◆日本人をグローバル化させることで精一杯の日本企業

 日本企業がグローバル経営を進めるなら、今後は「日本人以外の人材」が活躍する場面が増えていくし、そうならざるを得ない。ところが、平均的な日本企業は、日本人をグローバル化させることに忙しく、日本人以外の人材の活用まで手が回っていない。特に、海外現地法人のヘッドやビジネスラインのヘッドがどの程度日本人以外の人材にシフトしているかというと、まだまだだ。
「グローバル経営の鍵はダイバーシティ・マネジメント」
リーダーシップ育成研修の対象者にしても、圧倒的に日本人が多いのではないか。リーダー育成には時間がかかる。つまり、少なくとも5年後ぐらいはまだ日本人経営をやっているということだ。しかし、これではグローバルに戦うために必要な人材の数が足りなくなる可能性が高い。
また、グローバル化した組織環境下でリーダーとして機能発揮できる日本の人材は、圧倒的に数が足りないのが現実だ。日本では素晴らしいリーダーでも、海外に出ると環境が違い、適応できない例が目立つ。「誰かが嫌な顔をしそうなことはできるだけ言いたくない」「誰かが主張することはできるだけ尊重したい」「性悪説に立った契約・交渉事は気が進まない」など、いくつもの壁にぶつかってしまう。本人のせいではなく、日本の社会環境の要因が大きいのだが、グローバルに戦うと決めた以上、こうした壁を乗り越えなければならない。

◆ダイバーシティ=多様性を組織の成果向上に結び付けるには

「グローバル経営の鍵はダイバーシティ・マネジメント」
日本企業が今後も成長を目指す以上、グローバル化は避けられない。グローバル化するとは、「日本とそれ以外の国」ではなく「日本もグローブの一部」という視点を持つことだ。つまり、ダイバーシティ=多様性はもともとグローバル化の中に織り込まれている。性別はもとより言語、国籍、文化、考え方、職業観など、あらゆる面で高い多様性を内包し、今まで以上にパフォーマンスを上げて行くことこそ「グローバル経営」の命題だ。
 だが、現状はどうか。「女性活用」はダイバーシティの全体課題の一部にすぎないが、全体の男女比の面は進んだとはいえ、組織上層部では女性はまだ非常に少ない。構造変化には至らないままトーンが落ちている印象がある。「女性活用」さえ周回遅れの企業にグローバル経営は難しい。
 グローバル経営においてダイバーシティ=多様性が効果を生み出すには、いくつかの段階がある。最初は「Profile Diversity(属性面の多様化)」だが、これは多様性自体が持つ力を引き出すための土台。ここから「Thought Diversity(個々人の思考内容の多様性の拡充)」、「Opinion Diversity(表明される意見・見解の多様性の拡充)」へ多様性の効果連鎖が起こり、知のシナジーやイノベーションが生まれると、初めて組織・集団としての成果向上が実現される。日本はまだ属性面の多様化にとどまっている段階だが、せっかく多様な人材を集めても、衝突を避け、オピニオンが出にくいという日本人特有のカルチャーがあり、多様性が効果につながりにくい問題が大きい。
今後、ダイバーシティが属性面で実現しても、組織の中で「声が出ない」限り、効果は感じられないままだろう。ここを考えることが実は非常に重要だ。第一歩として始めるべきなのは、日本国内に今ある組織を「多様な属性とオピニオンに満ちた組織」にすること、その組織をいかに運営し、多様性を生かすかをリーダーに経験させることだと考える。
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