基調講演&トークセッション「激変の時代、人事のミッションとプロとして求められるもの 」

HRサミット2012講演レポート

基調講演 
HRプロ代表・HR総合調査研究所所長 寺澤 康介
トークセッション パネラー
ASTDグローバルネットワーク・ジャパン副会長 株式会社ヒューマンバリュー代表取締役 高間 邦男氏
日本人材マネジメント協会副代表幹事 ダノンジャパン株式会社シニアHRマネジャー 古川 明日香氏
住友スリーエム株式会社 ビジネスパートナー人事部長 水上 雅人氏
HRプロ代表・HR総合調査研究所所長 寺澤 康介
モデレーター
東洋経済HRオンライン編集長 田宮 寛之氏

◆基調講演
激変する世界、激変する日本。会場アンケートで85%が「人事は変わる」


トークセッションに先立ち、基調講演として問題提起を行ったのはHR総合調査研究所の寺澤所長。寺澤所長の基本認識は、「世界と日本が激変する」。いろんな変化が起こる。
 2050年に世界人口は93億人に激増するのに対し、日本の人口は9700万人に激減する。日本経済は衰退し、GDPは中国・米国の6分の1、インドの3分の1以下になる。
日本のHRは差し迫った課題も抱えている。高齢者雇用、女性活用・ダイバシティ、グローバル人材、正規・非正規雇用、メンタルヘルス。
 これらのHRの現状を解説した上で寺澤所長は、会場の人事関係者に対し、簡易入力端末を用いたアンケートを実施。1つ目の質問は「人事は変わる」と思っているか? この質問に対し、「大きく変わる」は85%、「これまでと同じ」が7%、「どちらとも言えない」が7%だった。ほとんどの人事関係者が変わらなくてはならないと考えている。
 続いて投げかけられた質問は「日本はガラパゴス人事?」というもの。世界の潮流とはかけ離れているか、という質問だ。「そう思う」は48%、「そう思わない」は26%、「どちらとも言えない」が26%だった。

◆トークセッション 世界から見ると特殊な日本の人事

モデレーターを務める東洋経済HRオンライン編集長の田宮氏は、日本の人事は「遅れている」、「世界の潮流とかけ離れ、ガラパゴス化されている」と批判されることが多いが、数十年の長期にわたってうまくやってきた歴史もあるとした上で、日本の人事の特殊性をパネラーに問うた。
 この問題提起に対し、日本企業に務めた後にエリクソンで人事を経験し、住友スリーエムで人事部長を務めている水上氏は、「少しユニークで特殊であることは確か。遅れているかどうかは言えない」と回答した。「特殊」の意味は、欧米企業では人のマネジメントに責任を持つのはラインマネジャーだが、日本企業では人事部がかなり多くの責任を担うことを指している。
 アメリカの金融機関勤務後に経営コンサルを経験し、現在はダノンジャパンのシニアHRマネジャーを務める古川氏も、水上氏の意見に同意する。アメリカ企業の人事は、ほとんどマネジメントにタッチせず、古川氏が人事と接触したのは入社時と退職時だけだった。
 ASTDグローバルネットワーク・ジャパンの副会長を務める高間氏は、欧米の人事と日本の人事の違いについて「日本の人事はプロパー社員のケースが多く、秩序を重視する。欧米企業の人事は外部から入社することが多く、自社を客観的に見て、組織全体のパフォーマンスを上げることをミッションとしている」と違いを説明した。
 寺澤所長は、多くの人事と会ってきた経験から、「日本の人事はいい人が多い。自分のことより人のことを親身になって心配する。それに対し、外資の人事は、職務に対するプロ意識が強い」と話す。そして「変化が起き、混乱した時、外資は議論し、メソッドを作って変化に対応しようとする。しかし日本企業は変化が起こると立ち止まってしまい、うまく行かないように見える」と日本企業の課題を指摘した。

◆スキル重視からモチベーション重視へ

社会が激変し、企業が変化に対応するために日本の人事は変わらなくてはならない。しかし、どの方向に向かえばいいのか。この問題に答えたのは高間氏だ。
 「これまでの人事は個人のスキルにフォーカスし、研修、資格制度、人事評価などで行動を高める施策を重視してきた。しかし変化が起こると、スキルは通用しなくなり、人事施策は変化する。モチベーションを高め、組織を活性化する方向だ。経営ビジョンの共有、自由さのある環境という方向に向いていく」。
 外資系企業と日本企業の立ち位置の違いに言及したのは水上氏だ。3Mの本社は米ミネソタ州セントポールにあり、本社人事がグローバル人事戦略を練っている。住友3Mはそのグローバル戦略を日本で実行する現地出先機関だ。
 水上氏は日本企業もグローバル人事に携わらざるを得ないと言う。国内市場が縮小し続ける将来を見れば、成長市場に進出せざるを得ないからだ。そして人事自身が変わらなくてはならない。

◆人事自身が研修を受け、自らが変わる

人事は社員を研修するが、自分たちが研修を受けることは日本企業ではまれだろう。外資系企業ではそうではない。
 古川氏は次のように語る。「ダノンでは、人事の課題としてオーガニゼーションデベロップメントを立てており、実現するために4つのミッションを規定している。4つのなかで最も重要なのはトランスフォーメーション(変容)リーダーだ。そのために人事向けのプログラムを多数実行している。他社事例も研究するし、世界の人事が集まる国際的なカンファレンスに派遣してプラクティスを集める。海外に1〜2年派遣して勉強させることもある」。
 水上氏も3Mの取り組みを語る。「人事に必要な能力をサーベイし、開発してアセスメントすることはアジアパシフィック地域の3Mで実行している。ただ日本企業と3Mの視点は違う。日本企業の人事は専門職指向が強い。エンゲージメントなどの人事用語を使う。確かに労務などの専門知識は外資でも必要だが、欧米では人事の言葉ではなく、ビジネスの言葉を使い、ビジネスを前に進め成功させることを目標にしている」。

◆人事のグローバルスタンダードを知らないと、素人と思われる

高間氏はグローバル人事を論じる。「人材開発のフレームワークは、ASTDがグローバルスタンダードになっている。研修の導入でもロジカルに詰めていく。日本ではコーチングが流行っているから次の研修に使おうというような決め方をするが、グローバルスタンダードでは通用しない。またASTDのフレームワークを知らないと、世界では素人と思われる」。
 トークセッションの終盤に、興味深い言葉を紹介したのは古川氏だ。「いま人材マネジメント協会では『HR Competency』という本を邦訳している。その中に「business ally」という言葉がキーコンセプトとして使われている。「ally」は協力者、味方、盟友という意味だ。『HR Competency』は、これまで人事の役割は、経営をサポートするビジネスパートナーだったが、古いと断じている。人事は経営を実現するビジネスパーソンだと主張している」。
 トークセッションを締めくくったのは寺澤所長。グローバル化にもさまざまな方法がある。インドと中国に進出した2つの日本企業の成功事例を紹介し、グローバル施策が1つに収斂するものではないことを強調した。
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HRプロ 事務局 セミナーレポート

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