多摩大学大学院の品川塾特別講義「イノベーターのためのセルフマネジメント」(協力:ProFuture株式会社、株式会社富士通ラーニングメディアなど)は「イノベーターシップを発揮する土台としての『心』と『体』を整える方法」をテーマに全4回にわたり行われている。第3回目は、精神科医であり禅僧でもある川野泰周氏が講師を務め、Googleをはじめとする世界的企業だけでなく、富士通や日産自動車、伊藤忠商事、DeNAといった国内の大手企業が研修などで取り入れていることで知られる「マインドフルネス」について、医学的・仏教的な知見から、その効果や実践方法などを解説した。
冒頭、多摩大学大学院 教授・学長特別補佐の徳岡 晃一郎氏が挨拶。「イノベーションを起こすのは簡単なことではありません。難局に対面したり、本当に実現したいことなのかと葛藤したりする場面も少なくないはずです。そのような時に重要なのは、心の持ちよう、精神性のあり方です。マインドフルネスは心を整える手法として、世界的企業などにとても注目されています。本日は、マインドフルネスの第一人者として知られる川野さんの話をリラックスして楽しみながら聞いてください」と述べた。

マインドフルネスの効果には科学的なエビデンスがある

本講義で川野氏は、まずマインドフルネスの概要や特徴を説明した。川野氏によれば、マインドフルネスは生き方のスタンスであり、根底にはセルフ・コンパッション、つまり自分自身へ慈しみや思いやりの心を向ける考えが流れているという。「瞑想を指すことだと解釈されることも多いのですが、瞑想をして手に入れることのできる、人生に対する態度や姿勢のことを言います。マインドフルネスと、マインドフルネスを実現するためのマインドフルネス瞑想は区別したほうがいいでしょう」と解説。また、日本では瞑想と洗脳が混同されることもあるが、自分の体験や感覚と向き合う瞑想と、他者の考えや教えを無理やり正しいと教え込まされる洗脳は、まったくの別物であると強調した。

近年、マインドフルネスは医学や脳科学(神経科学)などの分野で、精神や身体に与える影響や効果の研究が盛んに行われている。川野氏によれば、精神医学の世界では15年以上前では、カウンセリングは別として、薬を使わない治療は補助的なものであって、その効果に関するエビデンスも限られたものであった。しかし、「この10年ほどで、高いレベルの研究のもと薬を使わない心理療法が、薬物療法と並んで心の治療に効果的であることが証明されてきました。つまり、効果があることについてエビデンスが示されたのです。エビデンスがあるということは、基本的には同じ方法で誰が指導しても同じような効果が得られるということを意味します。マインドフルネスはそうしたものの一つです」と語った。

マインドフルネスは仏教者だけのものではない

マインドフルネスの効用の一つとして、マインドフルネスを実践すると、収入の多寡に関わらず幸福を感じやすい精神状態になることがデータをもって示された。川野氏は「マインドフルネスは、物質的なものに左右されず、個人が主体的に幸せを感じやすくする機能を持っています。その意味で、幸せに生きるための練習とも言われています」と伝えた。

さらに「マインドフルネスの背景には仏教的な知恵があります。仏教の知恵は2000年以上も前から綿々と積み重ねられ、現代まで伝えられてきました。これまでは単に精神性として理解されることも多かったのですが、時代が進み、ついに仏教の知恵が科学的なエビデンスで証明されるようになったと言い換えることができるかもしれません。しかし、マインドフルネスは禅や仏教に携わる人だけのものではないのです。心の悩みを持つ人のための治療法の一つとして、また、自分自身が健やかに生きながら高いパフォーマンスを発揮して社会に還元する仕事をしたいと考えているビジネスパーソンにも非常に有効です。私は禅が生活のレベルにまで浸透している日本で、『禅』『医療』『ビジネス』の三位一体のマインドフルネスを促進していきたいと思っています」と熱意を語った。

次のブロックからは川野氏の講義の内容をダイジェストで紹介する。

今ここに意識を集中させる