第91回 東洋経済との「新卒採用に関する共同調査」速報!

採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント

ProFuture代表の寺澤です。
10月9日、経団連の中西宏明会長は、会長・副会長会議での決定事項として「採用選考に関する指針の廃止(就活ルールの廃止)」を発表しました。9月5日の発表は中西会長の個人的見解でしたが、今回は経団連としての正式な決定事項としての発表となります。経団連の決定を受け、政府は文部科学省や厚生労働省などの関係省庁連絡会議を設けて、今月15日に初会合を開催し、政府主導によるルール作りをしていくことになります。連絡会議には、経団連と、全国の大学・短大等で組織する「就職問題懇談会」(座長:埼玉大学・山口宏樹学長)がオブザーバーとして参加するようです。就職問題懇談会は、経団連の発表を受けて、同日に「学生に対する影響を抑えるためにも周知期間が必要であり、2021年の卒業予定者については、不安を解消するためにも現行のルールを維持することを求める」との声明を発表しており、最終決着にはまだ時間がかかりそうな様相です。
 今回の発表を前に、HR総研では東洋経済新報社『週刊東洋経済』編集部と共同で、企業の人事担当者を対象に「新卒採用に関する緊急アンケート調査」を実施しました(調査期間:9月19日〜10月2日)。詳細は、10月22日発売の『週刊東洋経済』の特集を待っていただく必要がありますが、その一部を速報としてご紹介しましょう。
(※2018年10月10日時点)

企業の意見も「賛成」と「反対」が真っ二つ

まず、「就活ルール廃止」に関する賛否を聞いたところ、全体では「賛成」が28%、「反対」が29%、「どちらとも言えない」が42%となり、「賛成」と「反対」が拮抗する形になりました[図表1]。「どちらとも言えない」を選択肢に含めず、「賛成」「反対」の二択だけでの設問にしたほうがよかったかと反省している次第です。
企業規模別に見てみると、大企業では「賛成」21%、「反対」24%、「どちらとも言えない」55%と「反対」がやや上回っていますが、それよりも「どちらとも言えない」とする企業の多さに注目しています。前回の本稿では、弊社主催の勉強会に参加した大企業の人事役員・部長に聞いた結果を紹介しましたが、就職/採用活動の時期だけの問題ではなく、新卒/キャリア採用の在り方の問題、ひいては各社の人材戦略をどうするかという根源的な問題に立ち返って考える必要があり、現時点でまだ考えがまとまっていない企業が多いということです。
 中堅企業では、「賛成」23%に対して「反対」39%と、「反対」が多くなっています。一方、中小企業はというと「賛成」38%に対して「反対」27%と、こちらは「賛成」が多くなっています。就活ルールが廃止になれば、大企業の採用活動時期がバラバラとなり、中堅・中小企業からすれば、いつから採用活動を始めていいのかわからない、あるいは通年採用を実施する大企業が増えてくると、いつまでたっても中小企業に学生の目が向かないという事態も想定でき、圧倒的に「反対」派が多くなるのではと予想していましたが、結果は見事に裏切られました。

