組織と個人の「必要なのに足りていないスキル」を明確に可視化する

戦略見直しに対応したスキル育成が十分できているか

人事コンサルティングファームとして、日々いろいろな企業の方々からご要請を受けて仕事をしているが、ここ数年、経営者の方々から伺うことは共通性が高い。ひとつは、部下を育てる、変革をリードする、現場力を高めるといったことができる管理職を育成し直したい、また選抜育成プログラムを導入したい、それも「いますぐに」というご要請だ。もうひとつ、教育体系や役員育成などの「仕組みを作り直したい」というご要請も非常に多い。いずれも現状の人材開発の仕組みがきちんと機能していれば出てこないはずの話で、「いま求められているスキルの育成が十分できていない」という課題認識を、多くの経営者の方々がお持ちなのだと感じている。
「経営計画と連動したスキルマネジメント」
そもそも、人材開発のミッションとは経営計画を実現するために必要な人材を確保し、育成し、的確に配置することであり、ヒューマンリソースフローを最適化することで実現される。つまり、常に適正な(=必要な)能力を持った人々が、適正な(=必要な)数だけ確保され、常に適正な(=期待される)パフォーマンスを上げているようにコントロールするということだ。しかし、現状を見ると、激変環境下の戦略見直しに応じた適時的確なスキル育成ができていない、数年前に作られた階層別教育体系を運用するだけでは基本的なスキルしか育成できていないといった問題がある。加えてOJT偏重の弊害もあるだろう。OJTは重要だが、従来のやり方を継承していく形ならよくても、「これまでと違うやり方やスキルを」という場合、必ずしもふさわしくない部分もある。
 では、どうすればよいのか。まず、必要となるのは、経営計画実現のために必要な組織のスキル要件を特定し、そのスキルと現有人材の持つスキルとのギャップを測定することだ。そして、どういう課題があるのかを明確に可視化できたところで、課題に即した有効性の高い教育施策を企画・実行し、スキルギャップを解消していけばよい。

さまざまな手法でスキルギャップを明らかにする

「経営計画と連動したスキルマネジメント」
スキルギャップを把握する手法には、さまざまなものがある。ひとつは「評価情報分析」だ。例えば、「問題発見力」「工夫力」「顧客指向」といった評価項目についての評価結果を集計分析すると、どこがどう弱いかが見える。部門別に見たり、経年の観点で見たりするのも大変面白い。たとえば、評価の結果を会社全体および部門別で表組みにまとめ、各評価項目の比較的高い評価(4段階評価なら3以上)の合計人数が総人数の60%を超える項目は青く、60%以下の項目は赤く塗って、前年度よりパーセンテージが上がっている場合は上向きの矢印、下がっている場合は下向きの矢印をつける。すると、赤くて下向きの矢印がついている評価項目は、特に「危ない」から育成施策を打たなければといったことがわかる。この評価情報分析は非常に簡単でシンプルなので、やっておられる企業も多いと思うが、ポイントは、現在の経営計画実現のために必要なスキルに即した評価項目を特定したうえで、評価・分析を行うことだ。それにより、いま組織に必要なスキルがどのように足りないのか、現状とのギャップが具体的に見えてくる。
「経営計画と連動したスキルマネジメント」
また、「360度診断」によって管理職のスキルギャップ状況を把握することができる。360度評価は多くの企業で行われているはずだ。いまの評価項目とは別に、現在の経営計画上必要になってくるスキルや行動を項目化して見ていけば、簡単にいろいろなことがわかってくる。360度評価には「評価スキルの低い部下の評点には意味がない」との指摘もあるが、ある上司を10の項目で6段階評価したとき、10項目のなかでどれが高くどれが低いといった相対的な差には意味がある。そこで、各項目についての周囲評価と自己評価の結果を折れ線グラフとして重ね合わせれば、「この項目は本人評価が高いのに周囲評価は低い」といったことがわかる。

「スキルギャップアナリシス」の考え方と方法とは

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