「就活ハラスメント」とは、インターンシップや就職活動をしている学生等に対して、パワーハラスメント(以下、パワハラ)やセクシャルハラスメント(以下、セクハラ)などのハラスメントを行う行為を指します。ひとたび就活ハラスメントが起きてしまうと、採用担当者だけの責任だけに留まらず、企業のイメージダウンに直結し、企業ブランドにダメージを負うリスクが高くなります。企業としても、自社の従業員に対して啓発を行い、就活ハラスメントを防止する対策を講じることは必須となっていますが、まずは就活ハラスメントがどのように起きているのかを知るところから始めましょう。
「就活ハラスメント」は企業のイメージダウンに。厚生労働省調査をもとに防止するためのポイントを整理

「就活ハラスメント」はどこで起こっているのか

厚生労働省の調査によると、「就活ハラスメント」が起こった場面は「インターンシップに参加した時」が34.1%、「企業説明会やセミナーに参加したとき」が27.8%となっており、ハラスメントを受けた相手は「インターンシップで知り合った従業員」が32.9%、「採用面接担当者」が25.5%という結果が出ています。(厚生労働省:令和2年度職場のハラスメントに関する実態調査報告書より)

企業側の担当者は、就職活動をしている学生等から見ると「採用する側の人物」であり、優越的な立場であることから、嫌がらせを受けても抵抗しにくいものです。このことは、企業内で起きる「上司による部下へのパワハラ」に置き換えてイメージしてみるとわかりやすいでしょう。企業側の担当者にしても、自分が学生等に対してハラスメントを行なっているという自覚がないまま「就活ハラスメント」が成立してしまう、ということも十分に考えられます。

就活ハラスメントが起きてしまうと、企業担当者を雇用している企業自体が損害賠償責任を問われる可能性があるという点に注意しましょう。就活ハラスメントを起こさせないために、企業は従業員に対して教育・啓発を行う必要があります。

では、具体的にどのようなことをすればよいのでしょうか。

「就活ハラスメント」を防止するために企業が行うべきこととは?

まず、従業員に対して「就活ハラスメントを禁止する」という方針を明らかにしましょう。これは就活ハラスメントだけに限ったことではなく、パワハラやセクハラなどあらゆるハラスメントを含みます。「ハラスメントの発生を許さない」という姿勢を表明し、すべての従業員に対してはっきりと宣言をすることで、企業が本気でハラスメント防止に取り組んでいることを従業員に理解してもらうことが必要です。同時に、ハラスメントを行なった者に対する懲戒処分の内容を就業規則で規定し、これも従業員に周知をするようにしましょう。

次に、具体的にどのような行為がハラスメントにあたるのかを従業員に知ってもらうための教育・啓発を行います。たとえば、研修を継続的に実施したり、社内報などで繰り返しハラスメント防止に関する周知を行ったりすることが考えられます。ハラスメント防止について、従業員に「繰り返し」アプローチをすることがポイントです。一度だけの研修等で満足するのではなく、繰り返し従業員にアピールをすることが、従業員の意識改革につながりますし、企業の本気度も伝わるはずです。

また「就活ハラスメントの相談窓口」を設置し、それを就活生にも案内をします。そうすることで、対外的にもハラスメント防止に努めている企業であることをアピールでき、就活生も安心して応募できるようになります。就活ハラスメントの相談窓口については、すでに「労働施策総合推進法」や「男女雇用機会均等法」で、パワハラやセクハラ等に対する相談窓口を設置することが義務付けられているので、同じ窓口にしてもよいでしょう。

万が一、就活ハラスメントに関する相談を受けた場合は、速やかに事実確認の聴き取り調査を行なって事実確認を行うことが、トラブルをこれ以上広げないために重要です。その結果、ハラスメント行為が事実であると確認したときは、被害を受けた方に対して謝罪と救済を行うと同時に、行為者に対して就業規則の懲戒規定に基づいた処分を行うことになります。

残念ながらそこまで事態が進んでしまった場合でも、それで終わりにするのではなく、再発防止策とハラスメント防止の周知をあらためて従業員に対して行うところまでが、企業の取り組みとなります。このような場合を想定した上で、自社としてどのように取り組んでいくのかを検討してみてはいかがでしょうか。

就業規則の整備やハラスメント防止の周知など、どのように取り組めばよいのか分からない場合は、社会保険労務士にご相談されることをお勧めいたします。


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