第6回 自社の産業保健活動のゴールは何か?

企業にはびこる名ばかり産業医

前回のコラムでは、大企業と中小企業の健康経営の違いについてお話ししました。しかし、実は健康経営の取り組みは、同じ中小企業同士でも異なります。そもそも中小事業所の産業保健というのは、非常に個別性が高いものです。ここでは、自分たちが行うべき産業保健活動のポイントをご紹介します。

※本稿は、鈴木友紀夫『企業にはびこる名ばかり産業医』(幻冬舎)の一部を抜粋・再編集したものです。
事業規模や従業員の年齢構成などが似ていたとしても、A社に合ったプランがB社にも合うとは限りません。それは組織が違えば、産業保健のために動ける人員の体勢なども異なりますし、経営者や従業員の健康に対する意識もそれぞれだからです。

また健康経営を目指すといっても、中小事業所がいきなり、大企業が行っているような産業保健のフルメニューを行えるわけではありません。さまざまな産業保健活動のなかで何をするかという取捨選択や、まずどこから取り組むかという優先順位を整理することも必要です。そうでなければ費用や労力をかけて施策をスタートしても理念だけが空回りしてしまい、これといった効果が得られなかった、続けられなかったという結果に陥りがちです。

つまり、中小事業所が効果の上がる産業保健を進めたいというときにもっとも重要なのが、まず「その事業所の産業保健の課題は何か」をきちんと見極めることです。そこを起点にして、その課題解決のために嘱託産業医にどういう関わりをしてもらうか、従業員や管理職にどのような取り組みを行っていくかを検討し、それを具体的な実務の計画に入れ込んでいくことが大切です。

そうした産業保健活動の計画や業務指針があれば、忙しい人事労務担当者も、すぐに自分の事業所で取り入れたい施策を実行に移せるはずです。

当社でも中小事業所の産業保健導入サポートを行っていますが、やはり最初のステップとして行うのが、その事業所の産業保健の課題についてのヒアリングです。

その事業所の従業員の身体的な健康度、またメンタルの健康度は、現在どのような状況にあるか。産業保健活動でこれまで取り組んできたものは何で、どういうやり方をしてきたか。また過去には取り組めていなかったが今後、検討していきたい産業保健活動は何か。事業所の組織や産業保健に関わる人員はどのような体制か。そうした点について産業保健に詳しいプランナーや専任コーディネーターが、時間をかけてじっくりと聞き取りを行います。

そしてそれに基づいて、課題解決のために必要な産業保健活動を提案し、さらにそれを年間計画やタイムスケジュール、業務マニュアルというかたちにすることで、立ち上げからその後の実務までを支援しています。

「誰が、いつ、何をするか」が具体的に見えていれば、それに添って活動することで経験の少ない中小事業所でも、無理なく産業保健を進めていくことができます。

なお、本社・本部の他に複数の支社・支部をもつような事業所では、グループの各事業所で同じ内容の産業保健を行っていけるように、インターネットを使った情報共有システムの構築も有効です。

こうした情報共有のしくみがあれば、本部から発信したい情報を各支部に一斉に送ったり、嘱託産業医がいつ、どこの支部に出向いて面談・指導を行うかといったスケジュールを一括管理したりすることができます。
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著者プロフィール

株式会社エムステージ 執行取締役 鈴木 友紀夫

1966年生まれ、福島県出身。東京理科大学にて応用微生物学を専攻。
医師の人材サービス大手に所属後、医師と医療機関をつなぐ人材マッチングサービス事業を行う株式会社エムステージの立ち上げに参画、取締役に就任。現在は同社産業保健事業部にて、企業の産業医選任・産業保健支援サービスや産業医になりたい医師向けのサポートを行う。労働者の健康を守るため、そして医師の新たな働き方を提案するために奔走している。
著書『企業にはびこる名ばかり産業医』(幻冬舎)
医療経営2級、健康経営アドバイザー(初級)

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