自社の採用活動よりも現状を追認する中小企業

「賛成」派、「反対」派のそれぞれの理由を少し見てみましょう。

■賛成
・横並びのルールの中で人材を獲得すること自体、企業の、ひいては日本の競争力を向上させるものなのかどうか(1001名以上、サービス)
・グローバル時代なので、世界スタンダードにすべき(1001名以上、メーカー)
・入社後の離職率も年々高くなってきているため、会社とのマッチングをみてインターンシップなどを通じて本当に必要な人を採用していくほうが合理的だと考える(1001名以上、メーカー)
・就職活動を早期に行うような意識の高い行動力のある学生は、学業もしっかりやっている傾向があり、学業の妨げになっているようには思えない(1001名以上、情報・通信)
・就職活動は、基本的には学生と個々の企業の問題であり、経済団体や学校法人が関わる問題ではない(301〜1000名、サービス)
・通年採用とすることで、企業の囲い込み採用や、過度な採用活動は自粛していくと考えている(301〜1000名、メーカー)
・自由競争社会において、ルールで縛っていたこと自体が問題だった(301〜1000名、商社・流通)
・現状では、結局遵守されておらず、活動が長期化し学生を惑わすことになってしまっている(301〜1000名、マスコミ・コンサル)
・青田買いを助長するような就活ルールは廃止したほうがよい。インターンシップを充実させて学生と企業との双方にメリットがある仕組みづくりに力を入れてほしい(300名以下、サービス)
・ルール廃止により、各企業から自社の採用スケジュールや進捗状況など具体的に学生へ伝えることができるようになるのではないかと思う(300名以下、サービス)
・経団連に加盟している会社と非加盟会社との不公平感の払拭(300名以下、サービス)
・実態として、大企業、中小企業、零細企業、外資企業などバラバラに採用活動を行っているため、ルールに必要性を感じない(300名以下、メーカー)
・新卒一括採用を基準にした採用慣習を変えてゆくために、重要なトリガーになる(300名以下、メーカー)
・中西会長の発言にもあったが、経団連がルールを決めていること自体がおかしい。グローバルな枠組みの中で、日本独自の新卒一括採用は、時代にアンマッチである(300名以下、情報・通信)
・自由に就職活動を行い、就職先を決められるほうが効率的であり、企業と学生双方にとってミスマッチが起きにくい環境がつくられていくと考えます(300名以下、情報・通信)
・就職活動と学業は別であり、一緒に考えるのはおかしい。勉強に影響があると言うのなら、就職活動を夏季休暇や冬期休暇や土日に行うようにすれば問題がない(300名以下、商社・流通)
・数年間は学生も大学も企業も混乱はするだろうが、遅かれ早かれいずれは廃止になると思っている(300名以下、不動産)

■反対
・学生や中小企業を含めた全体で見ると、ルールによる一定の「時期感」は必要(1001名以上、メーカー)
・@学生側への影響(就職活動の早期化・長期化、学業に専念しづらくなる懸念)、A企業負担への影響(活動長期化によるリクルーターなどの採用活動に従事する社員への負担増加)があり、これらをクリアするためにも一定のルールが必要と考えます(1001名以上、メーカー)
・指針も目安もない状況だと大学側、企業側ともに混乱が生じる(1001名以上、メーカー)
・採用活動の極端な早期化が学業に影響を与えることがないよう、一定のルールはあったほうがよいと思われる。ただし、経団連がルールを作る必要はない(1001名以上、建設)
・就職活動が長期化するため、採用コストがかかる(301〜1000名、サービス)
・確かにルールを守らない会社がある中で遵守している会社はハンディキャップを背負っているとは思うが、だからといって無制限になることの学生への影響をもっと考慮すべきと考える(301〜1000名、サービス)
・ベンチャーや外資を受けるような意識の高い学生なら何のデメリットもないが、全員がそこまで意識が高いわけではなく、一定のルールは絶対に必要。新卒一括採用は若年層の失業者低減には大きく寄与していたはず(301〜1000名、メーカー)
・ルールを廃止し、日本特有の新卒採用のスケジュールを撤廃するにしても、段階を踏むべきだと思う(301〜1000名、メーカー)
・自由化されて「得」をするのは、現状も採用に困っていない「大企業」「有名企業」のみ(301〜1000名、メーカー)
・青田買いが広がり、財力やマンパワーに制約がある企業は疲弊してしまう(301〜1000名、商社・流通)
・二極化(就職できる学生とできない学生)が起きる。若年層の失業率が上がる。大学教育の改革とセットでないと優秀な学生だけがメリットを享受することになる(300名以下、サービス)
・過去に問題があったからルールを作ったのだから、また同じことを繰り返す(300名以下、メーカー)
・通年採用になるのはよいが、学生のモチベーションや混乱が目に見えているので、企業側としての対応が難しくなる(300名以下、メーカー)
・経団連のルールを守っている企業がほぼ存在しないが、通年採用になると大手がさらに有利になり中小企業の採用は今以上に困難になる(300名以下、商社・流通)

自由競争の日本の社会で、新卒採用においてのみある意味での「規制」があるのはおかしなものです。ましてや、一部の企業だけが加盟しているに過ぎない経団連が決めるというのはおかしな話です。「就活ルール廃止」は当然の流れと言えるでしょう。
ただし、20年卒まで現行のルールが続き、21年卒からいきなり廃止は混乱が大きいでしょう。企業よりも、学生の不安は計り知れないものがあります。あるメーカーの人事担当者のコメントにあるように、何らかのステップ(段階)は必要になるかと思います。現行ルールをもう1年継続するのではなく、例えば、22年卒からの完全廃止を目指して、21年卒は「3年生の3月」を採用選考開始の「目安」としてみるとか。

