どのような手口によって人格が破壊されていくのか? 一部を紹介しよう。
・徹底的な従属とハラスメント
・「新卒=コスト」「人間としておかしい」と罵倒される
・「改善」という名の人間破壊
・「宗教みたい」な新人教育
・毎日、床で寝る生活
 気持ちの悪い言葉が並んでいる。本書を読んで気付いたが、ブラック企業では正社員として就職しても、「正社員」の地位ではない。入社後も厳しい選抜が続き、シューカツが続くのだ。ブラック企業からすると、大量の新卒学生を採用できるので、その中から忠誠心と体力を持つ優秀な社員が残ればいい。生き残れない正社員は辞めさせればいい。この辞めさせる方法についても本書は詳しい。

 若年正社員の対抗手段についても書かれてある。「自分の努力が足りない」「怒られるのは自分が至らないからだ」と自罰的に考えてはいけない。処遇がおかしいと思ったら、労働法を活用し、証拠(録音やメモ)を集め、労働基準監督署やユニオンに相談することをすすめている。
 ただし、ほとんどの若者は労働法を知らないと思う。本署は、就活指導、キャリア教育が若者を洗脳していると批判しており、「契約書や労働条件のことを聞いてはいけない」と指導するキャリアセンターもあるそうだ。
 また、若者がブラック企業によるマインド・コントロールを受けて「自分がいけない」と考えるのだが、その素地は就活にあると著者は考えている。
自己分析は自らが行うマインド・コントロールであるし、キャリア・カウンセラーにカウンセリングを受けること自体もマインド・コントロールと言える。そしていったんマインド・コントロールを受けた人間は、回路ができあがり、次のマインド・コントロールを受けやすくなる。
 本書の内容は暗いが、実態があるなら直視しなくてはならない。日本における雇用の現在を知るために必読の本だと思う。
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