◆日本人としてのアイデンティティーを持つグローバル人材を育成
「これまでの日本には存在しないグローバル・スタンダードの大学を創る」という決意を持って秋田の地に開学した本学は、今年3月、5回目の卒業生を送り出した。本学が育成を目指すグローバル人材像には特色が二つある。
「国際教養大学の人材育成方針と最新就職事情」これまでの日本の大学とはどこが違うのか
一つはグローバルな視点を持ち、国際社会でリーダーシップを発揮できる人材であり、もう一つは日本人としてのアイデンティティーを持ち、日本人が持つ忍耐力、協調性、勤勉性、道徳心などの長所を生かして活躍できる人材だ。
 こうした人材を育成するため、本学では学生に1年間の留学を義務付け、また、すべての授業を英語で行っている。本学の学生のうち海外帰国子女は10%に満たない。入学後はすべての学生に英語集中プログラムを課し、TOEFLE500点を超えないと基盤教育(一般教養)には進めない。このプログラムを終えるまで、平均すると8カ月かかっている。つまり、本学では英語集中プログラムと通常の大学のカリキュラムを合わせた4年と8カ月を4年に圧縮して教育を行っており、4年で本学を卒業して社会に出ていく学生は約半数である。
 また、新入生は全員、入学から1年間の寮生活(3~4人部屋)が必須だ。日本人だけでなく世界各国からの留学生たちと共同生活を送ることが、またとない国際教養教育の機会になっている。

◆本学の学生は、マスコミでは報道されない部分の評価も高い

「国際教養大学の人材育成方針と最新就職事情」これまでの日本の大学とはどこが違うのか
本学の就職希望者の就職率は、5年間、ほぼ100%を維持している。当初は企業に知られておらず、苦労したが、現在では学内企業説明会実施企業数も増えてきた。企業の採用担当者の中に「内定は出せなかったが、非常にいい学生がいたから一度学校を見学したい」と言ってくださる方や、「秋田に面白い学校がある」と他社に紹介してくださる方がおり、口コミで知名度が高まってきて状況が好転した。これには大変感謝している。
 秋田の大学だから、秋田や東北での就職希望者が多いのだろうと思われがちだが、実際は違う。本学への入学者は、現在、東北と北海道の出身者が合わせて3割に過ぎず、関東の出身者の方が多くなっているためだ。就職先の業界はメーカーが多い。これは、海外の留学先で世界の中の日本を考えたとき、多くの学生が「日本人として一番誇れるのは日本のメーカーが作る製品の高品質と安全性だ」と強く感じることが大きな理由だ。
 また、本学はグローバル人材の育成を目指す大学だが、英語を話せる人や留学経験のある人がグローバル人材かのように思われる風潮には疑問を感じる。私たちは、グローバルに仕事をするとは、海外を視野に入れて仕事をすることだと学生に話している。海外出張や駐在ができるか、英語を使って仕事ができるかといったことではなく、日本にいても海外を視野に入れて仕事ができる人材をグローバル人材と呼ぶのだろうと考える。
 企業から見た本学の学生の良さは何だろうか。今年、本学が企業説明会参加企業を対象に実施したアンケート調査結果を紹介したい。「本学学生に期待する点」は、初参加企業では1位が留学経験、2位が海外志向、3位が語学力だが、2回以上参加企業では1位が素直さ、2位が海外志向、3位が誠実さだ。マスコミでは報道されない、本学の学生の人柄の部分が評価されていることはありがたい。多くの企業の採用担当者の方々に、ぜひ本学の学生に一度会ってみていただければと思う。
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