2021年3月から、「キャリア形成」「ジョブ型雇用制度」などを中心にHR関係の連載を続けてきましたが、都合により3ヵ月ほど休載していました。今回からまた月に1回のペースで連載していきます。しばらく扱うテーマは「イノベーションとHR」です。「イノベーション」という用語はとかく、人によって解釈が違うのですが、この連載における定義は次回の記事で記述します。今のところは漠然と「新規事業」に関連する言葉で理解しておいてください。
NTT東日本の「イノベーション人財育成」が、ターニングポイントになりそうな理由とは

変わりつつある日本のイノベーション人財育成

「失われた30年」の大きな原因の一つは「イノベーション」の欠如ではないか。このような考えが一般的になってきたように思います。会社組織としては、失われた「イノベーションマインド」をどう変えていくのか。特に顕著なのは、テクノロジー関連であり、昨今「DX」や「IoT」を活用して、日本企業が喫緊の課題として取り組んでいる所です。

日本企業におけるイノベーションの遅れは、米中に比べての投資金額の劣後、その背後にあるサラリーマン経営者のリスクを嫌う経営者マインドなど、企業の組織面、ガバナンス面での問題点として散々述べられるようになりました。

しかしながら、HRの面、つまりイノベーションを提言・企画、あるいは実行する「イノベーション人財の確保、育成の不調」については、組織面に比べ、あまり語られてきていないように思います。

VUCAの時代では、日本の産業界も徐々に変化が出てきていると感じています。最近驚いたのは、「NTTショック」とも呼べる新規事業の人材育成に関するニュースです(※)。

日本経済新聞2022年2月19日付「NTT東日本、新規事業に社員の半数3万人」

内容としては、「NTT東日本は、2025年度までに固定電話や光回線など、全従業員の半数にあたる既存事業4万人内、半分の2万人を、自治体向けのIT(情報技術)人材の派遣やドローン(小型無人機)といった新規事業に移す」ということです。

この記事を見て感じる驚きは、3つです。

(1)「まだ固定電話や光回線」関係で今も4万人の人員がいることに驚き
(2)「既存事業」から「新規事業」に配置転換する人数が1万人に上る規模感に驚き
(3)配置転換の時期が、「2025年度までに」という、最長3年という時間にも若干の驚き


私の感覚では、日本の大企業において、10年後から現在を振り返ったときに「あのときのNTTのニュースがターニングポイントだったな」という可能性のある大きなニュースだと思うのです(「NTTショック」という造語は私が勝手に命名したものです)。

ターニングポイントと書いた理由は、次の2つです。

・大企業がいよいよ選択と集中に注力しだした
・大企業が、「イノベーション人財」について、会社を挙げて育成・確保していくことになった


そもそも日本の大企業は、「失われた30年間」にイノベーションが上手くやれず、当然その人財も育ってきていません。ましてや、その育成方法についても今後知見を積上げていかなければならないと思います。

私自身、44年間の社会人生活、10回の転職というこれまでのビジネスライフにおいて、経営改革と表裏一体の関係にあるイノベーション関連の業務については、何十年もの実際の業務経験の中で、多くは辛酸を舐めました。ほんの少しだけ成功し、そうしたプロセスの中でイノベーターの端くれとして成長し、組織運営について考え、人財育成の方法についても頭を悩ませてきました。

HR、経営企画の方で、現在イノベーション人財の育成・確保にお悩みの方、そして、イノベーション人財の育成・確保が必要になるであろうと推測されている方などは、ぜひご期待下さい。

なお、今回のシリーズでは、新たな試みとして、読者の方々からの質問・意見を連載中に受付ける仕組みを設け、その内容、私とのやり取りを連載の内容に反映させながら、より読者のニーズに沿った内容にしていきたいと思っています。
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