就活ルールの廃止は「通年採用」につながるか

今回の「就活ルール廃止」論をきっかけとした議論の中で、「新卒一括採用の見直し」「通年採用制へ」といったテーマが語られることも少なくありません。ただ、ここで今一度立ち止まって、就活ルールの廃止がそのまま「新卒一括採用から通年採用へ」につながるのかを考えてみたいと思います。
 今回の共同調査では、「仮に、ルールが廃止となった場合、貴社では「通年採用」を実施しますか」と聞いてみました[図表2]。「仮に」の設問であり、会社としての方針が既に出ているわけではないため、「(通年採用を)実施する」「(通年採用を)実施しない」「わからない」の3択としています。
結果は、大企業では、「実施する」と「実施しない」がともに17%で並び、「わからない」とする企業が65%にも上りました。通年採用に移行しやすくするために、就活ルールを廃止するんだという中西会長の発言と、現場の人事部門の意識はかなり乖離があるとも言えそうです。大企業ではもう少し「実施する」企業が多くてもよさそうなものです。これに対して、中堅企業では「実施する」36%、「実施しない」27%、さらに中小企業では「実施する」45%、「実施しない」19%と、企業規模が小さくなるにつれ、「実施する」企業の割合が多くなっています。実施に前向きな割合が半数近くに上っていたため、大企業と中小企業でデータが間違っているのではないかと再度確認したほどです。

通年採用は、人的・予算的リソース不足が最大の課題

こちらも「実施する」「実施しない」のそれぞれの理由を見てみましょう。

■(通年採用を)実施する
・既に(新卒ではない者の)中途採用を多く行っており、通年は対応可能であると推定される(1001名以上、メーカー)
・本来は、通年採用があるべき姿。段階を追って進化していくべきだが、ルール廃止になればスピードアップを図る(1001名以上、メーカー)
・ルールの廃止関係なく、現在も通年採用を実施している(1001名以上、情報・通信)
・転職市場の活性化も含め、常に受け入れできる体制が必要であるから(301〜1000名、サービス)
・本当に入社したいと考えている学生に出会えるため。大手企業の囲い込み採用に影響されないため(301〜1000名、メーカー)
・今後、グローバルで採用拡大を考えた場合に必要性が高いと思う(301〜1000名、メーカー)
・大量採用ができる時代ではない。活動期間が今よりも長期化するのは仕方ないが、反対に一人ひとり時間をかけて見極めることが必要(301〜1000名、メーカー)
・通年採用を実施したとしても、4月の一斉入社は変わらない。結局1年生の頃から目星をつけて、採用活動をしなければならなくなる(301〜1000名、情報・通信)
・機会損失が最も悪と考えているため、活動は迷わず通年。ただ、コストやリソースの問題(現実)もあるため、ボリュームゾーンを設けるなど、強弱はつけるんだろうな、とは想像する(301〜1000名、情報・通信)
・グローバルな時代において、日本人のみを意識した採用活動ではなくなる。外国人まで採用の対象と考えれば通年採用は当然のこと(300名以下、サービス)
・採用業務に関する業務負担は増えるが、良い人材獲得のため、やむなしと考える(300名以下、メーカー)
・廃止にかかわらず、「通年採用」を行う前提で現在進めているから(300名以下、商社・流通)
・これまでの手法ではどうしようもないが、ルールが廃止になっても新卒採用は続けるべきだと思うので、身の丈に合った「通年採用」をするしかない(300名以下、マスコミ・コンサル)

