20年や30年で中国は日本に追いつけない

 本日は21世紀の企業と人材戦略について、中国大使時代の経験を踏まえて話したいと思います。
 まずこの数十年間で世界と企業はどのような変化に直面し、なにか変わったのでしょうか。業界によって捉え方は少し違うのでしょうが、わたしはIT革命と中国の台頭だと思います。この2つが21世紀の企業経営と、20世紀後半の企業経営を截然と分けているのです。
実証的に検証してみましょう。日-中、日-米、中-米の貿易額が大きく変化しています。アメリカの貿易赤字は、1990年ではその43%が日本との貿易によるものでした。そして2010年になっても貿易赤字は続いていますが、その43%が中国との貿易によるものへと変わりました。
 貿易総額で言えば1990年にアメリカの中国との貿易額は1%に過ぎかなったのですが、2010年には16%に達しています。
 その一方でアメリカの日本との貿易額は1990年に16%を占めていましたが、20年後の2010年に6%に低下しています。
 中国と日本との貿易額は、日中共同宣言によって国交が正常化した1972年に10億ドルに過ぎなかったのですが、その後の40年間で340倍の3400億ドルにまで膨張しました。
 中国の存在感は大きく、アメリカでG2と言う時は、アメリカと中国を指し、G3という時は+EUを指します。日本はどこにいるのかというとカヤの外です。
 中国はいまや世界第2位の経済大国なのです。しかしわたしは、足し算の経済だけでなく、割り算の経済もあると考えます。現在の中国が日本に追い抜いたのは足し算の経済の話に過ぎません。
 あと20年や30年で中国が日本の持つ総合的な力に追い付くことはできないと思います。その理由は中国が自己中心的な文化の国であり、グローバルな基準から逸脱する行動を取るからです。わたしが中国大使の時に中国のメディアにこの指摘をしましたが、中国メディアもわたしの指摘に納得しているはずです。

21世紀の世界経済を牽引する2つの産業革命

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