"第7回 企業の採用活動や担当者に、学生はどんな不満を抱いているのか(2011年10月)"

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント

10月初めに、多くの企業が2012年4月入社予定の新卒採用内定式を実施しました。10月1日が土曜日だったため、1日に実施したところと、月曜日の3日に実施したところに大きく分かれたようです。マスメディアで多くの企業の内定式が取り上げられ、経営トップが出て内定学生にメッセージを贈る様子等が報じられました。企業にとっては入社式前の一大イベントと言えるでしょう。

 ちなみに、なぜ10月1日が内定「解禁日」なのでしょうか。大手企業の多くはこの日までの内定学生を「内々定」学生と呼びます。これは、経団連が「大学卒業予定者・大学院修了予定者等の採用選考に関する企業の倫理憲章」)で 「正式な内定日は 10 月1日とする」 と定めているからで、それ以前は内定ではなく「内々定」となるわけです。
 ご存知の通り、実際の内定は4月からどんどん出ていて、大手企業の多くは5月にはピークを越えており、10月1日の内定式は「もう内定を断ってはいけないよ」というセレモニーとも言えます。ただ、企業側の内定取り消しは法的に「解雇」に当たるとして厳しく制限されていますが、学生の内定辞退は、いかに内定承諾書を提出していたとしても、「職業選択の自由」という観点から、法的に問題視されることはありません。法律は基本的に労働者側を保護するスタンスです。

 さて、昨年の10月1日時点での内定率(2011年度卒)は57.6%でした(文部科学省・厚生労働省「大学等新卒者の就職(内定)状況」より)。最終的に、この内定率は今年4月1日調査時(卒業時)には91.1%となっており、「そんなに高いの? 9割以上の学生は最終的に内定できるの?」と多くの方が思われるでしょう。
 確かに、この数字の調べ方自体に疑問符が付くところですが、それはさておき、昨年の10月1日時点で就職志望者の4割近くがまだ内定を得ていないわけで、今年は恐らくもっと厳しい状況が予想されます。未内定の学生たちには、内定式の様子を見て複雑な思いにとらわれていることでしょう。
 それでも、採用が充足していない中堅・中小企業、外食・流通等の不人気業界、震災の影響で採用がストップしていた企業等が、まだまだこれから採用を続けています。未内定の学生たちには、気持ちを切り替えて就職活動に臨んでもらいたいと思います。

企業の採用活動や担当者に、 学生はどんな不満を抱いているのか

前置きが長くなりました。本題に入りましょう。2013年度新卒採用は12月1日が本格的な採用広報の開始ということで、これまでに比べると採用担当者の間には多少のゆとりが感じられます。もちろん12月1日以降は短期決戦で恐ろしく過密なスケジュールが始まるので、嵐の前の静けさといったところでしょうか。しかし、良い機会なので、じっくりと自社の採用の在り方を考える機会とも言えます。
 そこで今回は、学生からの意見から、企業の採用活動で「改めてほしい」要望の多かったコメントを取り上げたいと思います。企業の採用担当者から「最近の学生は…」と不満コメントを聞くことが多いのですが、一方の学生も企業に対して大いに不満に思っています。学生の本音を聞き、企業側も改めるべきは改めなければいけません。

