青いワイシャツ、白いワイシャツに表れたIBM幹部の官僚気質

IBMの再建にまつわるエピソードはふんだんにガースナーの著作「巨象は踊る」(Who Says Elephants Can't’ Dance?: How I Tuned Around IBM)に書かれています。最初の役員会に青いワイシャツを着ていったら、他の役員は全員白いワイシャツだったそうです。2回目の役員会に白いワイシャツで出席したら、全員が青いワイシャツを着ていたそうです。つまりIBMの役員には、トップの動きを真似する官僚的な気質が染みついていたわけです。
ガースナーは巨大赤字になった原因を分析し、外部に原因を求める発想が赤字を招いたと判断します。「景気が悪いから仕方ない」と考えれば、変革は生まれません。そこで幹部の意識改革を徹底的に行い、IBMの再生を果たしたのです。
IBMに限らず、多くの欧米企業がこの10数年で変わりました。人事とトップの関係も変わりました。かつての欧米企業で人事はサーバント的な役割を担い、ボードメンバーに人事が入ることはほとんどなかったのです。しかし現在は人事戦略が経営戦略の柱のひとつになっています。GEのCEOを務めたジャック・ウェルチは「わたしの仕事の7割は人事の仕事だった」と回想しています。
かつての日本企業では人事は、経営の中心に密着していました。さて現在の日本人事は? 経営課題に寄り添い、その役割を果たしているのでしょうか?

2012年に登場した「HR(人事)の6つのコンピテンシー」

欧米の人事を見ていて驚くのは、理論やモデルが時代の変化の中で検証され、アップデートされていることです。たとえば米ディビッド・ウルリッチ教授は1990年代末に「HR(人事)の4つの役割」を「戦略のパートナー」「変革のエージェント」「管理のエキスパート」「従業員のチャンピオン」と定義しました。
そして「2012 Human Resource Competency Study」において「HR(人事)の6つのコンピテンシー」が発表されたのです。6つのコンピテンシーとは「人事の戦略者」、「信頼される実践者」、「組織力の構築者」、「変革のチャンピオン」、「人事の変革者、統合者」、「テクノロジーの提案者」。4つの役割よりも人事の主体性や行動を求め、変革のエージェントではなくチャンピオンとしています。またITへの言及も行われています。
欧米企業の人事はこの水準で議論がなされ、実践されているのです。わが国の人事の実態はこの水準に追い付いているのでしょうか? HR総研の調査データを元に確認してみたいと思います。

人事自身が変わるべきだと思っている

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