「日本の人事を強くする」ことを目的とした会員制の人事勉強会コミュニティ、HLC。特別講師を招いて開催される定例会では、今回、「人事なんでも質問会!」と題し、サイバーエージェントの曽山哲人氏が、会員の質問に答えるという、一問一答形式で実施された。質問者も登壇するとういう垣根のない雰囲気の中、参加者はみな曽山氏を身近に感じつつ、人事として日頃抱える課題解決のヒントを得ようと熱心に聞き入っていた。

ゲスト

  • 曽山 哲人 氏

    曽山 哲人 氏

    株式会社サイバーエージェント 取締役 人事統括 / 株式会社CyCAST 代表取締役社長

    新卒で株式会社伊勢丹(現 株式会社三越伊勢丹ホールディングス)に入社し、1999年にサイバーエージェントへ中途入社。インターネット広告事業部門の営業統括を経て、2005年人事本部長に就任。 現在は取締役人事統括として採用・育成・活性化・適材適所に取り組む。著書に「強みを活かす」「最強のNo.2」「クリエイティブ人事」など。人事担当者向けコミュニティ「HLC」を主宰。

サイバーエージェント曽山哲人氏「人事なんでも質問会!」開催レポート前編
Q 将来を見通して自分のライフプランを考えた時に、仕事は欠かせない要素ですが、本当に自分はこのまま「人事」でよいのかと考えることがあります。曽山さんにとって、人事とは、ひいては、仕事とは何ですか。

A 私が考える、人事にとって一番大切なことは、業績をあげることです。「人と組織で業績をあげる」、人事はそういった機能です。社員のモチベーションがあがったら、まちがいなく業績はあがります。いつもそれを念頭に置いて仕事をしています。

では、自分にとってその仕事とは何なのか、という話ですが、私にとって仕事は「自分が生きた証を残すこと」です。せっかくだから、大きなインパクトを残したいなと思っています。


Q 曽山さんのSNSなどを見ていると、社員の方々とよくランチや飲み会に行っている姿がアップされていますが、そうした場で人事として、社員の方々の意見を引き出そうとする面もあるかと思います。心情を吐露させるコツはあるのでしょうか。

A 私が意識しているのは、まず最初に、その本人の仕事に興味を持つ、ということです。「今、どんな仕事をやっているの?」と聞く。分からないところがあれば「それってどういうこと?どれくらいすごいの?」という風に掘り下げていくことで、本人の仕事の付加価値を明確にする。そして嘘ではなく本心から「すごいね」と言ってあげるようにしています。

そうすると雑談が広がってくるので、相手の心がほぐれた時に、「何か困っていることはない?」と聞くようにしています。この質問は必ずしていますね。ほとんどの人は「特にないです」と答えるのですが、「あえて、でいいんだけど。パソコンが重いとか、小さなことでも何でもでもいいよ」と言います。そうすると、「それならあります」といった感じに答えてくれることが多いですね。

そこで何か要望が出てきたら、その日にできることだけ約束します。制度の不満などはすぐに何とかすることはできませんから。その日にできない約束であれば、「次の役員会で議題に挙げるね」とか、「〜に伝えておくね」という、すぐに手を打てる約束をします。そして、アクションを起こしたという事実を必ずフィードバックするようにしています。


Q サイバーエージェントさんの採用基準である「素直でいいやつ」というのは、どのような経緯でそこへたどり着いたのですか。そしてそれは、誰がどのようにして見極めているのですか。

A 10年以上前はまだ紙の面接シートを使っており、A4の紙1枚にいろいろな申し送り事項を記入して面接を重ね、それを最終的に社長の藤田へ渡していたんですね。ある時、役員たちの間でこんな話をしたんです。うちの会社で活躍する人って、やはり“いいやつ”だよね」と。そこからそれを一つの基準にして、“素直なやつ”とか“いいやつ”を採ろう、ということになったんです。

“素直でいいやつ”という軸を実際に面接でどう見るかというと、「この人と一緒に働きたいかどうか」、その一点だけですね。もし採用に悩んでいる面接官がいたら、たとえば何年間か自分の部下として、チームのメンバーとして一緒に働きたいと思うか、それで決めてほしいと伝えています。
サイバーエージェント曽山哲人氏「人事なんでも質問会!」開催レポート前編
Q 人事制度を作っていて、いつも制度のネーミングで悩みます。制度の浸透においてネーミングの重要性はとても大きいと思っていますが、サイバーエージェントさんは、どのようにして制度の名前を考えているのですか。

A たとえば、「macalon(マカロン)パッケージ」という女性活躍推進制度のネーミングがどう生まれたか。これは、女性社員の妊活支援や育児支援などを目的とした制度なのですが、まず、企画案・ラインアップを決めます。認可保育園の不足が背景としてあるので、高額な認可外保育園を使って職場復帰する場合、保育園料を補助しようとか、妊活中の女性社員に対し、そのための休暇を付与したりというのが制度の詳しい内容ですね。

それからネーミングを決めるのですが、これは“流行るもの”でなくてはいけません。とりあえず100個くらい考えます。これは企画内容に関するキーワードとか、(人の心に)刺さりそうなキーワードをいろいろな組み合わせで考えます。それらを一通り出したあと、徐々に絞っていきます。

いざ決める段階になって私が意識しているのは、母音4文字、ということですね。「ユニクロ」とか「カジタク」みたいな感じです。弊社の「ジギョツク」とか「キャリチャレ」ともそうですよね、ほかにはインターンの「ドラフト」とかも。母音4文字は語呂がいいので、流行りやすいんです。

ネーミングで大事なのは、何よりオリジナリティ。そして、“エッジ”が立ってなきゃいけません。ある程度尖っていないと記憶に残らないですから。また、「マカロン」の場合は、ビジュアライズ、つまり、名前を聞いて、お菓子の「マカロン」の映像が浮かんでくるという強みもあります。ネーミングの際はこのような要素も大事ですね。
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