■(通年採用を)実施しない
・平準化するメリットもあるが、一定の期間の中で効率的に行いたいため、現行と同じでいく(1001名以上、サービス)
・学生時代に得た経験が非常に重要と捉えており、それを採用の評価基準にしたいと考えているため。また、学生にとって平等な活動をするため。社内の事情からすると、そこまで新卒採用に工数が割けない(1001名以上、メーカー)
・現在の採用規模を前提とすると、人数確保や選考の効率化、配属・育成面で一括採用が望ましい(1001名以上、メーカー)
・通年採用を新卒対象に年間を通じて選考を行うこととして考えると、学生の就職活動期間が長期化することが想定され、学業を阻害すると考える。また、中小企業への影響を考慮すべきであり、新卒者の通年での採用は望ましくない(1001名以上、メーカー)
・費用対効果を考慮すると現時点でのメリットはあまりないと考えている(1001名以上、メーカー)
・人材育成にかけられるマンパワー、効果を最適化すると、結果的に一律のタイミングで採用するのは理にかなっている(1001名以上、情報・通信)
・新卒の採用から育成プロセスをまとめることでパフォーマンスを上げたいから(1001名以上、商社・流通)
・手間がかかることと、学生に負担がかかるため、現状と同様の年2回程度に集約したい(301〜1000名、サービス)
・欠員補充の中途採用と新卒採用の区分けができなくなるから(301〜1000名、サービス)
・中途採用は通年実施しており、新卒採用までそこに合わせるつもりはない。卒業時期含めた『学業』の観点からも、通年採用をする必要はない(301〜1000名、サービス)
・何らかの歯止めがないと学生は就活に追われて学業に専念できなくなるのは問題であり、学生に配慮した日程での採用活動をする必要があると考えます(301〜1000名、メーカー)
・研修体系が崩れることになるため(301〜1000名、メーカー)
・教育をまとめて実施したい。同期意識形成による離職防止を図りたい。入社後のフォローを計画的に行いたい(301〜1000名、情報・通信)
・新入社員研修を通年で実施する人的資源が乏しいため(300名以下、メーカー)
・卒業時期は変わらないのだから、社員教育や対応の面を考えると一律にしたほうが好ましい(300名以下、メーカー)
・人的リソースおよび採用予算が限定されているから(300名以下、情報・通信)
・おそらく学生の動きの山は、どちらにしろできると思うので、そこに合わせて動く可能性が高いです(300名以下、マスコミ・コンサル)

 通年採用を「実施する」としている企業の中には、本来のポジティブな理由からではなく、より採用環境が厳しくなるため、いつまでも採用活動を続けることになるだろうという、「仕方なく」派も少なくなさそうです。また、「実施しない」としている企業では、「リソース(人的・予算的)不足」や「採用、育成が非効率」と考える企業が多くなっています。
そして、もう一つはっきりさせないといけないと思うのは、そもそもの「通年採用」の定義です。人によって、「通年採用」の定義は、大きく異なっていると感じます。「採用(応募)機会」「採用対象」「入社時期」の三つに分けて考える必要があります。年間どの程度の「採用(応募)機会」があれば「通年採用」と言えるのか、年中なのか、1年に2回以上あればよいのか。「採用対象」は新卒者だけでもよいのか、卒業年次に満たない低学年生も対象にする必要があるのか、既卒者はどこまで含めるべきなのか。また、「採用(応募)機会」さえ潤沢にあれば、「入社時期」は4月だけでもよいのか、4月以外にも複数の入社タイミングが求められるのか。
また、仮に就活ルールが廃止となった場合、ここ数年採用活動の一環となって、多くの企業で実施しているインターンシップはどうなるのでしょうか。インターンシップは、採用広報解禁の3月より前に学生と接点を持つために実施されており、3月以降に実施されるインターンシップはごくわずかです。就活ルールが廃止されれば、「解禁日」という概念がなくなり、インターンシップ名目で学生と会う必要はなくなります。堂々と「会社説明会」とうたって募集が可能になるわけですから。
では、そうなったらインターンシップは実施されなくなるのでしょうか。あるいは、ミスマッチ防止や理解促進のために、インターンシップは残ることになるのでしょうか。今回の共同調査では、これらの点についても聞いていますが、今回は速報にとどめる制約がありますので、次回に持ち越したいと思います。
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著者プロフィール

ProFuture代表 HR総研所長 寺澤 康介

1986年文化放送ブレーン入社。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。常務取締役を経て、07年採用プロドットコム株式会社(10年にHRプロ株式会社、15年にProFuture株式会社に社名変更)設立、代表取締役社長に就任。2012年、HR総研所長に就任。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』『経営と人事 対話のすすめ』、編著に『経営を変える、攻めの人事へ』(いずれもProFutureより出版)などがある。

※『採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント』は、WEB労政時報に寄稿した原稿を約2週間遅れで転載しておりますので、内容的に時差が生じる場合があります。ご了承ください。
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