3月になると、複数の企業様で毎年担当する研修があります。それは、OJTリーダー(エルダーやブラザーと呼ぶ会社もあります)と呼ばれる、新入社員の指導やお世話をする社員の皆様の研修です。

 会社によって差はありますが、入社3年目~7年目程度の一般社員が任命されることが多いようです。新入社員は、マネジャーには聞きにくいことも、歳の近いOJTリーダーであれば気兼ねなく相談できます。また、指導役が決まっていることで、新人が放ったらかしにされることもありません。
 最近では多くの企業が取り入れているようです。
  先日、このOJTリーダーの研修で、「自分が新入社員だった頃、困ったこと」というディスカッションを行いました。様々な内容が出されましたが、印象に残ったのが「OJTリーダーと、マネジャーの意見が食い違っており、どちらに従えばよいか迷った」というものです。OJTリーダーは、「課長の言うことは古いから、無視してよい」と言い、課長は「OJTリーダーは仕事が分かっていない。私の方が正しい」と言ってきたそうです。

 これは、チームとして新人の育成方針が定まっていなかったことを示しています。そのため、マネジャーもOJTリーダーも、自分だけの感覚で新人を指導していたようです。自分の指導と感覚が違う人に対しては、「あの人はおかしい」と非難をし合っていたのです。
 これは、人が育たないチームの特徴と言えます。

 まずは、新人が配属される前に、マネジャーとOJTリーダーでじっくり話し合い、育成方針を決めておくべきだったと言えます。例えば、営業部門で「早期に現場感覚を養う育成をする」という方針を立てたのであれば、営業同行を中心とした育成を行ったり、早期に顧客を担当させて実践力を高めるなど、様々なアイデアが出てきます。そのアイデアをベースに、具体的な育成方法までを話し合っておくことが大切です。
 
 新人が実際に配属され、しばらく育成を行うと、その新人の特性が分かってきます。その段階で、今一度マネジャーとOJTリーダーで話し合いを行い、育成方法を修正します。その後も、適宜マネジャーとOJTリーダーの育成ミーティングを実施し、進捗の摺合せを行います。
 
 このようなことを書くと、「それは当然だ」と感じる人も多いと思いますが、実際にマネジャーとOJTリーダーとの話し合いが行われているケースは多くありません。OJTリーダーが育成の状況を報告書にまとめて提出する際に、マネジャーが一筆入れるだけという状況も少なくないのです。

 結果的に、マネジャーとOJTリーダーとの間に、育成に関する意見の対立が生まれたり、時にはOJTリーダーが「マネジャーが何もフォローしてくれない」と不満を持ち、新人育成に力を注がなくなってくることがあります。

 このようなことが、結果として新人のモチベーション低下につながり、早期退職を誘発しているケースもあります。
 マネジャーとOJTリーダーが徹底的に話し合い、心を一つにして育成しているチームは新人を早期戦力化できる強いチームです。
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