学生の最大の不満は「選考に落ちた際に連絡がないこと」

圧倒的に多いのは、「選考に落ちた際に連絡がない」ことへの不満です。
・ 不合格だった場合に連絡をしない企業があまりにも多いこと。社会人として、企業としてあまりにもひどい対応だと思う[一橋大学、文系]
・ 選考の結果を連絡しない企業があるが、学生側は「いつまで待てばいいのか」分からず困るため、結果は必ず通知するようにしてほしい[大阪大学、文系)
・ サイレントお祈りをやめてほしい。企業側が大変なことは承知しているが、私たちもその会社のES(エントリーシート)、特に手書きの場合、少なくとも3時間以上かけて書いている。また、そのESを書くまでに、企業研究やセミナーに複数回参加している場合もある。あまりにも失礼ではないのか[関西学院大学、文系)
・ 合否に関わらず必ず連絡してほしい。テンプレートでの不合格でもないよりはまし。連絡もいただけない企業の商品は今後積極的に利用しようとは思えない[豊田工業大学、理系]
・ 落選の場合、連絡なし、という対応。一本メールを打つだけなんだから(それも一括送信)そのくらいやれよと思う[立教大学、文系]
・ 選考結果を合格者のみに通知するのをやめてほしい。新入社員には報告・連絡・相談を徹底して叩き込んでいるくせに矛盾していると思う[関西大学、文系]
・ 連絡する日時のアバウトな指定や、またその指定した日時に連絡をしなかったり、そのまま連絡を途絶えさせるのは社会人としてどうなのかと思った[金沢工業大学、理系]
・ 不採用の連絡を早めにしてほしい。不採用の連絡をしないなんてもってのほか。通過した人への連絡と同時期にお祈りメールもしてもらえれば、学生は次への切り替えがすぐにできる[明治大学、文系]
 就職活動中の学生の間で、「お祈りメール」「サイレント」「サイレントお祈り」といった言葉が頻繁に交わされていることをご存知でしょうか。「お祈りメール」とは、企業が不合格者に対して、「残念ながら不合格です。今後のあなたの実り多い就職活動をお祈りします。」といった内容のメールを出すことです。「また祈られた」と2ちゃんねる等のネットに書き込み学生が多く、「祈られるより、落ちた理由が知りたい」というのが学生の本音です。
 しかし、まだ落ちた結果を知らせてくる方がはるかにましで、結果を知らせないことにほとんどの学生が強い怒りを持っています。これは、学校のレベルに関係なくコメントが圧倒的に多く、大手を含む多くの企業が落ちた人に対して結果を知らせていないことが分かります。
 「サイレント」とは企業から何の音沙汰もない(面接の選考結果に限らず)ことを言い、「サイレントお祈り」は落ちた選考結果が連絡のないことを指します。「社会人として、企業としてあまりにもひどい対応だと思う」という学生の言葉を真摯に受け止めてほしいと思います。

「やる気がない」「無関心」――面接官にも募る不満

次に多いのが、面接官に対する不満です。大手企業の場合、応募者が多いこともあり多数の面接官が必要で、目が行き届かないこともあるでしょうが、ひどい例も目につきます。
・ 始めから興味がないなら、落として欲しい。こちらは、交通費をかけて、時間を割いて行ってるのに、いざ面接が始まったら「無関心」「寝る」「ペンを何も動かさない」などといったことを平気で行う会社があった[一橋大学、文系]
・ 一回遅刻してきた面接官がいた。一次で通過したが社会人にもなって時間が守れない人事がいる会社では働けないし、常識がない企業だと思い辞退した[明治大学、文系]
・ 面接官同士である程度の統一をしてほしい。当たり外れがありすぎる[早稲田大学、文系]
・ 威圧的で人を見下した態度の中高年の面接官が多いこと[立教大学、文系]
・ 面接官を外部委託しているのなら、そのことを伝えてほしい。非常にやりきれない気持ちになった[立命館大学、文系]
・ やる気のない人間を面接官にしないでほしい[東京理科大学、文系]
・ 面接官の対応が、やる気がなかったり等不備を感じることがあったので、仕事なのだからキチンと行ってほしいと感じました[兵庫県立大学、理系]
・ 面接官の対応。明らかに話を聞く気がない対応をされると、こちら側も話す気が失せる[東京工科大学、理系]
・ 面接に関して、話の聴き方が下手くそな人が多いという印象を受けた。大学で臨床心理学を専攻し、カウンセリング等で話の聴き方を学んでいるが、面接官の話の聴き方では学生の本当の姿は浮かび上がらないと感じる[帝京平成大学、文系]
 学生の遅刻に苦言を呈する企業の方は多くいますが、企業の面接官でも少なくないようです。きちんとしている学生ほど、不信感を持つでしょうね。学生は複数の面接官に会うので、当然レベルの差が見えます。「当たり外れがありすぎる」というのは、企業も学生も思っていることなのです。また、面接官の「上から目線」も評判が良くありません。特に年配の方にその傾向が強く見られるようです。採用の現場担当者としては注意しづらいところでしょうが、しっかり認識してもらわないといけないでしょう。
 そして、全体を通して言えるのが、面接官のスキルの問題です。「やる気のない」「話を聞く気がない」「話の聴き方が下手くそ」など、手厳しいコメントが多く見られました。学生から見ると、面接官は面接のプロと最初はイメージされています。しかし実際は素人がたくさんいるわけで、学生を唖然とさせる人がいて、企業イメージが大きく損なわれます。学生は面接次第で企業を最も嫌いになると言われるので、十分注意をしなければなりません。特に震災のあった2012年度新卒採用では、面接官へのトレーニングが大幅に減ったと言われ、余計に不備が目立ったのかもしれません。

採用プロセスが見えにくい。本当に公平に選考されている?

