年収に関係なく一律の料金を設定されていますよね。その金額も他社に比べてかなり廉価に感じるのですが、薄利で質の高いサービスを提供できるポイントはどこにあるのですか。

田中 お客様が価格に見合ったバリューがあると認めていないものは、ビジネスとして長続きしません。私は長年モノをつくって販売してきました。モノの値段というのは、価値に見合ったものが付けられています。人材紹介の分野でも、提供しているサービスがどれくらいの価格だったらバリューがあるかということを考えて値付けをしていくべきです。

寺澤 なるほど。業界の慣習にとらわれず、サービスに見合った価格を付けているということなんですね。価格以外の面、例えばマッチングについて何か抱負をお持ちですか。 

田中 企業へ人材を紹介する際に、その人材がどんな働き方を望んでいるか、宗教や価値観、人生における優先順位など、希望するライフスタイルを丁寧にヒアリングした上、企業側に伝え、企業側と外国人人材、相互の理解がきちんとされるようマッチングしていきたいと考えています。
たとえば、イスラム教徒の場合は、自分の宗教を理解し尊重してくれて、お祈りの時間や礼拝の日に休みをもらえるよう配慮してくれる会社で働きたいわけです。中国人なら中国の旧正月の期間は休暇を取得して帰国したい人が多いのです。ところが、日本の履歴書にはそういう希望を書き込む欄がなく、企業側に伝える術がありません。日本の福利厚生制度は日本人に向けてつくられたもので、外国人にはマッチしないものが多くあるのも事実です。国それぞれで文化や価値観の違いがある中、そのミスマッチをなくし、企業のダイバーシティの実現を目指しています。

寺澤 ダイバージェントという社名は、ダイバーシティからきていると思うのですが、日本の会社が多様性を持つことは、今後どういった展開が見られると思いますか。

田中 社名のダイバージェントには、私たちが日本におけるエージェント、つまり代理人になって、外国人の方をもっと日本に呼び込み、日本に多様性、ダイバーシティを持たせたいという思いが込められています。日本企業にとっての「グローバル化」は、企業成長、発展の大きなキーポイントです。今後は多様な人材の活躍促進が企業成長の鍵となっていくと考えています。
また、日本にいる外国人人材だけでなく、海外にも「日本で働きたい」と願う人はたくさんいます。現在オンデーズでは、シンガポール、台湾、タイ、カンボジア、マレーシアの支社があります。各地には現地責任者がおり、自社での採用活動を行っておりますが、その採用活動の中で、「日本で働きたい」と願う外国人人材が多くいることを知りました。
今後は、日本で働くことに興味を持ってくれて、意欲的で優秀な外国人人材も日本に誘引できるように取り組んでいきたいです。

外国人が定着しない理由は日本企業の受け入れ態勢にある

寺澤 多様な組織を作りたくても、外国人は雇ってもすぐ辞めてしまうという声をよく耳にします。貴社は外国人スタッフを定着させるようなノウハウを持っているのですか。

田中 オンデーズも当初は、半年ほどで辞めていってしまう外国人がほとんどでした。
言葉や文化の違いから環境に馴染めず退職、という判断に至ったのだと認識していましたが、次々に外国人雇用を続けていくことで、離職の問題は外国人側ではなく、我々企業側にあったのだということが分かったのです。
当社の場合、外国人スタッフのカタコトの日本語での接客に日本人のお客様からクレームが入り、店舗スタッフは中国人スタッフを接客要員から外してしまっていました。
中国人のお客様が来られた時だけ通訳のように呼び出して接客対応をさせ、中国人のお客様が来ないときは検査・加工などのバックヤード要員。中国人のスタッフからすると、せっかく日本流の接客を学べると思って入社したのに、スキルアップもできないし、つまらないからすぐ辞めてしまう。
すると店舗店長から「やっぱり中国人は続かないですね」と報告が上がってくる。この繰り返しでした。

寺澤 その課題をどう解決したのですか。

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同社が外国人人材の採用とどう向き合ってきたのか、いま経営者に求められているのは何かなど、人事担当者必読の内容となっています。


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