そして、3番目に多いのが「選考の不透明さ」です。
・ 選考過程が不透明な企業が多かったため、情報開示をしてほしいです[一橋大学、文系]
・ どこが評価されてどこがダメなのかを明確にしてもらえるとうれしい。また、求める人物像を明確に示しているところは、受ける方としても受けやすかった[京都大学、文系]
・ 採用プロセスが見えにくい企業が多かった[神戸大学、文系]
・ 選考フローが不透明なのはよく分からないのでやめてほしい[東京大学、文系]
・ 選考フローの透明化に限る。突然連絡を途絶えたりするのはやめてほしい[北海道大学、文系]
・ 選考には関係ありませんといいつつ、絶対関係あるだろうなと思うリクルーター面談やOB・OG懇談会をいくつか経験した。うそはやめてほしい[名古屋大学、文系]
・ 定期的かつ素早い連絡、進捗状況の可視化。きちんと期限を定めて、合否にかかわらずに通知をしてほしい[明治大学、文系]
・ 採用が不透明な企業は選考中の不安が増して辛かったので、面接回数などある程度の情報は開示してほしい[関西学院大学、文系]
・ 特定大学に通う学生への個別説明会実施など、不透明な採用活動は極力控えてほしいと感じた[慶應義塾大学、文系]
・ 採用過程を不透明にしすぎな企業がある。人によって過程が違うというのは理解できるが、どの程度まで違うのか示してくれてもいいと思う[早稲田大学、文系]
・ 不透明な採用活動はやめてほしい。リクルーター制をとるなら、そう宣言すべき[明治大学、文系]
・ 書類で落としたなら、理由を教えていただけないと次に進めないです。書類落ちが日常茶飯事であるのですが、直接話もしないで落とされていると思うと人格を否定された気持ちになるので、せめて話をして雰囲気を見てから決めてほしいです。現実は厳しいですが[日本大学、文系]
 選考の不透明さは、日本の新卒採用全般に関わる問題です。これまでの学校の試験のように、白黒はっきりしない採用選考に対して学生が不透明さを感じることに「学生気分が抜けない」「世の中はそういう不合理なものだ」と言うのは簡単ですが、果たしてそれだけでしょうか。
 認識がすれ違う原因の一つとして、多くの企業が大学をターゲティングしているのに、就職ナビなどでそれを表示しないため、大量の学生が応募してくるので「落とすための採用活動」が多くなってしまっていることがあります。ターゲット大学にはリクルーターやOB・OG懇談会を設定し、対象以外には行わない。しかも、経団連の倫理憲章があるので、大手主要企業は3月にエントリーシートの選考があるまで、合否を出さない。
 私は、企業が大学をターゲティングすること自体何の問題もないと思っていますが、その事実が学生から見て全く見えないため、不要な混乱が生まれていると思います。
 その他、学生の不満が多いものを列挙します。
◇ 説明会の予約ができない(すぐ満席になる)。説明会参加が選考へのステップになっている場合、非常に困る
◇ 倫理憲章で共同宣言している企業が守っていない。会社を信頼できなくなる
◇ 面接日を絶対に変えられないという企業がある。学生の都合を無視している
◇ 交通費を出してくれない。地方学生の場合は特に厳しい。せめて最終面接くらいは出してほしい
◇ 非通知での連絡はやめてほしい。こちらから返信ができないし、電話に出られなかったから選考に落ちるという恐怖心がある
 学生にとっては、就職活動が本格的に経済社会に関わる第一歩です。そこで大多数の学生を失望させたり、不信感を持たせることは避けなければなりません。企業は採用する立場だけではなく、学生から見られていることを強く意識し、信頼される見本にならなければならないのです。

今月の注目データ

[図表]は、「面接官の印象がその企業への志望度に影響を与えるかどうか」を学生に尋ねた結果を示したものです。
 文系では、「非常に影響した」が50%と高く、「影響した」との合計は89%にまで達しています。理系では、「非常に影響した」22%、「影響した」との合計は79%と、文系に比較すると低めですが、それでも約8割が影響しているわけで、かなり高いとみていいでしょう。
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著者プロフィール

ProFuture代表 HR総研所長 寺澤 康介

1986年文化放送ブレーン入社。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役を経て、07年採用プロドットコム株式会社(10年にHRプロ株式会社、15年にProFuture株式会社に社名変更)設立、代表取締役社長に就任。2012年、HR総研所長に就任。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』『経営と人事 対話のすすめ』、編著に『経営を変える、攻めの人事へ』(いずれもProFutureより出版)などがある。

※『採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント』は、WEB労政時報に寄稿した原稿を約2週間遅れで転載しておりますので、内容的に時差が生じる場合があります。ご了承ください。
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